藤原 公子
Kimiko FUJIWARA
会社を経営して28年目を迎える藤原さん。社会人となり、実年齢と精神年齢のギャップに悩まされた時期もありましたが、発達段階課題を知ったことでその疑問が解消されました。会社のキャラクターである「らびっこ®」での体験を通して、藤原さんが得た気づきとは?
〈profile〉eMC2017年取得、東京都在住。経営者、(店舗改善・集客コンサル、思考整理術の方眼ノートトレーナー講師)。夫+うさぎのまるちゃん、着ぐるみ「らびっこ」の家族。趣味は家庭菜園と歌うこと
経営者に寄り添う仕事を
「店舗集客支援としてマーケティングのサポートを中心に、今はコンサルティングの業務も行う会社を経営しています。伴走型のコンサルティングの仕事をしていて、コーチングやカウンセリングに近いものをやっています。お店の経営者に寄り添い、まずはお困りごとを聴いて、共に伴走していくということをしています。
会社を平成7年7月7日に起こそうと思ったものの、そのときは何をしようとかはまだ決めていなくて(笑)。大手のクレジットカード会社に勤めたり、ベンチャー企業の立ち上げからずっと関わってきたりと、結構働きづめでした。どこかの会社に勤めるのが嫌であれば自分で会社を興すしかないって思ってたので、会社を興してから何をするかを考えました。自分一人で完結できるような、ある意味ワークライフ的な感じであればいいなって思ってましたね。
心理学を学ぼうと思ったきっかけは、主人がうつ病で休職したことがあって。それは、もう17、18年ぐらい前のことですが、うつ病や発達障害という言葉も知らなかったので、主人に対してどうしたらいいかわからず……。ネットや本を読みましたが、最終的にはクリニックに行って休職をしました。本人もそうですが、家族も辛くて。何をどう相談していいかわからないし、自分が病院に行くわけでもないので、そこから心理的なことを学べればと思っていたときに、友人が、『従業員も契約で相談を受けられるEAPがあるよ』って教えてくれて、EAPを知ったのがきっかけでしたね」。
ありのままではいられなかった
「父親との関係が上手く築けなかった経験があります。他のきょうだいと比べられたり、一方的に嫌われてしまったり、という感じですね。父親は普段笑わない人だったので、どうしたら笑ってくれるのかを、いつも考えてました。そうじゃないと生きていけなくて。ありのままでは生きていけなかったです。学校の友達や先生には恵まれましたが、どこかいつもありのままの自分ではいられなかった……。
高校卒業後は大学に進学したかったんですが、家庭の事情で就職しました。就職したとき、同期がものすごく大人に見えましたね。私は父親と同じような年代の同僚に何か言われたらうまく返せなかったり、自分の意見は正しくないって思い込んでいて何も言えなかったり。
その後、本部へ異動になったのですが、同僚はいい人たちでしたが、自分の年齢と精神年齢が合っていなかったから、すごく苦しくて。仕事は裏切らないと思って、会社から帰ったら、くったくたになるほど働きました。仕事で評価は得られましたが、他の人が軽やかに仕事をしているのを見ると、こんなに自分は頑張っているのに……という思いがあり、自分の心が追いついていかない感じでした。
発達段階の課題を学んだときに、すべてがわかった感じでした。この段階で取りこぼしをして大人になっちゃったから、精神年齢と実年齢に違いがあるんだなってことがわかって。それがわかったときは、もう感動でした。これまでいろいろあったけれど、そんな過去を引きずらずに、きちんと昇華できています。
いろんな仲間との出会いや学びもあったし、[過去と他人は変わらない、自分と未来は変えられる]という言葉を知ることができたのも、とても良かった。交流分析やブリーフセラピーも学んで、それは自分自身にも、人との関わりにも、すごく活かされています。
メンタルヘルスの知識が
あったから
