藤井 亜紀
Aki FUJII
これまで内部EAPとして新設部署で相談窓口の設立や保健師採用などに取り組んできたその最中、再び新設部署への人事異動。経理・ダイバーシティ推進部、働く社員のために、と責任感のある藤井さんがその次に任されたのは・・・。
〈Profile〉eMC2021年取得、東京都在住。総合通信販売企業のサステナブルコミュニケーション部マネージャー。夫、娘、高齢のうさぎの家族。趣味は所属しているアマオケの打楽器演奏と韓国ドラマ。
またもや驚きの人事異動
2021年7月の『こるCor』掲載時には新部署への異動を話していた藤井さん。その後、なんとさらに新たな人事異動があったというのです。
「15年間経理をやって、そのあとダイバーシティ推進部へ異動しましたが、さらに2022年7月に組織変更があって、サステナビリティコミュニケーション部という部署が新設されて、また異動することになりました。前回も新しい取り組みをやっていて、今回もまた新しい組織といった感じです(笑)。
この部署はまだ社内的にも認知度はそれほど高くないのですが、テーマとしてはサステナビリティ、ウェルビーイング、ダイバーシティ&インクルージョンの三本柱に取り組んでいくとしています。コミュニケーションを中心に社内に発信していく感じですね。もともと広報で取り組んでいたサステナビリティを、より会社として推進していくために創られました。
サステナビリティのなかには、今までやってた健康経営から一歩進んだ、ウェルビーイング、D&Iが包括されています。これからは社員同士のコミュニケーションを大切に進めていく。社員ひとり一人が生き生きと活躍できるという点においては、以前と同じではあるんですが、サステナビリティという要素が加わったことで範囲が広がった感じです。
今はマネージャーとして、部署を全般的に見ています。現在力を入れているのは、SDGsのジェンダー平等の観点からくる、女性社員のキャリア開発です。社内の意思決定を行うキーポジションの女性を50%以上にするという目標に向けて取り組んでいます。ですが、女性社員自身も取組への理解が人それぞれなので、まだまだこれからというところかな、と」。
ダイバーシティ推進部で立ち上げたウェルサポルーム
次はウェルビーイング相談室を
藤井さんは以前の部署で誰もが気軽に相談できる場所の「ウェルサポルーム」を立ち上げました。そこでは保健師さんを直接採用して、社員の心身の健康をケアしてきました。
「ウェルサポルーム」は以前の部署に引継いで、引き続き保健師さんに相談窓口を担当してもらっています。
以前は産業医だと敷居が高くて相談しづらいという問題がありましたが、昨年、精神科の先生に変更したということもあり、産業医の面談件数が増えてきています。それ以外も、引き続き保健師さんがバンバン面談してくれているので、上手く機能しているようです。ただ、私自身もまったく何もしなくなるのは嫌だったので、自分の部署上司や人事にも話せない不安やこころのモヤモヤの話を、キャリアも含めて相談できる窓口、「ウェルビーイング相談室」を、新しい部署でさらに創ったんです。
ダイレクトに人事でも健康の問題でもないけれど、生き生き働くことに影響を与える可能性がありそうな、コミュニケーションの問題などの見えづらい困難を抱えている人の受け皿となるように作りました。ちょっとふわっとしているのか、認知されるのはなかなか難しいと感じていますし、まだ相談も数人しか受けていませんが、これからもっと広げていきたいです」。
EAPの学びから得たこと
「EAPを学んで、本当にあらゆることに理解が深まりました。昔、気持ちが落ち込んでしまっている友人から頻繁に相談を受けていたときに『こんなときどうしたらいいんだろう』と深く悩みすぎてしまったことがあり、自分自身も入り込んで落ち込んでしまい、精神科の先生や産業医に相談したことがありました。それからEAPを学んだことで、当時感じていたモヤモヤが整理された感じがあります。あのときの選択は間違っていなかったと。ただ、勉強して理解したからこそ今、思い返すと、『ああすればよかった』『こうすればよかった』ということはやっぱり残っています。
あとは、仕事においては、成長していかなきゃいけないとか、もっと頑張らなきゃいけないとか、そういった「ならねば」にどうしても目を向けがちなのですが、例えば、一時的に休むこともあっていいし、どうしても気持ち的に弱ってしまうこともあるんだ、ということも理解できるようになりました。仕事を休まなければいけない状態の人に、本当の意味で真剣に『休んだ方がいいですよ』と言えるようになりました。休職から復職してきた人たちにも[ゆっくりでいいからしっかりサポートしていく]という考え方ができるようになりましたね」。
趣味のアマチュアオーケストラ演奏会より
さらに大きな夢があるんです
内部EAPとして、メンタル面でのケア、そしてその定着に励んできた藤井さん。社内では、徐々にメンタル面の相談なども多くなり、個々のセルフケアへの意識も高まったと感じています。そして、上司が部下を見るときの視点や、復職者への対応への意識にも変化が見られ、全体に意識が上がってきていると感じています。こんなふうに社員が生き生きと働けるよう、静かな情熱を燃やしてきた藤井さんには、さらに抱いている夢があります。
「今、グループ会社同士でキャリアコンサルタントの資格保持者が集まっての毎月の勉強会に参加しています。内容としては、ロープレや事例研究をしてみたり。会社でのキャリアの問題とメンタルヘルスというのは切り離せないところがありますので、これまで得た知識をそこでも活かせていければと思っていて。将来的にはグループ全体のなかで相談組織を持ちたい、という大きな夢があるんです。
自分の会社の人に相談するって、やっぱりちょっとハードルが高いと思うんです。そこで、他社だけど少し事情をわかっているグループ会社の人が話を聴くというのは、とても有効なのではないかと考えています。今の社内の相談窓口もそうですが、大事なのは相談件数というよりは、まずは社員みんなに『こんな窓口があるよ』っていう目に見えない安心感があることだと思っています」。
人との繋がりに軸足を置いて
これからを
今もリカレントで一緒のクラスだった方々との交流があって、定期的にオンラインで勉強会をしたりしています。情報いただいたりだとか、たまに雑談したり、そんな繋がりも楽しくて。仕事でも勉強でも、人と人の繋がりの面白さを知って、自分のなかで人間関係もどんどん広がっていきました。
なので、今後の人生はこれまでのことを活かして対人関係の仕事をやっていき、そちらに軸足を置いていきたいなと思っているところです。今は準備をしていく段階かなと思っていろいろ模索しています」。
日々自己研鑽を怠らず、新しい部署でも周囲の人のために行動している藤井さん。穏やかな口調で柔らかな印象のなかに、瞳には確かな決意が宿っていました。藤井さんの描く夢はどこまでも続いていきそうです。