中今 慎一朗
Shinichiro NAKAIMA
セカンドキャリアとしてオンラインカウンセラーを始めた中今さん。資格取得なんて待ちきれないほどのあふれる思いでカウンセリングルームをオープン。その活動的な姿の裏には、たくさんの中高年男性をサポートしたいという強い気持ちがありました。
〈Profile〉eMC2022年取得、大阪府在住。オンラインで「こころの相談所 陽のあたる縁側」を開業。まだまだですが、好きな心理学を勉強して人様のお手伝いをできる幸せ。趣味は写真とドラム演奏。
中高年男性をサポートしたい
「オンラインにて、『こころの相談所 陽のあたる縁側』でカウンセラーをしています。カウンセリングルームは2022年1月に開業届を出しました。そのときはまだeMCの資格を取っていなかったのですが、もう待ちきれなくて、とりあえず先に届を出しました。
また、『ストアカ』という学びサイトでストレスマネジメントやポジティブ心理学の講座の講師を務めています。
カウンセリングルームを作るまでは、一般企業で30年ずっと同じ会社に勤めていました。早期退職という形で去ることになりましたが、実は辞めざるをえない雰囲気がありました。そこで、退職後はこれまでの社会人経験のなかでメンタル不調になったこともあったので、元々興味のあったカウンセラーを始めたんですよ」。
ルームの名前はにはどのような由来があるのでしょうか?
「自分自身が会社員のときに、結構苦労や失敗もあり、メンタル的に苦しかった時期がありました。自分と同じ思いで苦しんでいる中高年の男性の方をお手伝いしたいなっていう気持ちがあります。
名前を考えたときに、カウンセリングルームというのを全面に出すと抵抗感がすごいだろうと思い、こころの相談所っていう、陽があたってポカポカしている暖かいなかで相談者の人と話すイメージを作り出せたらなって思いました。
実際の利用者は女性が多いです。オンライン講座も8割方が女性で、なかなかおじさんは来てくれないです(笑)。女性が来てくださるのはありがたいのですが、同じくらい困っているおじさんもいるはずなのに、なぜか来てくれないことに苦労していますが、まずはこういう場所があるということを届けることに意味があると思っています」。
2つのカウンセラー資格を取得
そもそも心理学に興味を持ったきっかけは何があったのでしょうか?
「早期退職後のセカンドキャリアについて考えたときに、今までみたいにあまり前向きになれない仕事で会社員をするのはやりたくないと思い、カウンセラーに挑戦したいなっていうのがありました。
インターネットでいろんな団体を調べたときに、聞いたことがある産業カウンセラーか、その頃に知ったEAPを全面的に出しているリカレントの2つに興味を持ちました。それぞれの資格は対照的な印象でした。産業カウンセラーは歴史の長さを感じたことと、リカレントはWEB上の情報を見て魅力に感じました。最後まで悩み、結果的に両方とも学びました。並行して受講した感じですね。幸い、仕事を辞めた後だったので勉強に専念できる期間があり、ちょうどいいぐらいの大変さのボリュームでした。
実際学んでみても2つの資格には結構違いがありました。産業カウンセラーは実技がすごく充実していて、EAPは理論を丁寧に学べて、質問がしやすかったです。その違いもあって、2つとも学べて良かったなと思っています」。
これまでの人生経験を糧に
朗らかに話す中今さん、カウンセラーになるまではどのような生活だったのでしょうか?
「昭和真っ盛りの、日本中が今ほど豊かではない時代のなか、それを差し引いても貧乏な家でした。そのことが自分のなかに影を落とし、貧乏だから上手くいかないという考えがありました。
若いときはとにかくお金を儲けなきゃって意識があり、自分がまあまあ望んだ会社に入って、管理職になってからはすごく働かざるをえなくなって。その当時は本当に起きている間中はずっと仕事をしていて、寝ても夢のなかでも仕事をしているとか。ひたすら仕事をするっていうのが10年ぐらい続きました。それなりに面白かったんですけど、疲弊したところもあって。会社員としては昇進もして順調だったんですが、ある挫折をきっかけに出世コースからどんどん外れてしまい、こんなに頑張ってきたのに、悔しさや腹立ちもありました。そこでまたメンタル的にも揺れました。
でも、会社だけが人生じゃないし、まあ楽しく生きるのもいいよね、って思っていたんですが、忙しい部門に回されて責任とプレッシャーを強く感じました。本当にそのときは人生の波のなかで1番どん底にいたのかなって思います。メンタルクリニックにお世話になるという状態になりまして、それから回復した後に、結果的に会社のリストラみたいなことに遭いました。
じゃあこれからどうしようかって、いろいろ考えたときに[カウンセラー]がピンときました。人を少しでもお手伝いというか、サポートすることができれば、今までの自分の失敗や悩みや苦労した経験が逆に役に立つんじゃないかって。それで今に至る、って感じですね」。
苦労や失敗も全部経験にできた
いろいろな苦労を乗り越えてきた今、学びはどのように活かされているのでしょう。
「講座で学んだことがそのまま仕事に活かせています。カウンセリング・プラティカム(CP)を初めて受けましたが、SVの機会がとてもいいと思いました。ショックを受けるようなフィードバックを受けても反省をすることもできるし、独りだとこれで良かったかな? と思うこともあるので、いい機会だなって思います。初期研修で必須の講座はどれも知っておかないといけない知識なので、いろいろな大切な技法が学べるところがいいです。
心理学などを学び、残りの人生で自分が充実できて、多少なりとも世の中や人のためになれるカウンセラーの仕事は、やりがいがあります。生涯学ぶものがあったほうが人生が充実すると思います。その意味では心理学は本当に興味が尽きず、正解もないし、いろんな人がいろんな理論を展開しているのも面白さを感じます。
あとは、あらためて実感するのは、今まで自分の中で大変だったな、とかよくやってたな、苦労したな、ということが全部カウンセラーをやる上では意味があったというか。今までの苦労や失敗したことも全部経験になっているので、かっこよくいうと、過去を全部肯定できる。そういうことを全部含めて、カウンセラーとして経験してよかったなと。
自分の中身が整っていないといいサポートもできないので、そういう意味では自分も整えるための手法というか、心の持ち方がとても学べるので、それもすごくありがたいです」。
つい我慢しがちな男性たちを気軽にサポートできたらいいな
男性の気持ちにも寄り添って
「今後のビジョンとしては、オンラインのカウンセリングをメインにやっていきたいです。そこに私が助けたいなって思うおじさんが殺到して、『今予約がいっぱいなので』と断れるぐらい依頼が来るのが理想です(笑)。
そして、これは野望ですが、心理関係の本を出したいなと思っています。昔、小説家になりたかった気持ちを長いこと忘れていました。本は後世にも残るので、そういうのを残したいなと思います。
今は、自分を客観的に見て、会社員の頃ほどストレスもないですし、その時々の自分の気持ちをサンプルにして分析することもできるので、ライフスキルとして心理学を学ぶことも良いと思います。志高く、カウンセラーになりたいという方と一緒にやれたらいいと思いますし、何かあればぜひ相談しに来てください(笑)。
自分もそうでしたが、男性の方はプライドが邪魔してカウンセリングにアクセスしづらいイメージがあるのが課題だと思っています。ギリギリを超えても我慢してしまうのが特徴かもしれません。そんな男性たちを気軽にサポートできたらいいなとも思っています」。
中今さんはポカポカと暖かな陽のあたる場所で、今日も困っている働き盛りの男性を待っています。