松田 朋子
Tomoko MATSUDA

趣味はカラオケという松田さん。現在は好きな歌を上手く歌いたいとボイストレーニングにも通い、上達することを楽しんでいます。その背景には、たくさんの苦難を抱え、乗り越えてきた、ひたむきな頑張りがありました。

〈Profile〉eMC2018年取得、愛知県在住。専業主婦、夫と大学生と高校生の娘2人の4人家族。趣味はカラオケ。

自分に向き合ったことで新発見

「今も変わらず専業主婦です」。
そう言って微笑む松田さんは、とても穏やかな雰囲気を纏っています。リカレントでカウンセリングを学び、ゆくゆくは人の悩みを聴くことも考えていますが、現在は充電期間中。どのような経験からどんなことを考えて今に至ったのでしょう。
「実は幼少期からずっと心理学に興味がありましたが、母親との確執があり、当時は興味があることもやりたいことも、母の目を気にして言えませんでした。小さな頃から母親の価値観の枠組みの中でしか自分が理解されないこと、存在が認められないことが、どうしてなのかわからなかった。母親の言動や態度によって、いつも混乱していました」。
 そんな松田さんも大人になって家庭を持つようになり、生活にも変化が訪れます。
「子どもの学校でPTA役員を選出するためのくじ引きで、見事に母親代表と言う大役を引いてしまったんです。当時は青ざめました。すごくこういうことが苦手なのにって。まずい!私の手にはとても負えないって(笑)。でも嫌だ、ダメだと言っていると、このままでは家族に当たってしまう、家族を壊しかねないのではないかと感じ、それがキッカケできちんと自分と向き合おうと思えるようになりました。
 今、思えばやらざるを得ない状況に追い詰められたからこそ、このままではいけないと強く思ったんでしょうね。自分に向き合うためにカウンセリングを受けようと決めて、その一歩をやっと踏み出せた。逆境が成長するタイミングだ、といわれたりもするから、そうだったのかなぁと思います」。
 結果、PTAの役割は『我ながら良くできた』そうです。自分で計画を立てながらこなすということが意外と好きだったことに気がつき、その後2回も役員を引き受けたとか。自分と向き合うことで新たな発見ができました。
松田さんがカウンセリングを受けるようになって8年弱。それは決して楽な道のりではありませんでした。
「これまでの母との関係で、私はずっと母親が悪いのか、自分が悪いのかが頭の中を占めていたんですよね。でも、カウンセリングを受けていると、先生に『どちらが悪いという客観的な判断ではなくて、自分がどう思うかだ』と言われて。それを理解するのが本当に大変でした。今も大変ですけどね(笑)。
 でも、なんとかしたかったんです。とにかくいろいろ知りたかったので、カウンセリングを受けて、へぇ~なるほど、と思うことがたくさんありました。それでも最初の6年間はほぼ愚痴ばかりを言っていましたね。そうしたらある時、先生に『そろそろ先に進みませんか』って怒られました(笑)。  本当に難しかったですね。それでもカウンセリングを続けられたのは、よく母親に『生まれてきたからには誰にでも幸せになる権利がある』と言われていたことが大きいですね。それなら私にもあるはずだ、絶対幸せになってやるって」。


リカレント名古屋で

ターニングポイント

 環境も意識にも変化が起こり、徐々に昔興味のあった心理学への思いが再燃していき、リカレントで学びを始めました。
「自分がカウンセリングを受けて少しずつ回復していき、母とも距離を置くようになって、ようやく、失敗しても生きる道はなくならない。目標もなくならない、ということを考えられるようになりました。安心安全を感じられる、それがとても大事でしたね。  そして、カウンセリングを勉強したことで、自分の感情を上手く言葉にできるようになりました。いろいろと教えてもらいながら自分の思考の整理ができたのは、大きかったです。そして、家庭内でのコミュニケーションでも、聴き方・話し方どちらにも、学んだことはとても役立っています」。
 そして、松田さんにはこんな楽しい変化もありました。
「趣味のカラオケに行けるようになりました!それまでは、働いてないので、そんなことしちゃいけないかな……っていう縛りが自分の中であった。その縛りから抜け出せたのが1年ちょっと前でした。今ではボイストレーニングに通い、自分の好きな歌が上手くなるように、レッスンを受けているところです!」
 そう話す松田さんの表情は、とてもイキイキとしていて、今を心から楽しんでいる様子が伝わってきました。
「それまでは、カウンセリングは私にとって楽しい時間でした。でも、先生に『それよりも楽しいことが見つかったら、多分ちょっとずつカウンセリングの時間を必要としなくなるんじゃない?』と言われていて、実際にカラオケやボイストレーニングを始めたら、本当にカウンセリングの頻度が2週間に1回から2ヵ月に1回に間隔が空くようになったんですよね」。

自分のために

「カウンセリング頻度が少なくなってからは、独りで悩みをクリアすることがちょっとずつできるようになりました」。
 松田さんは、あることも思考整理に役立てています。
「ブログを書くことですね。何か冷静になれるんですかね。私はこう思っているんだとか、マイナスな言葉とかも頭の中にあるんですけど、それも全部隠さずにさらけ出そうって。頭の中にある景色やその時の記憶がバーって変わっていくのを1個ずつ落ち着いて確認していくっていう。それがいいんですね。自分用に始めたのですが、今後も続けていって、同じように考えている人、感じている人がカウンセリングに行くきっかけになったらいいなとも思います。
 この自分の経験、カウンセラーの勉強も、8年間のカウンセリングの経験もきっと無駄にならない、これからの私の助けになると思っています。そして、もっと世の中にメンタルヘルスの大切さを知ってもらって、心が傷ついてる人が救われやすい世の中が来ると良いなと願っています」。
 着実に前進している松田さん。今後はどのように過ごしていくのでしょう。
「今は、『自分のしたいことしかしない』をする努力をしています。最近ようやく『頑張ったんだな私』と思えるようになったんです。せっかく勉強もしたし、資格も取得できたし、しんどい経験をしたので、それを社会的に活かしたいという気持ちを持っています。
 ただ、今はまだ、人の悩みを聞けるような状況ではないので、ゆっくり自分の時間をつくりたいと考えています。PTAをやったときから[必要な人にしか試練はこない]ということが信じられるようになってきたかな。前向きに捉えられるようになったというか。これまでのことがあり、ずいぶんと母の影響を受けてきたので、まずは自分だけの考えで、自分のためだけに生きてみたい。そう思っています」。

今、伝えたいこと

「『苦しいときはカウンセリングに行きましょうよ』と世の中に発信したいです。自分のブログでは、まだまだ影響を与えるのに十分でないですけど、自発的に行こうと思ってくれる人が増えると良いなと思います。自分が何を考えているか知りましょう、って。私もカウンセリングを受けて、ものの見方もだいぶ変わってきました。だから、思考の変化がすごくあったのかなと思いますね」。
 晴れやかな表情の松田さん、とてもキラキラしていました。


自宅にてブログ執筆中