「メンタルヘルスのことを知っていたからこそ、このコロナ禍を生きていけたと言っても過言ではないです。今まで、震災やリーマンショックもありましたが、営業ができないってことはなかったので。でも今回ばかりは会社の廃業について、本当に考えました。対面で人を集めて仕事ができない、営業をかけても仕事がない。何も考えられない、何も思いつかない、どうしたらいいかわからなくて、前に進めなくって。もう、ここで辞めてもいいかな、って思って、本当に夜も眠れなくて。給付金もあったけど、その当時の心労はメンタルヘルスについて学んでいなかったら私は多分、だめだったかもしれないです」。
「自分を知る講座」で
忘れられない
「らびっこ」としての会話
「商品開発のお手伝いをするイベントで、会社のキャラクターの「らびっこ」の着ぐるみに入ったことがあって。『らびっこ®』は喋るキャラクターなんですけど、不思議とキャラクターに寄せた声になるんですよね(笑)。
そのイベントで、お手伝いをしようとしてくれる女の子がいて、小学生かな?と思ったら話を聴いてみると、30代の女性だったんですね。障がいがあって、子どものことや母親のことでいっぱいいっぱいになっているんだ、ということを話しながら泣き出してしまったんです。
どうしよう!と思いながらも『らびっこ』として考え、聴いた話に対して言葉を返しました。すると、その女性は笑顔になって元気に帰って行ったんです。そのときは、ほっとしたのなんのって!(笑) その対応がよかったかどうかはわからないんですけど、EAPで相手のリソースを探すっていうことを学んでなかったら、きっと何も言えなかったと思います。そして、その女性も生身の私にだったら、『らびっこ』に話したことは喋らなかったと思うんです。あくまでも、『らびっこ』だから話したんだと思う。
こんな経験から、『着ぐるみセラピー』ってありなのかな?と思えて。着ぐるみには喋るけど生身の人間には喋らないとかあるのかなって。
そのあとも、別なイベントに『らびっこ』として出たとき、子どもから内緒話をしてくれることもあって。話を聴きながら可愛いな~って思っていると、『絶対ママには内緒だよ』って釘を刺されました(笑)。ママやパパには内緒なことも、『らびっこ』には話してみたくなったのかなって。
療育施設に遊びに行くと、施設の子どもたちって周りの大人からあんまり褒められることもなく、親御さんにさえ認められない子もいるんですよ。子どもたちが『らびっこ』に何かを教えるプログラムがあれば、『ボクが教えてあげるよ!』って言ってくれる子がいたり。初めて自分が教えたり、誰かのお世話をしたりする側になることで、子どもたちは成長できるだろうなって。彼らはピュアだから、変な対応はできないな、とも感じます」。
リアルなラビッツ村を作りたい
「今はホームページ上でラビッツ村を展開していますが、リアルなラビッツ村を作りたいと思っています。村なので、役場の運営は私の会社が行い、私は事務局長として、そして着ぐるみの中の人として(笑)。 着ぐるみカフェを中心に、生きづらさを抱えた人達の居場所づくりをしたいなと思っています。対面でコミュニケーションを取りづらい人は着ぐるみ着て接客してもらったり、着ぐるみがコーヒーこぼしても笑えるじゃないですか。失敗してもいいんだよという環境を作りたいです。 あとは、学校と称して、子供向け、青少年向け、シニア向けなど、さまざまな対象に合わせた学習の場を提供したいなって。 例えば、シニアの人たちにはセカンドキャリアの準備とか、青少年向けには発達段階の課題に対して自分自身のことを知る場にするとか。遊び場として、今は月に1回駄菓子屋と射的などのイベントを開催していますが、常時開催したいですね。喋り場だったり、相談窓口があったり。畑を作って野菜を育てたり。みんなが喜ぶサービスを提供できればいいな。そんな村を想像してワクワクしてます」。 そんな藤原さんは、とてもイキイキとしています。リアルなラビッツ村がオープンする日を、きっとたくさんの人が待っています。
『らびっこ』のラビッツ村