永原 早和子
Sawako NAGAHARA
「人との関わりを大切にする仕事がしたい」。コロナ禍、自分のやりたいことを見つめ直し、新たな一歩を踏み出した永原さん。「やりがいだらけ」と断言する、現在の就労移行支援のお仕事に対する想いと、永原さんのこれからの夢とは…?
〈Profile〉eMC2022年取得、千葉県在住。就労移行支援事業所の職業指導員。高校2年生・中学3年生・小学4年生の娘の5人家族。趣味はスキーなど滑るもの、脳科学・精神医学の動画を見るのが好きです。
自分を見つめ直すきっかけは
コロナ禍の希望退職
株式会社LITALICOワークスで、障がい者の方への就労移行支援をしている永原さん。利用者の方への個別面談や就職の準備、訓練、就労先の定着面談など、忙しくも充実した日々を送っている様子です。前職は旅行会社に勤務していたという永原さんが、今の仕事に就いたのは1年半前のことでした。
「元々、旅行会社で働いていたんですけど、コロナ禍の不況で希望退職の募集があったんです。15年働いた会社を退職するか、このまま続けるか……。このとき、自分が本当にやりたいことを見つめ直した結果、退職を選びました。退職金でリカレントでの学びを開始し、2021年7月に今の会社に入社しました」。
永原さんは振り返ります。
「旅行会社では楽しく働いていたんですけど、社内にパワハラもあって。自分はいろいろなところに相談しながらなんとか乗り越えてきたんですけど、その経験から、悩んでいる人の話を聴いて、人の痛みを癒したいな、という気持ちがありました。
社内でチームリーダーを任されていたときも、メンバーの意見を聴いて信頼関係を築いていくことを大切にしていましたので、人の話を聴くことに興味があったと思います。
人は宝だと思っていましたし、自分は人に関わる仕事がしたいんだ、ということに気づいて、EAPメンタルヘルスカウンセラーの学びを開始しました。学びを開始してからは、資格を活かして社会に貢献したいと考えるようになりました。もちろん、まったく一からのスタートではあるんですけど、自分がやりたい勉強、取得したい技術を実践することで、社会に貢献できると思って、LITALICOワークスに入社しました」。
今の仕事はやりがいだらけ
転職して1年半。永原さんの[今]に迫ります。
「支援の際は、利用者の方のニーズをしっかり把握すること、本当にその方が求めてるものを見て、就労だけではなく、その先の人生に繋げていくことを考えています。働くにしても、どこかしらに入れればいい、とかではなくて、やっぱり、その方たちの人生の価値だったり、仕事の価値ってなると、就職だけじゃなくて、その先の生活や人生もあるので。
リカレントで学んだ傾聴スキルは、面談をする際に役立っていると思います。先輩社員の方に、『永原さんは人の話を聴くのが上手だね』って言っていただくことがあるので、学びを実践に役立てられていると感じているし、そのことに喜びを感じます。
まだ1年半なので、先輩たちのやり方を見てすごいな、真似したいな、という気持ちもあります。でも、やっぱり自分のスタイルは大切にしたいんです。辛い思いや、不運なことを重ねてこられた方も多いので、病名から決めつけるのではなく、個別性を大切にして、その方のいいところを見出したり、会話の中で勇気づけたり、エンパワメントしながら、ご本人に気づきを得てもらうことを意識していきたいですね。その方の心に響く関わりがもっとできたらな、って思っています。
ラポールを築けたなって思ったときや、私に話を聴いてほしいと言って来てくださったりすると、やりがいを感じますね。それと、自分が関わったことによって、その方が少しでも生きやすくなったり、少しでも一歩に繋がったな、って感じるときも嬉しいですね。
以前、漠然とした不安を持たれている方で、一歩を踏み出せない方がいらっしゃったんです。実習も、評価されるのが嫌だからってなかなか出れなくて。そのとき、具体的にどんな不安なのか丁寧に傾聴したり、不安への対処方法などもお話しさせていただいて。途中、不安な気持ちが不満になって、クレームみたいな形で表出されたこともあったんですけど、いざ実習が終わってみたら、『本当に自分にとって良い機会になった、不安だったけどやり遂げてよかった』と言ってくださって、それはすごく嬉しかったですね。
今までとは違う一歩を踏み出せたとか、ささいなことでも成長できたとか、就職まで結びついたとか……。日々、感動したり、喜びを感じています」。
人との関わりを大切にする仕事がしたい、見つめた自分が出した答え。「今の仕事は、もう、やりがいだらけです」。この一言こそが、今の永原さんを物語っています。そして、答えが大正解だったことも。
これからはやりたいことだらけ
「これからやりたいと思うことはたくさんあって、模索している最中です。 今はキャリコンの勉強をしているので、EAPとあわせて、学んだことを実践して、スキルを磨いて、利用者さんの支援に活かしていきたいですね。社内のメンタルヘルスの部署でカウンセリングをメインにしていけるといいなとも思っています。EAPの会社にも興味がありますし、双子の姉が鹿児島で児童施設をやっていて、そのうち放課後デイもするかも、って言っていたので、そういうところで子どものときからのキャリア教育や、お子さんの心を癒すようなこともできたらいいな、とか。人生100年時代だから、まだまだいろんなことできるかもしれないな、って思っているので、勉強しながらいろんな経験を積みながら、いずれ何かを考えていきたいなって思っています。
今の学びは、仕事の面だけじゃなくてプライベートでも、人生全体に影響力があるものだなって感じています。人って全然悩みがないようで、みんな悩みを持って生きているんですよね。だから、自分の関わる人たちに少しでも幸せになってほしいと思います。新しい知識や理論を知れたら、自分も成長するし、関わる人たちにとって、より良いアプローチができるんじゃないかな、と思っています」。
家族で
見つけられて、本当によかった
「小さい頃から、自分の意思ってそんなになかったように思います。大学の学部も、心理学部と観光学部に受かったけど、どっちに行こうかな、みたいな感じで決めていたり。会社も、観光を勉強したから旅行会社だなっていうような感じで、選択をしっかりしてこなくて。
前の会社でも我慢していた時期がすごく長かったなって思います。結婚してフルタイムで働くけれど、家庭には支障がないようにとか、お金は自分の勉強のためには使えないとか。子どもにいい経験をしてほしいから、自分のことはさておき、子供のことを一番に考えようとか。それはそれで良かったんですけど。とにかく仕事もしなければいけないし、母親としての責任感もものすごくあったし、精一杯だったので、なかなか自分が本当にやりたいことにまで意識がいかなかったんだな、って思うんです。
でも、会社も変えないといけない状況になって、子どもたちも手が離れてきた。圧力から脱しよう、っていうタイミングだったのかな、って思います。
自分がやりたいことってどんなタイミングで出てくるかわからないなって思います。大学生でもやりたいことがわからないまま就職して、働いてからもまだわからないという人もたくさんいるようですが、私自身は自分がやりたいことを探す時間があって、そこで見つけられて、本当によかったなって思う。ひとつ見つかると、モチベーションも上がるし、広がっていくと実感しているので」。
コロナ禍での希望退職を期に、自身のやりたいことを見つけた永原さん。手応えを掴んだ今、『いつか何かを』に向かって、感動や喜びを重ねていきます。
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