菊池 新
Arata KIKUCHI
メンタルクリニックで看護師兼カウンセラーとして復職支援を担当されている菊池さん。「なんとしてもカウンセラーになりたい」と、リカレントの扉を叩いてから人生が大きく変わりました。勇気を持って一歩を踏み出し、学び続けた先にあったものとは……。
〈Profile〉eMC2018年取得、東京都在住。メンタルクリニック併設リワーク看護師。趣味は旅行と友人との会食。マインドフルネスとセルフコンパッションを実践しているので、日々の瞑想は欠かせません。
「なんとしても
カウンセラーになりたい」
現在、メンタルクリニックで看護師兼カウンセラーとして休職者の方の復職支援を担当されている菊池 新さん。「もっと人の心にふれる専門的な仕事がしたい」と、6年前に一念発起。看護師を続けながら、リカレントでの学びを経て、2018年にeMCの資格を取得しました。
看護師兼カウンセラーということもあり、菊池さんが担当している業務は幅広く、SST(ソーシャルスキルトレーニング)などのグループワークの実施、個別カウンセリング、メンバーさんの健康状態の把握、生活習慣から鬱を改善するプログラム、リラクゼーション法、マインドフルネスなどなど。日々とても忙しい状況ながらも生き生きと活動しています。昔から好奇心旺盛でチャレンジ精神も強かったという菊池さん。
「何としてもカウンセラーになりたい、という気持ちが圧倒的に強かったんです。正直、それだけだったな」と振り返ります。
「以前、看護師をしていたときには、なかなか自信が持てないところがあって。ずっと自信を持ちたいと思っていたときにリカレントに出会ったんです。リカレントの個別説明会のときには、稲妻が落ちたぐらいの衝撃がありました。『え、何これ??』って。いわゆる直感なんでしょうけど、『これだ!やってみたい!』ってなったんです」。
自身の直感を信じ、EAPという新しい世界に飛び込んだものの、最初はかなり苦労したそうです。
「今はこんなふうに笑っていますが、最初の3年くらいは、言葉に出せないくらい本当に大変でした。看護師として対人の仕事はしていましたが、全然違うんです。リカレントで基礎的なことは学んだものの、実践的な経験はほぼない状態でいきなり現場に出ているような状態だったので。現場に出てみて、あらためて、『カウンセラーの仕事って、こんなにも難しいんだ。これは大変な世界に足を踏み入れちゃったな』って思いました。上司や周囲の方々の支えがなかったら、とても乗り越えられなかったと思います」。
特にどのあたりが大変だったのでしょう?
「はっきり言って全部です!!」
間髪入れずの回答。
「例えば、ソーシャルスキルトレーニング。いきなり難しい本を上司から渡されても、悲しいかな読解できない……。ファシリテーションを任されても、最初はやっぱりできない。できないのにメンバーさんの前に立たないといけない。とにかく、初めてのことだらけで。知らないことを手探りでやっていくという状態で、本当に大変でした。カウンセリングもリカレントで学んだものの、ゼロ……とは言わないですけど、イチくらいからの出発で。あらゆる意味において、体当たり的でしたね」。
「人間は学習し続けることで
変容する」
菊池さんは、どのようにしてカウンセラーとしての力をつけていったのでしょうか?
「SSTに関しては専門のところで勉強しました。カウンセリングに関しては、EMCAのカウンセリングプラクティカムで実践したり、さまざまな講座も受講しました。もちろん上司からも指導を受けました。実践をしながら、かなり積み重ねてきたな、と思います。感覚的なプログラムが得意で、リラクゼーション、呼吸法、マインドフルネス、フォーカシングなども学びに行きました」。
カウンセラーとしてスタート地点に立ってから、並々ならぬ努力を積み重ねてきた過去を、菊池さんは次のように振り返ります。
「今の自分の心境は、クランボルツの『人間は学習し続けることで変容する存在だ』という一説ですね。リカレントの扉を叩いてからのこの5年間を振り返ると、本当に自分自身が変化したなあ、って感じるんです。学習もですけど、体験や、上司やリカレントの先生、周囲の人たちの姿を通して、学び、体験したことで、私自身が変化したなって思います」。
専門書籍での学びは欠かせません
あの頃の自分に
「おめでとう」と言いたい
「実は、昔は自己肯定感が低かったんです。リワークの集団療法の講義の中で、『自己開示の根底には自己肯定感がある』ということを学んだんです。
スタッフである私もグループダイナミクスの場に身を置くんですけど、初めはなかなか自己開示ができない自分がいました。でも、メンバーさんが復職に向けて、だんだんと自己開示をされていくんですね。グループワークを通して、皆さんが変わろうとしていく、その姿を見て、私自身も過去のダメな自分も含めて自分を認めていこう、開示していこう、と、だんだん気持ちが変化していきました。あるがままの自分でいいんだ、他者と比べずに自分を認めていこう、って、自分の内面が変化していったことを感じました。
お互いが影響し合うグループダイナミクスの力ってすごいな、って感じるし、この世界に入って本当によかったなあって思います。当時の自分は生きることにも自信がなかった。あの頃の自分が今の自分を見たら、ビックリするんじゃないかな。リカレントは私の人生を変えたくらい大きな存在です。本当に出会えてよかった。感謝しかないです」。
リカレントを見つけて、稲妻が落ちて、いろいろな出会いがあって。そこからの5年間で大きな変化をしてきた菊池さん。当時の菊池さんに声をかけるとしたら?
「『Congratulation!! おめでとう、よかったね』ですね。自己実現とか、自分の人生を創造するとかって本で読んだけど、今の私はまさしく人生を創造してきたんだなって。あのとき勇気を持って一歩を進んだことで、自分の人生を変えられた。クランボルツの『偶発的なもののすべてが重なり合って』という一説を、今、まさに実感しています。
自信がない状態だったのに、一歩を踏み出す勇気がよくぞあったなあ、って思います。人生が上手くいかない状態の私を、クリニックの上司や院長が何も言わずに迎えてくれて、今も働かせてもらっている。懐の大きい方々に出会えて感謝しかないです。でも、それは、人生を変えたいっていう勇気と繋がっていたんだなって、心から思います」。
肩の力が抜けてきた
これから
「5年経ってようやく肩の力が抜けてきました。今までは体当たり的な感じだったんですけど、これからは身につけてきたことをもっと洗練させていければと思っています。カウンセリングの部分ではもっと自立して自分で進めていきたいですね。
ストレスチェックの実施者研修も受けて、アドバイザーの勉強もして、休職者の方の支援をさらに強化していきたいですね。それと、来月からは『セルフコンパッション』という、マインドフルネスと表裏一体といわれているものも学び、リワークプログラムをさらに強化していきたいんです。『生活習慣と鬱』というプログラムも内容を充実して……。
とにかく、まだまだやりたいことがたくさんありますが、自分の人生を創っていくという姿勢でやっていきたいですね。もちろん、リカレントのTAや、EMCAの講座でも引き続き学んでいきたいです」。
学ぶことを楽しみ、学び続けることで劇的に変化・進化してきた菊池さん。出会いと縁を大切に、これからも学び、チャレンジを続けていきます。澄んだ瞳がその先に見ているのは、どんなデザインの人生でしょうか。