吉田 夢菜 
Yumena YOSHIDA

人材派遣会社で営業拠点の責任者として働く吉田さん。控えめで静かな語り口ですが、そこには強い想いと行動力で周りを惹き付け、新しいものを形にしていくパワーが秘められています。

〈Profile〉eMC2021年取得、埼玉県在住。CEAP2022年取得。人材会社の営業部埼玉オフィスマネージャー。趣味はドライブ・旅行・カフェ巡り・舞台観劇。

人(ヒト)との出会い

 パーソルグループの人材派遣会社で働く吉田さん。これまでの人生は[ヒト]がポイントになっているといいます。
「大学では心理学を専攻し、臨床心理士やカウンセラーに憧れがありました。ただ、当時の自分には難しいと感じ、企業に就職して今年で6年目になります。今の会社を選んだ決め手は[ヒト]でした。採用面接の後に対応してくれた人や、会社でお会いする皆さんがすごくいい方ばかりで、『こういう人たちと働きたい!』と思い、人材派遣業界のことをあまり知らずに飛び込みました。入社後は以前のイメージと変わらず、優しく個性豊かな人がいっぱい。仕事選びで[ヒト]を決め手にしたのは、間違ってなかったと思います。
 人材派遣会社はメーカーのような[モノ]ではなく[ヒト]を対象としたサービスなので、あらゆる場面で関わる人との感情が交錯します。自分にはない価値観の持ち主との調整では感情が大きく揺さぶられることもあり、人というのは難しいな、というのが正直な感想です。ビジネスなので必ずしも皆がハッピーになれる結果になるとは限りません。雇用の責任を持っている立場としては、うまく調整できずにモヤモヤしたり、つまずいたり、日々反省を繰り返しながら目の前の[ヒト]に向き合っています」。
 微笑む吉田さん、この仕事が好きだという思いが伝わってきます。

部下ができた!

「昨年の4月に営業拠点の責任者に昇格し、管理職として仕事内容が大きく変わりました。一番の変化は部下ができたことです。こじんまりした組織ではありますが、それまで自分と派遣の方とお客様の関係だったところに、新たに[部下]が増えたので悩むことも増えました。『部下がよりよく働けるようにするにはどうしたらいいんだろう?』と、これまでフォーカスしてこなかったことに頭を悩ます日々でした。売上はもちろんですが、彼らのキャリアに対する責任を担いつつ、[心理的安全性]が感じられる環境を作りたいですね。
 管理職1年目は余裕がなく、がむしゃらに突っ走ってきたので、今期はもう少し余裕を持って部下の声や悩みを聴きたいと思っています」。

気づいたら動いていた

「社会人になって働いているうちに、自分自身が気持ち的に苦しくなることがありました。また、担当する派遣の方がメンタル不調で仕事に行けなくなったり、同じ部署に中途で入社した若手社員が休職し、復帰後もうまくいかずに退職してしまったこともありました。もともと心理学には興味があったのですが、やはり働くこととメンタルヘルスは切り離せない、と実感したことがこの学びに興味を持ったきっかけです。
 最初はメンタルヘルスマネジメント検定を受けることから始め、その勉強の中でEAPの存在を知って調べるうちに『私がやりたいメンタルヘルスってこれだ!』と感じました。ぜひ学びたいと思い、入社2年目の冬、ボーナスをほぼ使い切ってリカレントに入会しました(笑)これまではそんなに行動力があるほうではなかったのですが、本当にやりたいと思って。気づいたら動いていましたね」。

仕事しているふう…な一枚

一歩踏み出す

 実際にEAPを学んだ後、その後の自信につながる大きな一歩を踏み出すことができたといいます。
「リカレントでの学びは大変だった、というイメージが強いです。2019年の冬に入校し、基礎理論を勉強し、翌年の春に実践クラスがスタートしました。ちょうどコロナが始まった時期です。
 マスクをしてパーティションを挟んでのロープレは、思った以上に感情や共感が伝えられませんでした。共感を相手に伝えるには、唯一分かる目の表現と、自分の感覚以上にオーバーアクションでないとなかなか伝わらない……など、大切なことを丁寧にかつ厳しく教えていただきました。クラスメイトは皆さん違うバックグラウンドの持ち主で、そういう方々とロープレしながら『ああでもない、こうでもない』とやり取りできたことは、本当に貴重な機会とご縁をいただいたなと思います。
 カウンセリングを学んだことは、日常の生活においては傾聴やポジティブフィードバックを意識することで活かしています。なかでも一番の成果は、社内で若手社員向けのメンター制度の設立につながったことです。若手社員のなかには慣れない営業活動をするなかで、『やることはいっぱいあるけど気持ちが追いつかない……』など、さまざまな悩みがありますが、直接の上司には相談しづらいケースもあるだろうと考えていました。
 そこで、悩みを気軽に相談できる窓口を設けることで若手社員が健やかに働ける環境にしたい、と賛同者を巻き込みながら会社に訴え続けた結果、『社内メンター制度』を立ち上げることができました。運営事務局が中心となり、内部EAPとして始動し、今年で2年目に入ります。
 いろいろ苦労しましたが、元上司からの助言や協力してくれる周りのサポートがあったから続けてこられました。想いを伝え続けたことが今回の成功に繋がったのだと実感しています。
 そして、あらためて感じたのは、『一歩踏み出すかどうか』はすごく重要だということです。改善したい、やってみたいと思うことがあれば、まずは挑戦してみる。それで何かが変わるかもしれないし、変わらないかもしれない。でも、やったこと自体には必ず意味があると信じています。今回、この行動を起こしたことで少し自信になりました」。

北海道旅行でのお気に入りの一枚。(@小樽)

微笑みながら『健やかに』

 まずは挑戦し、伝え続けて一つの成果を出した吉田さん。こんなに強い気持ちで行動できた要因には何があったのでしょうか。そして、この先はどのようなビジョンを描いているのでしょう。
「ここまで『人のため』ってかっこいい感じの話をしてきましたが、本質的には自分が救われたい、自分を認めてほしいという気持ちも、どこかにあるのかもしれません。これまで自分が苦しかった思いや、あの時こうしていたらよかったのに……といった後悔を、誰かをサポートすることで取り戻しているような感覚でしょうか。過去の自分を救っているというのが、軸としてあると思います。決してかっこいい理由だけで動いているわけではないんです(笑)」。
 この正直さ、誠実さが吉田さんの持ち味、魅力の一つです。
「これからのことについては、そうですね、とにかく笑って過ごしていけたらいいな!リカレントの中川先生からいただくメールの冒頭に『お健やかにお過ごしでしょうか?』というフレーズがあるんです。この『健やかに』っていう言葉がすごく自分の中でしっくりきていて気に入っています。やっぱり身も心も健やかに歩んでいきたいなと思っています。
 そして、実は今、チャレンジしていることがあるんです! 会社のなかで新たにメンタルヘルスに関する事業を立ち上げようとしています。まだ検討を始めたばかりなのですが、近い将来、働く人が健やかに働けるようなサービスや支援を実現できたらいいなと思っています」。
 透明感のある佇まいのなかにキュッとした意思の強さが覗ける瞳は、やわらかに明日を見つめていました。