寺山 優子
Yuko TERAYAMA

イベント制作会社で働いてきた寺山さん、数々の壁を乗り越えてやり遂げた仕事の成功体験とともに、自身の辛い体験もありました。強み、弱みを共有してみんなが楽しく働ける会社にしたい。そう願う寺山さんが目指すのは?

〈profile〉eMC資格取得2022年、東京出身→札幌転勤→沖縄転勤→沖縄移住予定。お堅いイベント系の企画制作会社プロデューサー、現在沖縄現地法人立ち上げ中。趣味は食べることと料理。琉球料理と発酵料理を習っています!

達成感を得られる一方
ストレスも多い仕事

 長年、イベントの企画・運営の仕事をしてきた寺山さん。
「とてもストレスの多い仕事だけれど、やりがいや達成感がたまらない。それを後輩たちにも味わってほしい。そんな思いを持っている一方、途中で辞めてしまったりバーンアウトする仲間もいたりすることに対して、なんとか支援したい。
 今私がしている仕事は、企業のセミナーや、医学や工学系の学会とか国際会議ですとか、国のレベルでいうとG7のような首脳会合等も運営する仕事です。それらを開催するコンベンションセンターや音楽ホールの管理運営も含めてやっています。  私の仕事はよく『タフじゃないと続かないよね』と言われて、メンタルもそうですし、体力のレベルもそうです。そこのバランスがとれていかなきゃいけない」。


やんばるの自然と沖縄県産コーヒー

時代の変化を感じてきた

「私が会社に入社した2000年当時は、起業して3年目の会社でとても勢いがありました。私は会社の社風がすごく好きで、いろんなことも勉強させてもらえるし、チャレンジもできる。その結果、自己成長もできる。辛いことや帰宅が夜中になることもありましたが、『みんなで作っていこう』というところが何か必然だったんですよね。
 それが時代とともに仕事のスタイルや個人の捉え方も違ってきて、若い人たちが会社に求めることや、受け止め方が違ったりしてきたかな、と感じるようになりました」。

EAPとの出会い

「会社の規模も大きくなって当初20~30人だった社員が、今は会社のグループとしては1000名を超えるぐらいになっているんです。やりがいが大きくて、続いていく人もいる反面、辞める人もそれなりにいます。クライアントが政府だったり学会を主催する先生方なので、強い責任感や緊張感を伴い、楽しさだけじゃなくて本当に辛くなったりとか、最後までやりきることで、達成感や次へのモチベーションを味わう前にバーンアウトしてしまう人もいます。  そんななか、自分が大きな国際会議を担当したときの達成感がものすごく大きくて、この充実感を多くの同僚や後輩たちが感じられるよう仕事を続けるためには、何が必要なんだろう、と自分なりに何かケアが必要だという気持ちが湧いてきたんです。
 いろいろ探しているなかでEAPを見つけて『あ、これだ!』と思って、2018年の秋から受講しました。従業員を支援する、まさにこれだ!と目から鱗!これがEAPを学ぶことになったきっかけです。当時赴任していた札幌から東京まで、授業を受けに飛行機で通いました」。

才能ある人をさらに輝かせたい!

「実は、最初は教員志望でした。教員・学校みたいな枠に入るのは自分には合ってないのかな、と感じながら塾講師や家庭教師業をしていました。そんななかでいろいろなことを考えていました。子どもたちは社会に巣立っていく存在です。一般社会でどういう戦いが待ってるのかをわかってから教員なり、塾講師になったほうがいいのではないかと。
 私はどうしても性格的に人にのめり込んでしまうところがあって。家庭教師をしている家庭のお子さんで非行をする子がいたんですけど、家に帰ってこないので、お母さんと一緒に夜中に探しに行く、なんてこともしてました(笑)。
 親がそんな毎日の私を見かねて、『もういい加減にしなさい!』と言ってきたことを機に、とりあえず社会に出ようと思って。自分はイベントなどの企画をすることが好きだったので、今の会社に入り、働き始めました。それが今も続いているんです。
 石の上にも3年、とりあえず3年社会経験をしてから先生になろう、という意識があったのですが、教育の世界には戻りませんでしたね。子どもの頃は目立つことが好きで、演劇やクラシックバレエをやり、舞台に立っていたこともあったんですよ。大人になった今は、才能ある人をいかに輝かせるか、プロデュースする側として仕事をしています」。

