福島 礼子
Reiko FUKUSHIMA
大学時代は児童学を専攻し、臨床心理士も目指していた福島さん。仕事、子育て、教育団体のスタッフなど、多くの経験を経て、自身の在り方を見つけました。それは、「人を活かして組織も活かすこと」。ここに至った背景とこれから。
〈Profile〉eMC2020年取得、東京都在住。総務・人事、娘(社会人)。趣味:コーラス。
気持ちに蓋をした
現在、飲料容器の自動回収機を設置・販売している環境関連の会社に勤務している福島さん。海外と日本の合弁会社で、少数精鋭のため、総務の仕事のほかシステム化推進・導入や実績集計など、幅広く担当しています。
大学時代は児童学を専攻し、臨床心理士も目指していたそうです。
「高校生の頃は音大に行きたかったんです。声楽やピアノも習っていたので。でも、親から反対されて断念しました。当時は、自分の個性は親に理解されていなかったんだ、って感じましたね。
児童学に進んだのは、自分が子どもの頃、ファンタジーの世界で生きていたようなところがあって、子どもの頃の体験や教育の大切さ、成長との関わりに興味があったからなんです。大学の恩師は、地域や保育の現場で研究活動をしたり、虐待などの社会的な問題にも取り組んで、子どもの心のケアをしたりしている社会心理学の先生でした。『見えている部分にも、見えていない部分にも関心を広げて考慮しなさい』と言われていましたね。
私は、もともと内面を掘り下げていく性質だったんですけど、大学でのこういった学びは大きかったと思います。ただ、体調を崩したことがきっかけで研究活動を断念しました。そこからしばらくの間、自分のなかでは心理学は断ち切ったんです。自分の気持ちに蓋をしていたと思います」。
芸術治療教育との出会い
「その後、一般企業に就職して、当時一般的とされていた生き方に翻弄されて、結婚して出産して、その後、離婚しました。離婚した頃は体調が思わしくないなか、リハビリをしながら、子育てをしながら、仕事もして……という状況でした。
子育てをするなかで、本もたくさん読んだんです。わらべうた・昔語り、そしてシュタイナー教育を実践する人々に出会ったことは本当に大きかったですね。 それで、芸術治療教育を行う団体にスタッフとして関わらせてもらうようになって。障がいを持っていたり、学校に行けなくなったりした子どもたちと一緒に、演劇やわらべうたなど芸術的な活動を一緒に体験していくんです。生きにくいものを抱えていたりして、外の世界から見たら扱いにくいと思われるかもしれないけど、一人ひとりが本当に大事な尊敬すべき存在と感じるし、人と比較することではない、ありのままでいいという体験を重ねていけたんです。 同時に、自分自身の育ちというか、ありのままの自分を殺していたな、ということにも気づいていったんです。音大を諦めてしまったのも、結婚して専業主婦になるのが当たり前とする周囲の人たちのなかで、周りに合わせるのを優先して自分を殺していたんだなって……。
当時は、子どもたちと関わること以外にも仕事をかけもちしていたので、朝早くから夜中まで仕事をしていたような状態でした。子どもたちのためにっていうことで、どんどん縁の下に潜り込んでいくような感じで、気がついたら自分がかつて目指していたことから離れてしまって、本当はどうしたいのか?っていうのを忘れていたし、キャリアアップするという余裕もありませんでした。それでも、一生懸命子どもたちのことを考えていたし、楽しかったですよ。私自身も癒されましたし、とても幸せで貴重な時期でしたね」。
しかし、やがてこの場に経営や運営に関わるコンサルタントが入り、法人化によって収益や経営という視点が重要視されるようになったことで、福島さんの幸せな時間は途切れます。
「私は事務の仕事が増えて、だんだん子どもとの関わりが減っていってしまいました。もっと現場の活動に関わっていたいって言えばよかったのに、言えなかった。収益が大切なことは理解していたんですけど、スタッフが辞めざるをえなくなったり、人が傷ついてしまったりする場面を目の当たりにするようになって。辛かったし、この状態でこの先、自分が役に立てそうもないと思って……。しばらくして辞めました」。
まわり道しながら行き着いた
自分も活かす道
子どもとの関わり・子どもの居場所の変化をきっかけに、福島さんは「人と組織」について深く考えるようになりました。
「子どもたちの通ってくる場の法人化だけではなく、当時かけもちしていた会社のなかでも、いろいろ思うところがあって、人と組織のことをすごく考えていたんです。人が組織のなかで自分らしく、自分を活かしていけたら、働く本人もハッピーだし組織も発展していくのに、って……。そんな思いを抱えながら過ごしていた頃に、EAPを体系的に勉強できるという資料を手にしたんです。それがリカレントとの出会いでした。
キャリコンとメンタルヘルスは、同じEAPという大きな枠組で考えていたので、どちらも学びたいと思いました。心理は大学で学んでいましたが、キャリアの理論は学んだことがなかったので、キャリコンを先に学び、2019年に資格を取得しました。キャリコンを学ぶなかで、『自分は仕事でのキャリアアップを考えてこなかったんだな』と気づいたんですよね。 その後、EAPを学び、2020年にeMCの資格を取得し、コンサルティングコースも受講しました。学んでみて、ますます、人を活かして組織も活きることを目指したい、EAPに関わることで自分自身も活かして調和していけたら、って思いました」。
かつて断念した心理学が、さまざまな人生経験と学びを経て、福島さん自身のやりたいことに繋がっていったのです。
これからのこと
「自分自身を本当に活かせる場所で仕事をしたいし、その場所は自分で作らなくちゃいけない、って思っています。
現在の会社では、多くの業務を兼任しているので、学んだことをすぐに活かすのは簡単ではないと思っているんですけど、一人ひとりの個性を活かして組織全体が生きていくような活動はスモールステップで、少しずつ増やしていきたいですね。
会社以外では、最近、地域の中でのボランティアを始めたんです。組織って会社だけじゃなくて、家庭だったり地域だったり学校だったり、人が身を置く場、人がいる場なんですよね。なので、地域のなかで悩んでいる人たちの助けになれればいいなと思って。その人の望んでいることや、本当に欲していることを理解して、どうすればこの人が快適になるんだろう、居心地のよい空間が持てるようになるんだろうっていうことを一緒に考えられるといいなって思っています。
あとは、これからは、自分自身が体験して、ワクワク楽しいって思えることを増やしていきたいですね。5年くらい前から、地元の合唱団で練習や演奏会などの活動をしているんです。みんなで声を合わせて音のハーモニーのなかにいると幸せを感じます。
それと、瞑想ですね。雑念が浮かんできても客観的に、ああ、そうなんだって流していける……。心のガラクタが整理されていくような……、そんな感じがします。自分の本心をさらけ出すことができなかったのが、本音が言えるようになったのも、瞑想のおかげだと思っています。
今まで、やりたいことを我慢したり、こうしなくちゃ……という呪縛に囚われていたりして、自分の個性や特性を殺していたこともたくさんあったけど、これからは自分を活かせる場所で、魂が喜ぶことをやっていきたいなって思っています。そうしないともったいないし、自分に申し訳ないから」。