五月女 亜由美
Ayumi SOUTOME

35年間一つの会社でバリバリ働いてきた五月女さん。順調にキャリアを積み重ねてきましたが、役職定年を機に先のキャリアを真剣に考えて、一つの方向が見えてきました。物腰柔らかく親しみやすい五月女さんですが、豊かな経験からくる自信と持ち前のチャレンジ精神が伝わってきます。

〈Profile〉eMC2020年取得、埼玉県在住。精密部品メーカー勤務、メディア企画担当部長兼障がい者支援担当部長。仕事でのモットーは「目的を明確にする」。音楽とビールを愛する角松敏生ファン。

これまでのキャリアパス

 新卒で就職した会社で勤続35年の五月女さん。ビジネスの最前線で活躍し、管理職にもなりました。2年前に役職定年となった後は一歩引いたポジションで広告宣伝を担当しています。ビジネスマンとしての転機でEAPと出会い、これからの生き方の方向性が見えたといいます。
「大学卒業後に就職したのは産業用の精密部品を作っている会社です。入社して配属されたのはユーザーサポート部門。マニアックな製品を扱っていて、ユーザーである技術者からの問い合わせに対応する仕事です。この仕事のおかげで製品知識が身につきました。
その後、販促部門を中心に活動し、管理職になりました。2年前に役職定年を迎え、今は比較的自由なポジションで、自社のウェブサイトをリニューアルするプロジェクトで活動しています」。
 五月女さんには本業とは別に、EMCA関東支部の副支部長という顔がありますが、どんな活動をしているのでしょう。
「EMCAの支部が立ち上がるタイミングで、役職定年になって時間にゆとりがあったので支部活動に参加することにしました。カウンセリングは勉強しても実践を積み重ねないとなかなかスキルが上がらないですよね。私は仕事でカウンセリングをしているわけではないので、特に実践の機会がほしいと思っていたんです。支部会が立ち上がるのだったら、最初から参加してカウンセリングを実践する機会を作りたいと思いました。
 ただ、立ち上げ初年度は役員の人数も少なかったので、実現できなかったんです。2年目からは役員の人数も増えて、同じ目的を持つ仲間3名で、実践の場を作ることができました。私たちが企画運営しているのは、2名の会員が30分ずつ交互にカウンセラーとクライエントとなりロープレではないリアルな相談を行うセッションで、現在は毎月開催しています」。

「そうだ!カウンセラーなら!」から始まった

 精密部品メーカーと心理とは一見、無縁のようですが、EAPを学ぶきっかけはなんだったのでしょう。
「大学は社会学部で、当時から社会心理学に興味があり、人間の行動と心理を学んだのですが、会社は心理とは無縁の業界ですし、長い期間、心理から遠のいてしまいました。2年前に役職定年になったとき、定年後に何をしようかなとじっくり考えたんです。
 管理職もやっていたし、人の話を聴くことも多かったし、心理にも興味があるし……『そうだ! カウンセラーならこの先も長くやっていけるかも』って。そして出会ったのがEAPで、すぐに学び始めました。
 2020年に資格を取得した後、社内で何かできないかな?と思って人事の知り合いなどに相談したのですが、現場にいる私が社内で相談室を立ち上げるような仕事をすることは難しかった。
 その後、障がいのある男性が入社し、その方を支援したことがきっかけで『企業在籍型ジョブコーチ』の資格を取得しました。会社が障がいのある方の支援に力を入れたことにも助けられ、会社のなかで違う活動をする名目ができたっていうんでしょうか、私の希望が認められ、この3月からメインのウェブサイトリニューアルの仕事と、障がいのある方の支援担当という役割を兼務することになりました。これをきっかけに少しずつ対人支援関連の役割の比重を上げていこうと企んでいます(笑)」。


同僚とWeb関連の検定に合格

EAPの学びがもたらしたもの

 役職定年後、社内でキャリアシフトの一歩を踏み出すことに成功した五月女さんですが、そのきっかけの一つにEAPとの出会いがありました。実際にEAPを学んでみて何が変わったのでしょう。
「EAPを学んだ後、日常生活や仕事で変化がありました。特に、意見が合わない時の対処法です。以前は自分と反対意見が出たり、否定されたりすると少し感情的になってしまうところがあったのですが、どうしてこの人はそういう意見を言うのだろうと、価値観の違いや事情を深く考えるようになり、感情的になることが少なくなりました。
 また、オープンクエスチョンを多用しながら人の深い考えを引き出すことが多くなり、これまでのやり方で導き出すのとは違う結論にたどり着くことが意外に増えたんです。時間がかかることもありますが、結論が出た後スムーズに仕事が進むことが多くなった気がします。
 スピード優先で相手が何を思っているかを察して進めてしまうところがあったのですが、まずは決めつけないで聴くことができるようになったかな。
役職定年では喪失感を感じることもありましたが、EAPと出会い『自由になった!』と捉えるようになりました。今だからこそ、新しいことをやるチャンス!待っているだけでは何も進まない。再来年には定年を迎えます。定年後を見据えてとにかく新しいことにチャレンジしたいです!
 先日人事の女性から『五月女さんって無邪気ですよね』って言われました。自分に対して正直になったのでしょうか。周りから見るとそういう印象なんですね。昔は周りの人がどう思うかって気にすることが多かったけど、今は『別にいいじゃん』って思えるようになりました」。


障がいのある方の支援担当に

伴走役みたいな存在に

 自分らしさを大切に新しいことにチャレンジしたいという五月女さん、今後のビジョンはどのようなものでしょうか。
「仮に稼げなくても仕事として成り立たなくても、何かしらの対人支援はやりたいです。辛いときとか苦しいときに話を聴いて、横にいて頷いてもらうだけですっきりして心が整理できる。そういう『伴走役』みたいな存在になれたらいいですね。
 実はうちの会社では外部のEAP会社と契約していて、私も10年くらい前に利用したことがあります。プライベートですごく悩んでいた時期でしたが、話を聴いてもらうだけですごく助けられました。まだ会社には外部EAPの環境しかないので、私が在籍しているうちに内部EAPを実現したいと思っています。
 そしてもう一つ、EMCAの存在を世の中にもっと広めたいです。カウンセラーがもっと身近にあるような社会を作りたい。皆さん一緒に頑張っていきましょう!」。