自分が体験した辛さ

 コーチングの資格も取得して社内に貢献しようと動いていた最中、体調も思わしくなく、自分自身が落ち込む状態になり、辛い体験をしたといいます。
「この1、2年前ぐらいから社内コーチもやらせてもらうようになって、『誰と誰のコーチをちょっとやってもらえないか』と会社から言われてやっていたんですけど、一人は実はメンタル不調だったんですよね。  コーチどころじゃない、どうアプローチしていいか全然わからない。コーチングの手法じゃ効かない。そもそも何も意欲が湧き上がってこないので、まずそこから紐解いていかなきゃいけないのですが、悩みつつ対応している間に、仕事も忙しくなり、自分自身がバーンアウトしてしまったんです」。

救われた考え方・言葉・環境

「数ヵ月で復帰しましたが、EAPを学んでいたことで『自分の辛さを言葉にしていいんだ』ということに気づかされました。数年前にバーンアウトしたときに上司に初めて自分の辛さを伝えることができて、とても楽な気持ちになれたことが実体験として残っています。今回もとにかく話すようにしました。
 それと、同僚のたった一言『寺山さん、よくこの状況でやってきましたね!』という言葉を聞いて『あー、わかってくれる人がいる!』と、その一言で、スーッと救われました。
 最近では、今赴任している沖縄のやんばる地方にいる蝉の独特の鳴き声と、とっても豊かな自然に癒されるなぁ~と感じて、気持ちが救われています。
 こんなふうに、気持ちが落ち込んでも、そこから自分で復活できる糸口になる考え方や言葉、環境などがあること、その効果も身を持って知ることができるようになったな、と思います」。


とても豊かな沖縄の自然に癒される

みんなが幸せに働くための
力になりたい

 寺山さんが目指すのは、みんなが幸せに働くために自分の強みも弱みもオープンにして、ブレない軸を持つ「オーセンティックなリーダー」です。
「今の部下は20代で私が40代後半になりますので、年代の差もあるし、威圧的に感じて意見が言えないとか、私が忙しくて言いにくいとか、みんなに思われないように。
 自分はできていない部分もあったんだよ、ということをカミングアウトして、反対意見もきちんと受け止めながら進めていきたい。お互いに言いたいことを言えない状態で仕事をしていくと関係性が崩れてしまう。心理的安全性を高められるオーセンティックなリーダーを目指したいと考えています。
 そして、今の会社のなかでみんなが楽しく仕事ができるためにはどうしたらいいか、自分がこれだけお世話になっていて、すごくいい経験をさせてもらったことをみんなにも感じてもらえるためにはどうしたらいいか。ウェルビーイングについても今学んでいるところなので、そういうところを含めて、仕事の楽しさや幸せな働き方を伝えていきたいと考えています」。

EAPの仲間と学び合いたい

「私はEAPのカウンセラーとして、まだその資格の十分な発揮はできていませんが、皆さんそれぞれの立ち位置で人と関わられて、そのスキルを活かしていらっしゃると思います。その体験を共有し合うことで、自分の理想と現実のギャップも埋められるのではないかと感じています。メンタルで辛い経験した人にしかその時の気持ちは理解できない、といわれることがありますが、自分の経験も活かしながら、EAPの仲間と一緒に学んでいきたいと思います」。
 それぞれの強みや弱みを共有し、理解し合い、みんなが自分らしく楽しく働ける会社づくり。寺山さんが目指しているのは揺るぎない信念を持つオーセンティックなリーダーでした。