飛澤 由紀子
Yukiko TOBISAWA
これまで、社員のキャリア支援や学生の進路相談など、主にキャリアのサポートを行ってきた飛澤さん。CDAの資格取得をきっかけに、学び続けるなかで自分自身と向き合うことができました。そこから得たものとは?
〈profile〉eMC2017年取得、東京都在住。移住に関わるNPO法人の東日本担当、子供たちが巣立ちこの4月から夫と二人暮らし、趣味は和菓子作りと製パン、郷土食探訪
継続的な相談業務に関わりたい
「現在、メインの仕事としては、首都圏から地方への移住希望者を支援するNPO法人で相談業務を行っています。それ以外に、大学のキャリアセンターで、大学生の就職や進路に関わる相談業務、年に数回程度ですが、高校生に対する就職活動支援をしています。
以前は5年ほど大学のキャリアセンターで就職活動の支援をしていました。その大学での勤務は5年が上限だったので、次の仕事を探すとなったときに、今度は別なフィールドで働いてみたいと思っていたところ、ちょうど移住者支援の募集があって、ご縁があった感じですね。
NPO法人で働こうと思ったきっかけは2つあって。一つは、継続して相談者と関わりたかったからです。大学での就職支援は一度きりで相談が終わる場合が多くて、その後、その大学生がどうなったかというのは知ることができなかったんですよね。なんだか残念に思っていました。それもあって、次は相談者に最後まで関われる仕事がしたいなと思いました。
もう一つは、地方で今、何が起きているかを知りたいと思ったからです。私自身、岩手県出身なんですが、地方がさびれていく様子を見てきたので、地方に移住したい人って一定数いるんだな、と思ったのと、大学生が地方活性化でいろいろと活動をする話を聞いていたので、興味を持ちました。
移住希望者の相談業務がやりたくて働き始めたものの、半年ぐらい経って相談対応をする職員のマネージャー、管理部門的な立場になったので、今は相談対応ができず、ちょっと寂しいです(笑)。
ただ、大学生とは違ってさまざまな年代の方がいらっしゃるので、いろいろな視点の話を聴けるのは興味深いです。例えば、お子さんをどう育てたいかを考えて移住を考える若い家族は多いんですね。その背景には、自分が育ってきた環境があるのです。自分が育ってきたように子どもを育てたい人もいれば、自分たちとは違うことを子どもに与えたい人もいます。自分の生い立ちと絡んで子どもの将来を考えているんだな、と感じます」。
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キャリアから
メンタルヘルス支援へ
一人ひとりの人生や進路に関わってきた飛澤さんですが、もともとリカレントで学ぼうと思ったきっかけは何だったのでしょうか。
「まず最初に、私は2015年にCDAの資格を取り、それを軸にこれからのキャリアのことを考えていきたいと思っていました。CDAでもメンタルヘルスについて触れることはありましたが、内容としてはとても少なくて。
このままカウンセリングと称してやることにすごく不安があったんですね。それで悩んでいたときに、リカレントでメンタルヘルス・マネジメント検定の勉強や、EAPの説明会に参加して、メンタルヘルスに特化できる勉強ができるんだと思って、自分の不安を解消できるかな、と思い学び始めました。
キャリアとメンタルを勉強したからこそ、カウンセラーとして自分でも慌てずに済んでいますね。相談者に対して、こういうことかな?こういうことが起きているのかな? と見立てられるのは勉強したからこそ。学びに支えられているなと思います」。
自分に向き合うことを
避けてきた
「最近ようやく、学びと現場での経験を重ねて、自分の考えを言語で説明できるようになったと思うんです。自分の人生を振り返ると、自分の気持ちを外に出すのがすごく好きではなかったんです。小さい頃は無口で内気でおとなしくて何も言えず、本ばかり読んでいる子でした。4歳上の姉がいるのですが、私からするとすごく社交的で、なんでも上手くできて。いいなぁ、お姉ちゃん……という感じで。でも、お姉ちゃんの後ろにいると守ってくれるので、私はここにいれば何もしなくても大丈夫、という安心感がありました。
中学生、高校生になるにつれ、なんとなく世間体的には上手く振る舞えるようにはなりました。そんな感じで社会人になり働き始めて、まあ、なんとなく表面上は上手くやってこられましたが、自分の大事なことにあまり向き合わないまま人生過ごしてきたのかもしれない、と思えてきて。ようやく、50歳からなんとなく嫌なことにも向き合いつつ、ちゃんと自分の言葉で説明することを積み重ねてきました。
大学を卒業してから25年、電機メーカーの管理部門で人材育成や採用などの社員のキャリア支援に関わってきました。長く勤め管理者も経験しましたが、組織のなかで働くのがすごく苦手で……。世間的に、女性活躍といった言葉があり、会社からの期待があるのは感じたのですが、私はそのような立場がとても苦手で……。上下関係のなかで周囲に動いてもらうように指示をするのが苦手なのに、でも、そういう仕事をするしかないのかな、という葛藤がありました。
そんななかでCDAの資格を取り、そこからは資格取得の道に走りました。学びのなかで、私は対人支援、一人ひとりと向き合っている方が心地いいなって。そこで退職をし、5年間は大学のキャリアセンターで働きました。大学では本当に好きなことができて、ほんわかとした5年間でした。
人生の宿題を突きつけられた
そのあと、今のNPO法人に転職をして、また組織のなかの役割ってものを与えられたときに、なんか、こう、人生の宿題をまた突きつけられた感じだな、って思えて。管理者というポジションはありがたいとは思いつつ、なんでこんなに自分は苦手なんだろうと思って。
自身を振り返ったときに、今まで学んできた心理やEAPのスキルが、自分の感情を言語化することにすごく役立ちました。学んだことを人に使うんじゃなくて、自分に使っているって感じなんですけど。ああ、こういうことが起きたときに、自分はこういうふうに感じて苦しいんだなって。自分を客観視するのに助かっていますね。これまで自分がどうしたいかよりも、他人からどう思われているかを気にして仕事をしていたところがあったなって。
今の職場は、自分が日々やらなきゃいけない仕事がたくさんあったり、やりたかったこととは違った部分もありますけど、人生の転機を迎えようとしている人たちへの支援には関われているので、あのまま会社勤めをしていたよりは自分が望んでいることができている感覚に近いでしょうか」。
在りたい自分へ
「これからのビジョン? まだまだとはいえ、自分の中の専門分野ができつつあるので、そういう実感は持てています。それが自分の自信にもなりますし、これからも学び続けて、自分の今後を考えていきたいと思っています。
カウンセリングとは違いますが、今は食とか薬膳、香りにすごく興味関心があって。食材や香りの効用が精神状態にどのような影響を与えるか、食や香りによって感情を上手くコントロールできるようになったら面白いな、そんな勉強をしたいな、と考えています。
自分は、カウンセリングはまだまだ一般的ではないという印象を持っていて、じゃあ、困っている人がこんなにいるなかで、どうしたらもっととっつきやすくなるのか。そこに「食」という、生活に溶け込んだ素材を活用することができないだろうかって。食べ物の力をきっかけにして、自分でもメッセージを発信できたらいいなと思っています。将来的に、今まで学んだ精神医学の知識を深めて、薬草とか食べ物の専門知識を身につけた自分になりたいと思っています」。
心理やEAPを学んだことで自身を客観的に眺めて、在りたい自分がきちんと言語化できるようになった。人生の宿題をやっと終えることができた飛澤さんが見つけた答えが、そこにありました。