福島 応治
Masaharu FUKUSHIMA

eMC第1期生でレジェンドともいえそうな福島さん。約11年間という長きにわたって学生の就職支援に心を尽くしてきました。そして今もなお、時代の流れとともに現れる新しい課題に対して知識を吸収し学び続け、若者を願う未来へ導いています。

〈Profile〉eMC2014年取得、埼玉県在住。ハローワークの就職支援ナビゲーター。趣味はサッカー観戦・食べること・旅行・温泉・写真、いつもキョロキョロしていて自然の変化に敏感。

知識をつけたことで
自分という軸ができた

「昔、メンタルヘルス不全で1年以上休職していたことがあります。先生にも難治だと言われていて、症状としては結構重いほうだったと思うんですけど、自分は根っから脳天気なところがあって。病気になったとわかったときから、何も根拠はないんですけど、必ず治るっていう思いだったんです。だから、ちょっと重い症状の頃でも、一度も自殺願望が出なかったんですね。
 でも、やっぱり治るまでにはすごく時間はかかりました。ただ、その間になんとなく治るんだろうなと思っていたから、いろいろ勉強したんです。そもそもうつ病ってどんな病気なんだろうから始まって。コントロールしなきゃいけないんだとわかったら、そのためにどうするか本を読み漁ったりして。もとは[べき思考]が強かったのですが、勉強してそれも腑に落ちたんですよね。
 当時通院していた病院ではカウンセリングはなかったので、そういうメンタルヘルスに関する知識とかもつけていくうちに根本的な考え方がガラリと変わったっていうか。『人に迷惑をかけたくない』、『自分がやってしまった方が早いし、そのほうが丸く収まる』と考えて周りの目も気にしていたのが、『自分はこうなんだ』ということが理解できて、自分という軸ができました」。

サポートがあれば

 福島さんは順調に回復していきました。
「薬は結局5年くらいは飲んでいましたが、自然と治るんだろうなって思ってたことと勉強して学んだこと、周りの理解もあったおかげです。それから再発してまた休職することもなく、徐々に徐々に最終的には。気がついたらもう薬は大丈夫だなっていうところへ行き着きました。ただ治ったといっても寛解の状態なので、その後は自分ですごく気をつけてコントロールするようにしています。少なくとも今は、すごく楽ですね。
 今の仕事は時間的にといったプレッシャーみたいなものが比較的ないので、自分に合っている環境っていうんでしょうか。休みも取れるし、自己の裁量も結構あり、仕事とも上手くマッチしているので順調なのかなと思います。人によって原因や症状ってさまざまだと思いますが、自分がいま寛解しているということを考えると、適切な対処が必要なんだと感じました。サポートがあれば必ず元気になる、そう思いましたね」。


いつもキョロキョロしているから自然の姿にも敏感

働く人には元気であってほしい

 現在、中学生から大学生、既卒3年以内の方などの就職活動の支援をしている福島さん。さまざまな学生さんが来て面談などをしていますが、やはりキャリアとメンタルヘルスは切り離せません。
「CDAの筆記試験に受かったあと、あとは実技試験のみという段階で、たまたま求人を見つけて応募して、今の組織に採用してもらいました。はじめは30代~40代の方々の支援をしたいと思っていたんですね。そうしたら採用されたのが学生支援だったということなんですけれども。自分がメンタルヘルス不全を起こした経験もあったので、やっぱり元気に働きたいなということと、前職では人事をやっていたこともあって、自分のような不調者と関わることもあったので、働く人には元気であってほしいという思いから、支援の仕事がしたいと思い始めました」。


気がつくと相談の経験はずいぶん長くなりました

キャリアとメンタルヘルス

 eMCの資格を取ってみて、理論からサポートの仕方まで実際に学ぶことができたのはすごく大きかったですね。やっぱり知識があると見立てがしやすくなると思いました。いろいろ方法を提示できる。最後はもう本人が決めることではありますが、提案ができるというか。『ここについてはこんなふうだね』って一緒に考えたり。『今回はこうだよね』と模索していったり。それで最終的に本人が決断していく姿を見ると、何か少しでも役に立ってたのかな、とやっぱり思います。
就職においてもさまざまなパターンや要素があるので、やっぱりキャリアコンサルタントという知識とメンタルヘルスの知識がないと十分な支援は難しいなって感じています。それがあれば支援の幅が広がるし、なるべくいろいろなことに対応できるためには、どっちも必要なんだと思います」。

一緒にそんな思考になっていこう

 支援をしながらも自身もまた支えられている部分があると福島さんはいいます。
「私のところに相談に来る学生さんは、基本は何かしら課題を抱えている方々が多いので、やっぱりそういう子たちには『未来は自分で創れる。未来は自分で創るもの。だから希望を持てばいいんだよ。』ということを伝えたいと思っています。それを言っていると自分への戒めにもなりますしね。
 なので、自分のような支援者と一緒にそんな思考になっていこう、という想いを込めています。その結果、学生さん達からそういう前向きな発言が出たり、考え方が変わっていたりすると本当に嬉しいです。『また頑張ろう!』ってなります。そう考えると実は、こちらがサポートするだけではなく、学生さんたちから助けられることもたくさんあるなぁ、と感じています」。

未来を創っていく人と共に

「最近ではLGBTQに対する支援が課題だと思っています。この仕事を始めた頃はそうでもなかったのですが、今はそれに関するアンケートをとることがスタンダードになっていて、身近なものになっています。例えば、女子校の学生さんが男性として就職したいという相談も現実に起きています。頭ではわかっていても実際にそういった相談が来ると、一瞬固まるんですよ。そういう体験をすると、このままではまずいと思いましたね。
 社会の動きや企業の動きにも注意を払いながら、学生さんへ情報提供ができるように準備していかなければいけないと。時代の流れとともに知らないことがたくさん起きるので、また知識を吸収していこうと思っています。やっぱり関わるからには役に立ちたいですし、何か一つでもヒントとかを一緒に感じられたらいいなって。
 ひとり一人に向き合うということはもちろん、今の仕事は若い方、これからの未来を創っていく人材が対象なので、そういう人に関われる。自分が関わった人が世のなかを創っていく。そこの支援ができるところにやりがいを感じています。毎日毎日そう上手くはいかないですけど(笑)。でも、だからこそ前を向かないと、って思っています。
社会って一人ひとりがみんなを支え合っている。自分一人では生きられない。自分が生活するためにはいろいろな人が働いてくれている。だから成り立っているっていうところがあると思うので、みんながハッピーになれば世のなかハッピーになるのになって。目の前の方だけではなく、社会全体を良くしたいんだ、という2つの視点を持つと、仕事としてすごくやりがいを感じられるのかなと思います」。
 福島さんは、趣味のサッカー観戦では現地へ行って応援することで、リフレッシュをしながらオンオフを切替えています。日々がとても充実していることがハッピーな笑顔から伝わってきました。


サッカー観戦は現地で熱血応援が基本