石川 梨奈
Rina ISHIKAWA

IT企業で人事業務を担う石川さん。悩んでいる人を助けたいという想いからEAPを学び、資格を活かして現在は「Gojo Cafe」にてカウンセリングのボランティアをしつつ、アンガーマネジメントの講師としても活躍中です。

〈Profile〉eMC2014年取得、東京都在住。IT企業の人事、アンガーマネジメントコンサルタント。愛想笑いではなく心から笑顔で過ごすをテーマに、Smile Of Partnerとして講座や個人セッション等をライフワークとして活動。

人の感情の奥深さを知りました

 ITコーディネーターをしていました。担当している派遣さんが、急に連絡がつかなくなったり、『朝、辛くて動けません』『出勤したいのに仕事に行けない』と相談されることが多くて。この方々は会社に行けなくなるほどメンタルが弱ってしまっていたんですよね。メンタルの問題だと思っても、実際にどう対応すればよいのかわからず、悩んでいました。そんなことがあり、何か少しでも役に立てばと思い、リカレントの体験授業に参加した石川さん。
「体験授業を受けてみて、人の話しを聴くのは技術が必要なこと、人の感情の奥深さに触れて、そこからどっぷり心理学にはまっていきました。カウンセリングを学べば学ぶほど、もっとこの人の悩みを聴きたい、もっと深く理解したいという想いが強くなっていたところ、現在の会社から『人事で働いてみないか?』と声をかけられたんです。人事は人と真剣に関われる部署だと思って、ぜひチャレンジしてみたいと思ったんですね」。

人と人を繋げる役割

「人事での業務のメインは中途採用・新卒採用などになります。付随して人材育成などもしています。日々仕事をしているなかで、社員から相談を受けることもあれば、悩んでいそうな社員がいれば、こちらから声をかけるようにしています。話を聴いたうえで、適切な人に繋げることもあります。リファーすることの大切さはリカレントで学んだからこそ、私自身で解決せず、自分の範囲外のことや、私より適切だと思う人に必要に応じて繋げるようにしています。
 例えばですが、研修についていけないと感じた新入社員の方がいて、限界に達したのか「仕事に来ると涙が出ちゃうんです……」と相談を受けたことがありました。よくよく話を聴いてみたところ、前職で質問をして怒鳴られてしまったことがトラウマとなり、わからなくても質問することができない、ということでした。どうしてそう思うのか? どんな気分なのか? と、丁寧に聴きながら親身に心に寄り添い、相談しやすい環境を整えたことで、最終的には元気になって職場に戻っていかれました。
 多分、EAPを学んでいなかったら本人の辛さに寄り添う前に、『質問しなきゃだめだよ』といったアドバイスをして、余計に追い込んでいたかもしれません。
最終的には、社内EAPに近しい役割を担えたらいいなと思っています」。

Gojo Cafeで
カウンセリングバー

 人事の仕事の他にも、NPO法人ダイバーシティワールドが運営する『カウンセリングBAR』でのカウンセラー、また一般社団法人日本アンガーマネジメント協会のアンガーマネジメントコンサルタントの資格を取得して、アンガーマネジメントの講座や個人セッションを、NPOとは別で行っています。『カウンセリングBAR』で石川さんがよく使うバーが新宿3丁目にある小さなショットバー『Gojo Cafe』です。Gojoという名前は、『互助』から由来しています。マスターは沖縄出身の、とても心温かい、話の聴き上手な方で、ふらりと気軽に仕事帰りやお休みの日に立ち寄りたくなる、隠れ家のような居心地の良い空間です。
 石川さんは、ここで何年も前からNPO法人ダイバーシティワールドのカウンセリングBARに問合せのあったクライエントのカウンセリングを行っています。その様子は以前の『こるNo.5(2018年)』にも紹介されました。どこか堅苦しいカウンセリングルームと違って、カジュアルで開放的な空間で、お隣でしっぽりと話が聴いてもらえる。ほっこりとくつろげる心地よい距離感で話しをすることで、こころが癒されていきます。
「カウンセリングがもっと身近なものになってくれたら。そう思いながら活動しています。カウンセリングBARは、それを叶える場所の一つ。気軽に、ちょっと聴いてほしいという程度でいいから、カウンセリングに来てほしい。そして、それが当たり前になるような社会になってくれたらいい。それが私の願いです」。


カウンセリングBARでカウンセリングをもっと身近に

怒っている人は素敵な人が多い

 アンガーマネジメントの講師としても活躍している石川さん。どのような経緯からアンガーマネジメントの講師になったのでしょうか。
「以前、労務士の先生の紹介で受けたパワハラ講座のなかで扱われたアンガーマネジメントの『怒ってもいい』というフレーズに興味を持ちました。講座の先生に資格取得を勧められたこともあり、アンガーマネジメントファシリテーターの資格を取りました。リカレントでカウンセリングを学んでいたときに、授業で『石川さんは怒りの感情が苦手だよね~』と指摘を受けたことも思い出して……というのも資格取得のきっかけの一つです。
 実は、怒っている人はとても素敵な人が多いんですよ(笑)。だって怒るということは、その対象を真剣に考えているからですよね? 例えば、仕事や、恋、生活の場面でも、怒っている人は、根底にある指針・大切にしている価値観を持っていても上手く表現できない、相手に伝えることができない、だから怒ってしまう…のかなって思うから。何か情報やきっかけがあれば人は変われるので、それを紐解く支援をすることが私の役割です」。


「Gojo Café」のあったか~いマスターと

良い怒り方

 では、良い怒り方とはなんでしょうか?
「例えば、子どもが友達を叩いてしまったときに、感情的に怒ったりすることがありますよね? その場合、感情的に怒るのではなく、どうしてだめなのか、次からどう対応すれば良いのかをきちんと伝えることです。自分がそもそも何に怒っているのかを知り、相手にどうしてほしかったのか、どうすればよかったのかを、相手にわかるように伝えること。
 怒って後悔することもそうですが、怒れなくて後悔することをなくすことも、アンガーマネジメントです。言わなくてもいいけど言ったほうが関係が良くなることは、相手に上手く伝えることが大事ですよね。アンガーマネジメントは、怒らないことを目指すものではなくて、違いを受け入れ、人間関係を良くすることなんです。私はアンガーマネジメントを学んで人生が大きく変わったので、お勧めです!(笑)」。

「やれる!」と思えれば
道は拓ける

「資格を取りたての時は何をどう役立てれば良いのかわからず、迷った時期もあります。勉強したから、資格をとったから、と言ってすぐには役に立たないかもしれない。でも今、学んでいることが、生きていてどこかでは必ず役に立つと思う。私も一つ目標が見えたら、そこから道がどんどん広がっていきました。とにかく『やれる!』と思ったことにチャレンジしてみると、道が拓ける!という感じでしょうか。
 今、取り組んでいる心理の活動は、できればライフワークとしていきたいと思っています。もしも、人と関わることをビジネスにしたら、私が本当にやりたいことから外れていってしまうような気がして……。今みたいに、いろいろな人とナチュラルに関わって、その人たちがハッピーになるサポートができればいいなと思っています。それができることで私もとても幸せな気分になれます」。
慈しみに満ち溢れている石川さん。これからもたくさんの人のこころにHappyが訪れるよう、動いていきます。