江藤 和枝
Kazue ETO

メンタルヘルスの学びから自己理解の大切さを実感し、さまざまな気づきを得ました。現在は「誰もが自然体で生きることのできる」社会を願いつつ、メンタルヘルスの専門家として貢献し、実践と研鑽に取り組んでいます。

〈profile〉eMC2017年取得、神奈川県在住。米国の心理学修士号を取得し起業。兄は精神科医で兄妹で語ると興味が尽きない。東京生れ東京育ちだが、現在はバイオフィリアの街葉山に暮らし、日夜愛犬ワイマラナーと愛猫BSHを溺愛している。

コーチングやマインドフルネス
との出会い

 30代後半で個人事業主として独立した江藤さん。ウェルネスを主眼においた活動を継続していくうちに、メンタルヘルスを学ぶことの重要性を実感しました。
「日本の大企業で勤務したり、フランスの化粧品会社での人事・採用や、日本の文化を知らないフランス人の社長が社員とコミュニケーションを図るための企画をしたり。
 その後業界トップの外資系製薬会社人材育成部では、その概念が日本にはまだ根付いていない頃でしたが、初めてコーチングに出会いました。当時、女性初のNY本社社長が誕生して。その社長をMR(医薬情報担当)のときから育て上げた元上司が、顧問として日本の市場にいらしてアシストすることになりました。1on1エグゼクティブコーチングやセミナーを始め、さまざまな機会があったことは本当に幸運でした」。
 プライベートでマインドフルネスと出会ったことも、心理学を奥深く学ぶきっかけとなりました。
「祖父がオリンピック選手だったこともあり、小さい頃から身体を動かすことが好きでした。反面、アレルギー体質でアトピー性皮膚炎がひどかったことから母が食卓に気を配り、幼少時からオーガニック食材や無添加食品で育ってきました。だから、質の良い食事や運動が欠かせないことは、身をもって理解していました。
 そして、企業でコーチングにたずさわっている時期に、プライベートで生産性の向上や集中力アップのための呼吸法として、マインドフルネスに出会いました。起業しマインドフルネスの実践とともに、メンタルの影響がとても大きいことを実感し、体系的に心理の勉強をしたいと思ったところから、EAPにたどり着きました」。


東京の仕事場にて。現在葉山と東京2拠点+オンラインで仕事をしています

アメリカの大学院で
体系的に心理を学ぶ

 eMC取得後に、心理の大学院へ進んだ江藤さん。
「実は、リカレントでEAPを学び始める前に、アメリカの大学院を視野に入れていました。リカレントで学ぶうち、心理をライフワークにすることに迷いがなくなり、予定通りCalifornia school of professional psychology(社会人3年コース)の修士号を修めることができました。就学中はどっぷり[心理漬け]の日々でした。
 修論のテーマは、The Effects of Psychological Support through Mindfulness(マインドフルネスを用いた心理支援の効果について)です。 キーワードはマインドフルネスのほか、コンパッションやアタッチメント、哺乳類の進化の過程からみた神経心理などです。心と身体と脳の繋がりを重視した、ストレスやバーンアウト、トラウマへの介入法について書き上げました。
 論文や専門書は、やはり海外のものが先行しており、実際に参考文献として載せたものは100本くらい、目を通したものも入れると1000本くらいにはなります。マインドフルネスは遺伝子レベルからヒトに影響を与え、脳と身体を通して肯定的な感情と柔軟な心をもたらし、統合的なウェルビーイングが導かれると結論づけました。 「もちろん机上の学びだけではなく、職業として心理に携わるには、自己洞察を深めることが必須で、自分自身がカウンセリングを継続的に受けないと単位をとれない講義もありました。また、クリニックでの研修では、実際に個人セッションでの臨床の機会をいただきました。  当時、同期の中でもいち早くクライエントを任せられたのは、リカレントでの学びがあったからこそと感じています。それというのもリカレント卒業後に、EMCAを通じてクリニック研修に参加したんです。
 真剣に向き合えば向き合ったなりに返ってくるという実感があり、リカレントや協会での経験は大事な財産になっていると思います。当時学んだことが今も新たな気づきの礎となっています。今年度からはEMCAの支部役員も務めていますよ」。


大学院修了式は正式なアカデミックガウン着用でした

学び続けてメンタルヘルスが
ライフワークに

 メンタルヘルスの学びは現在どのように活きているのでしょう。
「クライエントに合わせた引き出しをエビデンスベースドで開けていきます。対個人のセッションはマインドフルコンパッションをベースにして行っています。
 ただ、コーチングのスタートか、カウンセリングなのか。認知行動的な方向か、心理的な深さを志向されているのか。クライエントにはそれぞれにパーソナリティがあり、違いもあります。そこをしっかりと尊重したいと思っていて。リクエストや同意のうえで、深いスキーマまでご一緒にみていくこともありますし、ご自身の心や身体の状態を認識するだけでパッと視界が開けて、より良い生き方へおのずと進んでいかれるクライエントもいらっしゃいます。
 つまりは、クライエントが大切にするコアバリューとニーズをつかむことですね。  メンタルヘルスの専門家として、心理セミナーも行いますし、対組織・企業のコンサルティングも行っています。ご縁によって貢献できる仕事の形はさまざまなので、これからもこだわらずに自分の学びを活かしていきたいと思っています」。
 人間の心理を学んだら、犬育て猫育てにも通用。好きが高じて犬飼いさんへのセミナーも開催しています。
「変化球的な活動ですが、動物のQOLも考えています。ストレスやトラウマへの介入で心と身体と脳の繋がりを重視すると、脳神経や神経生理まで識っていく必要があります。すると、生物の進化の過程に辿り着きます。人間の構造は爬虫類や他の哺乳類とどこまで同じでどこから違うのか、進化の過程で新たに備わった部分はどこなのか。
 その結果、人間の情動やアタッチメントへの影響が理解できます。ということは逆に、犬や猫にはどの程度の感情が備わっているのか、彼らの不安やトラウマの要因・対処法をはじめ、動物心理についてかなりのところまでわかり、どうすれば彼らのQOLを上げることができるのか、などヒモ解いていくことができます。


自然や動物と触れ合うことやエクササイズはメンタルヘルスの要

 私の家族は記憶にある限り曽祖母の代から犬や猫がいて、今の子たちももちろん大切な家族。犬生や猫生って自らの手ではどうしようもない部分がほとんど。すべて飼い主にかかっているといっても過言ではないわけですから。最近そんな気持ちが高じて、犬飼いさんのためのオンライン講座も開催しています。猫バージョンも近々登場するかもしれません(笑)」。


今に繋がる学び舎リカレント新宿そばで

大切なのは
オーセンティシティ

 これからの人生で大切にしたいことは何でしょうか。
「[本物の][本来的な]あるいは[自分らしい]という意味の『Authentic Life』を大切にしています。生きる意味や何が本物だと感じるかは、人それぞれ。もちろんバランスは必要ですが、他人から求められる答えや世のなかの正解ありきではなくて、自分なりのコアバリュー、核となる価値観に気づいてより良い人生を送る。そうありたいと自分では思っていますし、そういう社会であってほしいとも思っています。
 支援者としても、その想いは強いです。そして新しい引き出しを開けつづけるためには、自分自身のバージョンアップも常に必要になってきます。私にとって、心理の学びはこれからも一生続きます」。