加藤 慎也
Shinya KATO

EAPプロバイダーに勤務する加藤さん。これまでいくつかの会社で多くの経験をしてきました。厳しい経験もあったといいます。だからこそ、手にしたのは深い自己理解と人へのリスペクトでした。

〈profile〉eMC2019年取得、神奈川県在住。上場企業4社にて主に人事・総務業務を中心にキャリアを積み現在はEAPプロバイダー企業に勤務、特技は「街で人に道を訊かれること(年10回以上)」

人事を求めてきた歩み

これまでに人事・総務系の仕事を中心に業種の違う3社を経験したのちEAPプロバイダーで働く加藤さん。現在はストレスチェックシステムのヘルプデスクを担当していますが、まだ本当にやりたい仕事に辿り着いたわけではありません。これまで多くの苦労を重ね、もがきながら今に至った加藤さんですが、どのような道のりを歩んできたのでしょう。
「2000年に大学を卒業、バブル景気崩壊による『就職氷河期』という言葉が初めて生まれた世代で就職には苦労しました。元来、人を喜ばせることにやりがいを感じる性分であることは認識していたため、最初に入ったのは全国規模でエンターテイメント事業を展開する会社でした。店舗の現場で働くところから始まり、スタッフ教育という根幹業務を担い多くの人と接するなかで、人事という仕事に興味を持ち始めました。
 ただ、経験もないので面接すら進めるところがないなか、なんとか未経験でも人事の仕事をさせてもらえる会社を見つけました。しかし入社してみると、今の時代で言えばブラック企業というのでしょうか、毎月の入社者数より退職者数が上回りさらに事業拡大期でもあったため、採用担当として全国を駆け巡りながら1200人くらいの方と面談をしました。
 もう少し落ち着いて教育や労務などの経験も積みたいという気持ちで、規模は小さくなりますが中古ゲームや書籍を販売する会社に転職し、人事・総務で10年くらい勤務。ある程度、業務領域全般が見渡せる経験をさせていただいたところ、そもそも事業として働く人のサポートをしている現社との縁をいただき、8年前に転職しました。現在の会社では総務から人事、コロナ禍でのオンライン研修提供の仕組みづくりなど、いろいろな業種を経験させてもらい、今はヘルプデスクを任されています」。

EAPとの出会い

「人事の採用担当として忙しく全国を飛び回っていた頃、私もバリバリに上昇志向が強かったため、見た目や立場、職位などで人を測ってしまう自分に気づきました。
 一つのエピソードですが、とある地方都市で、一般的には社会的に地位が低いとされる仕事をしているフリーターの方が、正社員を希望して採用面接にやって来ました。採用は厳しいだろうと思いながら話を聴いたんですが、彼からは現在のアルバイトに対してやりがいを持って真剣に取り組んでいることが述べられ、何より『他人にどう見られるか』という、自分の人生を歩む意味で不必要なプライドがないことを、屈託のない笑顔で話す姿に『私より彼のほうが優れている点がある』と強く感じました。いつもなら不採用にせざるを得ないケースだったのですが、上司に無理を言って採用させてもらったところ、後にエリアマネージャになるまでの活躍をしてくれました。
 このような経験から『外見だけで人を判断してはいけない』『誰しもが人より優れたところを持っていて、それを活かせれば輝ける場所がある』ことを痛感し、偏見を持たれがちな方をサポートしたいと考えるようになりました」。
加藤さんは、その頃に産業カウンセラーとキャリアコンサルタントの資格を取得。EAPと出会ったのはそれからかなり後で、現在の会社に入ってからになります。
「実は、転職後しばらくして社内で人間関係が上手くいかなかったために部署を変わることがあったんです。それで『自分が本当にやりたい仕事は何なのか?』と真剣に考えるようになったんですが、以前から抱いていた『人を支援したい!』という想いが強まって、社内のカウンセリング部門でカウンセラーとして働きたいと考えるようになりました。ただ、社内のカウンセラーになるためには厳しい試験があるため、本格的にカウンセリングを学び直さなければなりません。そこでようやくEAPに辿り着いたんです」。


「野球、好きですね」

「思うのは自由」

 リカレントでのEAPの学びは自分にとってすごくプラスになりました。先生との距離も近く、親身に対応いただきました。心理を学んだことで他人と考え方が違う場合、その原因を考えるようになり、苦手なタイプの人ともうまく付き合えるようになりましたね。
 そして、悟ったことは『思うのは自由』ということ。それまでは他人と意見が合わないとき、相手側の意見に合わせなければならないとき、自分の考えそのものを修正しなければならないと思っていました。でも、そうじゃないとわかったんです。相手の考えが自分と違うことは当然あることで、本当の自分の気持ちまで変える必要はないんだ、ということ。
 自分の思いは自然と出てくるもの、それを無理に押さえつけようというのは、まさにアクセルとブレーキを同時に踏み続けているのと一緒で、いつかオーバーフローしてしまいます。以来、この『思うことは自由』というのをセルフケアの一つとして、常に意識しています。
 EAPの資格は無事に取得できたのですが、残念ながら社内のカウンセラー試験は不合格になってしまいました。自身でも技術的な面で自信が持てるほどの経験が足りないと感じたので、客観的に見ても更なる努力が必要と思います。その後、コロナ禍で担当していた研修関連の業務が多忙になり、しばらく動けませんでしたが、最近ようやく落ち着いてきたので、週末の副業などでカウンセラーの経験を積む方法を探っています」。

 

本当にやりたいことへの
チャレンジ

「現在は中途半端な状態だと自覚しています。実は、今の会社でカウンセラーになれなかったとき、カウンセラーとしての機会をいただけそうな2社と採用面接をしたことがありました。ただ、未経験での採用は現実的に処遇が低く、もう少し子育てにお金がかかる身としては思い切って転職する勇気が持てませんでした。
 でも、諦めたわけではないので、引き続き自ら機会を探っていき、将来的には対人領域での業務に携わることができればと思っています。私が関わった方が自分自身の可能性に気づき、成功できるよう支えていけることができるといいですね。
きっとこのインタビュー記事に登場される皆さんは、資格取得後、EAP領域で輝かしく活躍されている方が多いのかもしれません。そのなかに自分のような、まだまだ道半ば、といったものが一人ぐらいいてもいいのかな(笑)。
 どなたにも人生の中にはいろいろな転機があると思いますが、皆、複合的な背景があるなかで、迷いながらも自分らしさを考えながら、ベストを選択してきた自負はあるのではないでしょうか。人は皆、他人より優れているところを必ず持っていると思います。その逆も然り。その強みや弱みをしっかり見つめながら自分なりの人生を歩んでいけるような支援がしていけたら最高です!」。
 これまでを俯瞰し、柔らかに受け入れ、自分を飾ることなく他人をリスペクトする姿勢は、もう最高のカウンセラーです。キャリアと現実の狭間で悩む人の苦しさや悔しさを一緒に抱え、力強く支えていく。加藤さんだからこそできる支援がきっとある。そのときに向かって。