常盤 季世子
Kiyoko TOKIWA

〈Profile〉eMC2020年取得、東京都在住。2022年行政書士事務所開業。夫と二人暮らし。趣味は週末の作り置きおかず作り、Netflixで法廷ドラマ一気見。

まだ駆け出しの行政書士ですが

「2022年5月に行政書士会に登録しまして、今は行政書士として個人事業主で働いています。行政書士の仕事は多岐にわたりますが、私は遺言書作成と相続手続きに関心があります。行政書士としてまだ半年ほどなので本当に駆け出しって感じで(笑)
 遺言書や相続に関心を持ったのは、小さい頃に『死んだ後に人はどこにいくのか?』と考えたことです。10歳の誕生日のときに、きっと100歳までは生きられないだろうと思って、年齢が2桁になって泣いてしまったんですよ。死ぬってことに対してすごい恐怖がありつつも、死んだ後はみんなどこに行くのだろう、自分もどこに行くのだろうと思って。

 その興味もあって、大学の卒業論文では、お墓の研究をしました。大学卒業後は民間企業に20年ほど勤めましたが、今は縁あって行政書士になりました。
 行政書士の仕事は16000種類あるといわれています。そのなかで、相続、死んだ後の手続きとか、死ぬときにみんなどういうことを考えるのだろうという面に関心を寄せています。ただ、人が亡くなった後の手続きは期限が決まったものもありますので、そこから忙しくなってしまうこともあります。  こちらとしては、その方が安心して死後の手続きができればと思いますが、亡くなる前後の家族の方の気持ちを思うと少し複雑な気持ちもあります。亡くなったことが自分の仕事に繋がることで、こう、お仕事ありがとうございます、とも言いづらいですから」。

主婦の楽しさの一方で

 常盤さんが元々心理学に興味を持ったきっかけはなんだったのでしょうか?
「行政書士の資格を取得をしてから開業するまで5年ありまして。結婚をしてしばらく体調が優れず、お医者さんから少し休んだほうがいいと言われて退職をしました。それまでずっと働いてきたので、最初は大丈夫かな? と思ったんですが、主婦がものすごく楽しくなって(笑)。今日は何をしようかな、何を作ろうかなとか、そういうのが楽しくて。ただ、周りからは『今何しているの?暇じゃない?』と聞かれることも多くありました。
 その頃、夫の実家の整理をして大変だったことがありました。人生の後半にこそ、こういうことが大事かもしれないと思い、1年で行政書士の資格を取得しました。ただ、どうしても働く気になれなくて……。  あるとき、学び直しの一つとしてリカレントの無料セミナーに参加しました。そのとき先生に、すごい主婦が楽しいんですけど、働かないことに違和感、罪悪感もあるが、どうしても働く気が起きないことを相談しました。そしたら、先生が『私も主婦になりたい!主婦っていいよね!』と。初めてそう言われて、自分の気持ちがわかってもらえたと心に残りました。
 主婦になるまではずっと働いてきて、親から教育にすごいお金をかけてもらってきて。そんなにいろんなことを経験してなぜ活かさないのか、と言われたこともありました。ただ、私は主婦が楽しくって仕方なくなってしまって。  ここ(リカレント)に来たらすごい楽しいし、私が知りたいと思ったことがここにあると思いました。元々人の話を聴くことも好きだったので、ちょっと勉強してみたい気持ちもあったのが、きっかけですね」。

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困っている人のサポートをしたい

 主婦になる前はどのように過ごしていたのでしょうか?
「自分の思考が一番磨かれ、刺激を受けたのは大学生のときです。文学部社会学科にいたんですけど、社会学も差別や家族、日本文化とかテーマが多岐に渡っていて。優秀な人たちと真夜中まで議論をして学び合えたっていう楽しさを感じた、ものすごく充実した4年間でした。
 親友の女の子と仕事について話したときに、その子が『日本人はものづくりだ!』と言ったのをきっかけに、メーカーに入りました。メーカーで5年半、次に金融で3年ちょっと、その後、通信会社で仕事をしました。勤め先は変わりましたが、顧客対応やカスタマーサービスに関わることが半分ほどでした。あとは、企画や営業推進に携わることもありました。
 自分のポテンシャルがどのように引き出されるかを考えると、人が困っているときに火事場の馬鹿力が出るというか。  これまで、阪神大震災のときに困っていた友達を助けたり、東日本大震災のときに東日本エリアでのインフラをサポートしたりすることがありました。壊滅的なダメージを受けたところに、本当に寝食を忘れて何とかしたいという気持ちが生まれました。ちょっとお節介な感じかもしれませんが、そういうときに困った人がいたら何かをしたいと思いますね」。

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合意のプロとしての関わり方

 さまざまな企業での勤めや災害へのサポートの経験が、常盤さんを「誰かのためになりたい」人にしたのでしょうか。今の仕事や私生活では、リカレントでの学びはどのように活かされているのでしょう?
「技法に関するところが仕事に役立っています。実際に相続、遺言に関する仕事は、身近な方を最近亡くされた方とやり取りをしますので、悲しみが癒やされるように、傾聴やワンダウンの姿勢、チューニングなどを意識しています。  人が話しているときにどこがポイントなのかを探るようにしています。この間も、ご主人が亡くなられたばかりの方が、『することがたくさんあって本当にどうしたらいいかわからなくて困っていたけど、あなたと話をしていろんなことを教えてもらえたから、大丈夫なんだ、そうわかって安心した』と。大変さをすごくわかってもらえたという安心感を得て、気持ちが安定したのでしょう。よかったなって。
 行政書士は『合意のプロ』といわれていて、みんなで合意したものを文章にしていきます。私自身、合意っていいな、話し合いでなんとかなるというところがいいというか。いきなり専門家が入ってピシってするよりも、お互いが納得をして合意をすることで、人が亡くなったときに関係性を繋ぎ直す良い機会になることもあります。リカレントでの学びは、お客様同士の関係性を見る上で役立っていると感じます。
 意識の面では、『私もOK、あなたもOK』と考えるようになって、生きるのが楽になりました。私が他と違ってもいいと思えるので、甥や姪にも『今のあなたでいい』と伝えるようにしています。
 あと、まだ使ったことはないんですけど、何か行き詰まったらオンラインカウンセリングですね。視野が狭くなりがちななかで、こういったネットワークや定期的に講座を受講することで、まったく違う視点が入ると新鮮です。自分の中にいろんな拠点があるのが大事だなって思います」。

また新たな拠点作りへ

「行政書士とは別ですけど、ひきこもり問題やこども食堂に興味があります。誰かの何かに役立ちたいという気持ちはありますので、何かしらの形でサポートできればいいなって思います。
 ひきこもり問題は、自分が就職氷河期を経験して、人生が変わった人も見てきたので、人ごとではないと感じます。世の中の不条理さが半端ないと、世代として感じているので、何かできたらなって思います」。
 社会問題へも関心を寄せる常盤さん。困っている人に手を差し伸べながら、一つまた一つと、これからも新たな拠点が増えていくのでしょう。