清水 登志子 Toshiko SHIMIZU

IT企業の人事部に勤務している清水さんが、健康管理担当になったのは4年半前。休職者の復職支援を申し出たことがきっかけで、学生時代から抱いていた「いつか心理を勉強したかった」という思いと、目の前の世界が繋がりました。

〈Profile〉eMC2020年取得、東京都在住。IT企業の人事部健康管理担当、夫・長男(昨年に入籍し、今年3月に結婚式をあげました)、趣味はアウトドア全般で、現在は乗馬に夢中。

心理学への興味が
時を経て今と繋がった

 IT企業の人事部で、健康管理を担当している清水さん。社員の健康診断のフォローや休職者の復職支援、ストレスチェック、衛生委員会、最近では社員へのメンタルヘルス教育も担当しています。
「健康管理の担当になったのは4年半前、グループ会社同士の合併のタイミングでした。それまでは人事総務で採用や契約などを担当していたのですけど、専門性を高められる仕事をしたいと思っていたので、健康管理担当に手を挙げました。
 新しいことをやるってなかなかないので、頑張って新しいことを学びたい、と思っていました。でも、いざスタートしてみると、健康診断のフォローも遅れがち、衛生委員会運営に課題があったり、と、健康管理全体がうまく回ってない状況でした。まずは、できていないことをやらなきゃ、って思いました。経験のない私が、合併したばかりの会社で、健康管理をどこから、どのように取り組むべきか、手探り状態で大変でした。でも、その反面、一つひとつ形になっていく実感はありましたね。
 休職者への復職支援も、産業医はいるものの、上司が1人で担っているような状況だったように感じていました。若い人にメンタル不調者が増えてきているな、という体感があったので、健康管理担当として何をすべきかを考えて、担当を申し出ました。上司に言われたわけでもなく、勝手に考えたんです(笑)。
 実は、学生時代に心理学に心惹かれて、勉強したいと思っていたんです。社会人になってからも、心理の勉強をしたい気持ちもあったんですけど、人事総務なので社労士の勉強を選びました。でも、ずっと心のどこかに残っていて。健康管理担当になって、メンタル不調者への対応をするなかで、『そういえば心理学をいつか勉強したかったんだ』、『ここで繋がったな』、って思ったんです。
 そこで、EAPメンタルヘルスカウンセラーを見つけました。産業カウンセラーと迷ったけれど、EAPは病理的なところもしっかり勉強できそうだと思ったので、リカレントに行こうと決めました。ただ、実際に通い始めるまでは1年かかりました。この深い領域に素人が踏み込んでもいいのか、教育とかコーチングとは違う、大丈夫だろうか?って悩んで。
 でも、知っているのと知らないのではやっぱり違うんじゃないか、と思って。社内でカウンセリングをするわけではないけど、メンタル不調者にかける言葉も違うかもしれないし。巡り合わせでこの業務に携わることになったからには、知識を得たいし、知りたいし、学びたかった。自分の時間を費やしているんだから一生懸命やりたい、と思って。それで、『やっぱり学びたい、行こう!』、って決心しました」。
 こうして清水さんのリカレントでの学びがスタートしました。


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リカレントで得たもの
活かしている学び

「リカレントでは、クラスに来ている人がなぜここに通おうとしたのか、という背景や、いろいろな話を聴くチャンスがたくさんありました。人間の複雑さとか、背負っているもの、悩んでいることとか。そういう深い話って、会社でも友達でも、そうそう聴くことがないですよね。専門的な勉強もできて、カウンセリングスキルも身につけることができて、いろいろな人たちの話を聴けて。とにかく学びが多かったですね。リカレントじゃなかったら、こんなに学べなかったと思います。一年かけて悩んで踏み込んで、本当によかったと思います」。
 学んだことは、仕事でどのように活かしているのでしょう?
「産業医や保健師さんと話をするときに、専門的な知識をもとにして、踏み込んだ質問や確認ができるようになったと思います。産業医に言われたことをそのまま本人や職場の上司に伝えるのではなく、踏み込んで確認したことや、自分が知っていることをプラスにしたり、例を添えて伝えるようにしています。そうすると、本人だけでなく職場の人の理解も進むし、周囲も注意ができるかな、と思っています。
 最近では、メンタル不調者の職場の上司から、直接相談を受けることも多くなりました。その時間も結構とられているので、『時々やりすぎだ』って周囲からは言われちゃうんですけど、上司も誰かに聴いてほしいんじゃないかな、それを受けとめるのも私の仕事かなって思っています」。
 休職者だけでなく、職場の上司の支援もしながら、産業医・保健師をつなぐコーディネーター。多くの方に頼りにされている清水さんの姿が浮かんできます。

自分で考えて行動する
そして責任を持つ

 両立支援コーディネーターの資格も取った清水さん。業務の幅はさらに広がっています。
「治療と仕事との両立の相談を受けたので、いろいろ調べていたらこの資格を見つけたんです。何が正解かわからないけど、とにかくやってみよう、と思って。やっぱり、何も考えないで動かないのは嫌なんです。やっぱり、動いちゃうんですよね」。
 言われなくてもやる、どんどん動く。その原動力とはどこにあるのでしょう?
「以前、新卒採用をやっていたときに、求める学生像の話しになって。『自分で考えて、行動をして、責任を持つ』、そういう学生がいいよね、って話をしていたんですけど、それって私自身が大切だと思っていた価値観なんだな、って思います。自分にも言い聞かせるし、息子も自分で決めて行動する子なので、そう育てたのかなって思います。
 その背景には生育歴があるように思います。普通の家庭だったけど、父は病気がちで、母も持病があり、弟も手がかかる子だったので、私は幼少期から自立心が強かったと思います。母親にも『手がかからなかった』と言われていたし。自分のことは自分で決定していこう、というのが昔から強かったんだと思います。進学や就職も親に相談したこともないし。『自分で考えて、行動して、責任を持つ』というものが常に自分の中にあるんですよね。だからこそ、逆に自由でありたい、束縛されたくない、というところもありますね」。


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勉強は最高の贅沢

「振り返ってみると、自分で考えて行動する、っていう価値観が確立できていることは幸せだと思います。もちろん、人生の中で諦めたこともあったけど、諦めたことによって今の自分がある。学生時代に興味があった心理を、ここにきて学んでいる。あのとき心理学に進んでいたら、もっと早い段階でその道に行ったかもしれないけど。
 採用活動をやったり、健康管理を担当したり、めぐりめぐって、カウンセラーの勉強をして、今、ここにいる。一つひとつの経験が繋がっていると思うし、運命みたいなものを感じます。あのときやりたかったことを、今、学ぶ機会が得られるって幸せだなって思います。
 これからについては、大きなビジョンはないです。ただただ、人ってどんなんだろう、心理学ってどんなんだろうって、深くて答えがないものをずっと学び続けたいですね。通信制大学で心理を学ぶことにも興味があります。
 息子にも言われるんですよ、『勉強は最高の娯楽だよ。時間と余裕がなければできないことだから、すごく贅沢なことなんだよね』って。その贅沢をずっと続けられれば幸せだなって思います」。