橋本 美穂
Miho HASHIMOTO
フリーランスのキャリアコンサルタントとして活躍する橋本さん。スペインに興味があった橋本さんはスペイン語学科に進学、フラメンコのサークルで歌を歌うことに夢中になり、スペイン留学も果たしました。あふれる行動力と、“パワフルで潔く”生きる、そのラテンの情熱は多くの人を元気づけます。
〈Profile〉eMC2016年取得、東京都在住。BPO事業会社経験後、2015年独立。現在「オフィス・パルマス」を主宰し、企業研修やキャリアコンサルティングを提供。 登壇は1200回超。
信頼と実績の歩み
現在は研修講師として年間150日以上登壇し、多くのキャリアコンサルティングもこなす橋本さん。フリーランスとしてこれだけの信頼と実績を築いてきた背景には何があるのでしょう。橋本さんは大学を卒業した後BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)の会社に就職しました。転職やブランクもありましたがトータルで約20年間、組織の活性化、社員のモチベーションやパフォーマンス向上など、どの企業でも必要とされるノウハウを実務によって着実に積み上げてきました。独立後はこのノウハウを生かしながら信頼と実績を着実に積み重ねています。
「コールセンターや事務センターの現場は非正規雇用の方たちが中心です。『現場が最大限のパフォーマンスを発揮するためにはどうしたらよいか?』それを考えて実践していくことが私の最初の仕事でした。初めのうちは個人というより『チームを利益化させる』『チームの雇用を守る』といった組織の意識が強かったのですが、結局は、個人に働きかけない限り成果に繋がらないことに気づき、『個人のモチベーションを上げるためにすべきことは何か?』を常に考えるようになりました。
個別の相談も受けることが増えました。また、管理者のレベル統一を図るためにスーパーパイザー向けのテストを作ったり、効率化できていない現場の問題解決をしたりと、個人と組織に対する実務的な業務の広がりによってノウハウが溜まったように感じます。
それもあってか『キャリア支援をやりたい』という想いが強くなり、会社を辞めて独立することを決めました。独立後はこれまでの経験を活かして企業向けの研修講師から始めようと、研修会社の講師に応募したことが今の仕事の始まりです。そこで縁のあった数社と今も継続的に仕事をさせていただいています」。
「研修テーマは、企業の個別事業に関する内容以外なら、何でもやりますよ!」が橋本さんの強み。深くて広い実務経験に裏打ちされた研修講師として、この積極姿勢と自信があったからこそ、橋本さんは企業からのさまざまなニーズにマッチした研修を提供し続けることができ、多くの信頼と実績を築くことができたのでしょう。
大切なのは「どうできるか」
幅広いテーマで高品質な研修を維持するポイントは、どのようなことでしょう。
「普段は人に伝えたり教えたりすることが圧倒的に多いので、それだと枯渇してきちゃいます。月1~2回程度勉強会に顔を出したり、リカレントが提供しているセミナーを受講したりしています。クライエントが抱えている問題のトレンドをタイムリーに拾えているのは、お客様である企業の研修担当者や受講者の方々が抱える課題を常に扱っているからだと思います。
『現場の問題をいかに解決していくか?』、これが最大の関心事です。知識や理論をよく知っている方でも、実際にやってみようとするとできないことが多いです。知識と行動のギャップ。そのギャップが埋まらないと仕事の現場に戻っても実践できないことになります。私が研修で大切にしているのは、『何を知っているか』ではなく、『どうできるか』です」。
ときどきラテンシンガーになります
心の整理のために存在していたい
「キャリア系の資格は、2015年にキャリアコンサルタント技能士2級を取得したのが最初です。資格取得後にキャリアコンサルタントとして活動するなかで、メンタル系の話題に触れることが多くなったことで、メンタルヘルスを学ぶ必要性を感じ、EAPを学び始めました。
EAPを学ぶことによって、カウンセリングに向かう姿勢は大きく変わりました。『本人の生育歴や人との関わり方によって、キャリア理論とキャリアの悩みってこういうふうに噛み合ってるんだ!』ってすごく腑に落ちたんです。クライエントにメンタル不調があるなしに関わらず、生育歴や家族のことを聴くことによってキャリアの悩みを深堀することができ、本質的な悩みが見えてきたりします。あらためて、キャリアコンサルタントにはメンタルヘルスカウンセラーのスキルが必要だと感じています」。
橋本さんがキャリアコンサルティングをする上で大切にしていることは?
「クライエントの悩みに対して正解か不正解を探すのではなく、『自分らしさ』を決め手にしてほしいということ。本人が悩みをどうとらえていて何が自分らしいことなのか? という心の整理を支援するために、私は存在していたいです。キャリアコンサルタントが扱うテーマってすごく幅広いですけど、シンプルに表現すると『意思決定の支援者』なんだと思います。
ただ、メンタル不調の方に対しては意思決定すら難しいこともありますので、そういう場合は、クライエントの状況や特性を理解した上で支援することを大切にしています」。
貫いたこと、そしてこれから
「人生の良し悪しはわからないですが、唯一自分の人生で貫いたことは、[自分で決める]ということです。
人から多くのアドバイスや影響は受けてきましたが、最後は人に意思決定を任せずに自分で選択する。もちろん思い通りに行かないことが多いし、環境に阻まれることもある。結果として失敗もたくさんしてきました。ただ、すべて自分で決めてきたことだから受け入れています。悔やんでも後戻りできないし、自分の人生を誰かのせいにすることだけはしたくない。
失敗したときは、『さて、ここからどうしようかな?』って毎回考えています。これまでの人生はいろいろありましたけど(笑)、納得しています」。
橋本さんがキャリアカウンセリングで大切にしている[自分らしさ]という言葉は、自身の人生の経験から来ているのですね。ラテンの太陽のごとく眩しい活躍ぶりですが、これからはどんなビジョンを持っているのでしょう。
「キャリア系の知識を中心に、幅広く学び続け続けたいです。それは単なる好奇心からではなく、支援できる幅を広げたいからです。
そしてもう一つは、キャリアコンサルタントが活躍できる場を広げる活動をしたいです。キャリアコンサルタントはかなり増えてきました。でも、まだ活躍の場が十分存在しているわけではないと感じています。ニーズはたくさんあると思っていますが、そのニーズに対応できる環境をどう実現していくかが、ポイントなのだと思います。
ただ、そのためには私を含めたキャリアコンサルタントのレベルアップが欠かせない条件だと思っています。ぜひ一緒に頑張っていきましょう!」。