水田 真理子 
Mariko MIZUTA

タロット占い師として活動する水田さん。ほんのちょっとしたタロットカードとの出会いから独学で学び、さらに心理学への学びが繋がっていきます。その学びは父親とのコミュニケーションにも大きく変化をもたらしました。

〈Profile〉eMC2022年取得、神奈川県在住。タロット占い師。趣味は波乗り・旅・読書。好きな言葉「人間は楽しみの為に生きいるのではない」。

タロットカードとの出会い

「3年ぐらい前からフリーでタロット占い師として活動しています。個人鑑定や講師を務めることもありますが、保険会社さんなどの企業イベントに呼ばれることもありますね。そのときは太陽の下でマルシェみたいな感じで、芝生の上で占いをします。誰でもウェルカムって感じで。
 タロット占い自体は全然やってこなくって。物事の始まり方で、それをやろうと思ってなくても気づいたら始めていることってあるじゃないですか? 占い自体も、おみくじや本の占いページを読む程度で、自分で何かしようだなんて、まったく思ってなくて。
 ただ、本がすごく好きで、読んでいるなかでタロットが出てきたんですよ、ヨーロッパの歴史みたいな感じで。それを読んでたらすごい面白くって!それでタロットにちょっと興味が湧きました。76枚あるタロットカードには1枚ずつそれぞれ意味があるんですが、タロットカードを持っていなかったんですけど、意味を全部覚えました(笑)。
 意味を覚えたので、カードを買ったら占いができたって感じで、完全に独学ですね。ちょうど本を読んでいたときに、ローマに一人旅に行っていて、向こうはタロットが日常に入っているので、本屋さんに前面に置いてあったんですよ。買ってみたらすごい面白かったんですよね」。


心の奥まで表すタロットカード

学問としてタロットを極めたい

 心理学を学ぼうと思ったきっかけは何だったのでしょうか。
「タロットの鑑定をしているなかで、タロットって表面だけじゃなく、心の中の奥の方まで出てくるのがすごく多いんですね。カードのなかには悪魔や死神、痛みのカードもあって。人の闇や痛みというか、そういう人の気持ちに触れることが多かったので、そこを勉強したいと思いました。
 今って、前向きとかポジティブとか、でも、実際はそれだけでは生きていけないと思うんですよ。占いにはハッピーな人とかそうそう来なくって。どちらかというと、何かしら問題を持ってくる人が多いです。日の当たるほうだけじゃなくて、影を勉強しないことにはわからないこともあるんだろうなって。
 ネガティブやトラウマを悪いものとせずにいていいというか。そのときの自分を否定しないことってすごく大切だなって思っていたので、鑑定でも使える技があればと思って、心理学の勉強を続けていますね」。

ホノルルマラソンをきっかけに
今の自分がいる

 タロットカードとの出会いの他にも、人生で大きな出来事はあったのでしょうか。
「ハワイのホノルルマラソンを走ったことですね。ハワイに住んでいる友達から誘われたんですが、スポーツも大嫌いで、無理!って思ったんですけど、結局走ることになって。
 マラソンのスタートが真っ暗な中で始まって。超嫌だったんですけど、途中から朝日が昇ってきて、そこに向かって走ったんですよ。走っている間は前に進むしかなくて、途中からまるで自分の人生を走っているみたいだなって感じました。そうしたらだんだん[無]になってきて。
 走るなかで、足の不自由な方に手を差し伸べて走ったり、知らない間に周りに『頑張ろうね』って声をかけたり。すごい、こういうのいいなって思って。走り終わってゴールしたときに、すごい吹っ切れたんですよね。そこから他のスポーツにも興味が出て、波乗りの友達が多かったので、サーフインを始めました。そこからちょっと変わったというか。あそこで走っていなかったら今の自分はなかったって思います。
 サーフィンは自然相手なので、どうにもならないこともあるんですよ。そういうのをすごい学びます。自分がちっぽけだな、でも、ちっぽけで良かったなって思ったり。サーフィンは風が止んでほしいとか、潮回りが変わってほしいとか、自分でどうにもできないこともあって。人ではなく自然に合わせることで、自分が整って浄化されることとかありますね」。


忘れられないハワイ

人との向き合い方が変わった

「占い師をしているなかで、人の話を聴くことに役立つこともありますが、実の両親との関係にすごく活かされました。父は認知症の症状があり、耳と鼻の間にできる稀なガンが見つかり、認知症の進行もあって、それ以上の治療が難しいとなり、痛みを取り除きながら亡くなるまで自宅で介護生活を送りました。
 亡くなる前、父が散歩に行っていないのに『行った』とか、海辺を散歩したときに、『昔あそこまで泳いだ』とか、本当ではないことを話すようになりました。母からすると、そんなことしてないじゃん、という感じですが、私は父がそう言ったんだからそうなんだ、とそのまま受け止めました。
 リカレントで勉強したからこそできた対応かなって思います。そういうふうに受け止めたほうがお互い楽なんですよね。食欲がなくなる父になんとか食べさせたいと思う母の気持ちもすごくわかりますが、私は食欲がないのであれば、もうそれを父だと思って受け止めよう、母の言うことも受け止めようと思って。やっぱり、どうにかしたいと思うのはこっちじゃないですか。食べてほしい、だからこそ、どうにかならないことをどうにかするっていうのはおかしくなっちゃうんだよねって。
 鑑定でも、元気になってほしい、前を向いて歩いてほしいとか、そう思うのはこっちの勝手なエゴというか。そういう姿を見たい自分の欲望なんだな、と思って。鑑定でいい結果が出ることがすべてではないので、本当に元気がないまま帰る人のほうが多くって。でも、タロットカードは必要なことを伝えているので、私は感情移入をしないで読み取り、出たカードを伝えることが任務だと思ってます。辛い状況の中で来た人にも厳しい結果を伝えることもあるので、伝え方についてはリカレントでの学びがすごく大きかったです。
 悲しそうに帰った方が1年後、『あの時があって、今は救われました』と言ってくださる方もいて。だからその時は、ああ自分は辛いことを言って悲しませてしまったと思っても、受け取る側は違うんだなって。リカレントで勉強したことで、父との向き合い方もそうですし、私が軸じゃなくて相手が決めることなんだなって」。


占いはカウンセリングと繋がるところも

自分を整えて、向き合っていく

「これからのビジョン? カウンセラーとして相談所ができたらなって思ってます。善も悪もあって当たり前、それを認めたり受け止めたりして、自立できるサポートができたらいいなって考えています。
 占いのお客さんには本当にいろいろな人がいますね。自分が占い師として向き合っているときは、距離を作って入りすぎない。いいほうに読み取ろうとするとカードの意味を取り違えてしまうので。そこはカウンセリングと繋がるところがあるなって。一緒に泣きたくなるほど抑えられない気持ちになることもありますが、間主観的にしないといけないというか、自分をちゃんと整える、自分と向き合うのが一番大切だなと、カウンセリングも占いも思います。
 占いはカードが答えを教えてくれますが、カウンセリングは質問の背景とか、本当の質問なのかどうかを見極めないといけない。そういうところに奥深さを感じます。難しさもありますが、面白さも感じるので、これからもカウンセリングの勉強は続けていきたいですね」。