新島 美奈子
Minako NIIJIMA
企業で働きながらキャリアコンサルタントとしても活躍する新島さん。主に新卒者への就活支援を6年ほど続けています。学校でのキャリア支援の講演や、最近はハラスメントの相談も受けているとのこと。とても優しい雰囲気で、温かい言葉使いと笑顔が印象的です。
〈Profile〉eMC2021年取得、千葉市在住。就活支援講師、フリーのキャリアコンサルタント。夫+トイプードル、趣味はトレッキングと読書。
キャリア支援にメンタルの相談が
新島さんは、新卒の就職支援では、ひとり一人に時間をかけてサポートし、就職先が決まるまでしっかりと伴走します。加えて、職業訓練校や学校での講演などを通じて、多くの若い方も支援しています。そんななかでメンタルサポートの必要性を感じたことが、EAPを学ぶきっかけになりました。
「一時期ポリテクセンターとか、職業訓練校で就活支援講習をやっていたんですけれど、その頃から『人間関係が上手くいかなくて辞めた』とか、[うつ]になっていたり、『引きこもっていたけどやっと出てきました』とか、そういう方が比較的多くいたんですね。
その頃は、なんでそうなるんだろう、話は聴いてみたいけれども聴き方もわからないし、キャリアの部分で関わっているんだから……とスルーしていたところがありました。ただ、最近は就活の学生支援をしていて、そこをスルーしては支援できないと感じるようになりました。いろんな問題を抱えている学生がいて、やっぱりメンタル系の専門知識を身につけたほうがいいなって思ったんです。カウンセリングの実務が学びたいなって思ったことがEAP講座の受講のきっかけです」。
新島さんは、人生においての自身のキャリアを振り返ります。
「平々凡々な感じですけど、昔から人と関わるなかで何かを創造していくとか、作っていくみたいなところがすごく好きで、教育関係に進みたいって考えていました。小学校に教育実習にも行ったんですけれども、そこで短い間でも何かちょっとでも自分が役に立てることはないかなって気持ちがあって、できることをいろいろやり始めたんですね、そしたら、『言われてないこと以外はやらなくていいです』って言われて、そうなんだ?!ってびっくりしちゃって……。教育は好きだけど、自分は公務員には向いてないな、と思ったんですね。
そこで何か目標がなくなったってしまったんです。すごいショックだったことをよく覚えています。もう夢キラキラで、『そっちの方向性で歩んでいこう!』みたいに半分決め込んでいたので。それが、『あーやっぱり違ったかな』ってなったときに、立て直しがすぐにはできなくて……。もう何でもいいや!って思って、建設会社の事務職に就いたんですけど、いや、もう~つまらくて、つまらなくて(笑)。それで人材会社に転職して、今に至るという感じです」。
愛犬トイプードルと焚火フィールドで
支援の視点が変わった
EAPを学ぶことで相談を受ける幅が広くなったと感じた新島さん。さらに学びを深めていきます。それはどんな変化をもたらしたのでしょう。
「学生さんは生活全般に対して相談に来くるので、親との関係、学校での人間関係、部活との両立とか、まず、幅広く話が聴けるようになってきたことですね。キャリコンの仕事のなかでは、そこが一番大きいです。
そして、学生への支援の視点が大きく変わるきっかけにもなったと思います。例えば、青年期の発達課題の特徴などをEAP講座でいろいろ教えてもらい、なるほどと理解することで、仲間と一緒に学生にどういう支援をしていくか、『こんな支援も入れたほうがいいんじゃないか?』とか、[どうしていくか]を考えるようになった。『ダメだね』で終わらせるんじゃなくて。一人ひとりを深く人として捉えられるようになったかな、っていうことを感じています。
実はEAPを学んだきっかけから、もっと深く心理を知りたいと思うようになって、公認心理師の資格も取りました。対人支援の根幹って心理学じゃないですか。聞きかじった知識はあるけれども、それがどういう繋がりでどうなっているのか、全体像はなかなか見えてなかったんですよね。発達系のいろんな種類や、人間のモチベーションの違いとか、しっかりとした理論を学べるって聞いたので、しかも教育とか司法とか福祉とか、いろんな部門の知識も身につくと聞いて。勉強を通じて世の中の全体的なメンタルに対する支援の方策もいっぱいあるんだなっていうのもわかりました。
それと、EAPを受講しているときに、主人が軽度なんですけど適応障害になったんですね。どんどん痩せていって……そういうときにたまたま授業で、いろいろな精神疾患の事例の話しがあったんですが、まさに適応障害の症状が主人にドンピシャだった。もしも、学ぶ機会がなければ、きっとすごく心配し過ぎたし、間違った声がけをしたり、本人を責めたりしてしまったかもしれない。けれど、専門知識があったことで主人の気持ちも丁寧に聴いて、一緒に考えることができた。
専門知識を持っていると全然違うんだ、という経験したことで、もっと学びを深めたいっていう気持ちになりました」。
トレッキングでのお花畑でにっこり
聴くという耳を持ったことで
新島さんの将来のありたい姿、ビジョンはどんなものでしょう。
「最近、キャリコン対策セミナーをやらせていただいているのですが、オンラインの授業が終わった後に、個別に参加者さんからキャリアや人生の相談をされたり、学生さんからも、今まで相談されなかったような話をされるようになったんですよね。自分が聴くという耳を持ったことで起きた変化かなって思う。
以来、聴けることは聴きたいなっていう姿勢になっているんです。主軸はキャリコンかもしれませんが、幅広く人の支援ができるところを目指したいなと思っています。
それと、メンタルヘルスの予防の大切さについて、EAPの仲間同士でも何か支援活動をやりたいね、みたいな話はよく出てくるんですけど、なかなか具体的なアクションの糸口がなくて。たくさんの人にメンタルヘルスの予防に興味を持ってもらい、もしも大変なことがある方がいたら、私たちが相談の受け皿になって支援する。そこからメンタルヘルス予防を広げていけたら……なんて理想を思い描いています。
今、自分のホームページをリニューアルしていて、キャリア相談だけじゃなく、『メンタルヘルスの相談もお受けします』という発信や、心理学の講座とかも少しやっていきたいなって思っています。そのためには、まず自分がしっかりともっと知識も技術もつけていく必要があると感じています」。
ハードルの低い、相談しやすい相談窓口を広めていきたいという熱い思いと、そのために必要な自己研鑽を積む努力。新島さんはこれからきっと、その行動力で多くの人のメンタルヘルス予防に繋がる活動の輪を広げていくのでしょう。