藤田 大樹
Daiju FUJITA

相手を信じる、信じ切る。そして自分の成長も信じる。藤田さんは大きな夢に向けて、今も前進しています。

〈Profile〉eMC2018年取得、愛知県在住。Brain-Plus代表。仕事:コーチ、カウンセラー、研修講師。趣味:スキー、キャンプ、子どもの部活の応援。興味:テクノロジー。

カウンセラーが導いた
コーチへの道

 日々中小企業の経営者と向き合う藤田さん。コーチングとカウンセリングそれぞれのスキルを高めてきたことで、クライエントの状態に合わせて視野を拡げられるようなサポートをしています。そんな藤田さんが、人の心に目を向けることになったきっかけは、2度のうつ病経験にありました
「2度目にうつ病になったとき、カウンセリングを勧められて受けたんです。そのときカウンセラーさんが、まさに[無条件の肯定的関心]を向けてくれました。本当に救われた感じがして。カウンセラーさんってすごいなと思ったんです。
 お医者さんも僕を助けてくれましたけれど、僕にとってはカウンセラーのほうがポジティブな影響は大きかった。こんなものがあるんだと驚きでした。人に相談すればいいんだと。学校で教わることもなく知らずに生きてきて、自分もできるようになったらいいなと思ったことがきっかけですね。周りでメンタル不調になっている人も多かったので、いいものがあるなら広めていこうと思いました。
 先にコーチングを学んだんですが、コーチングもカウンセリングと同じような良さがあるし、コーチングってポジティブで場の空気感が明るいんですよね。同じ時期に3人くらいから『藤田さんコーチングが向いてるんじゃない』というようなことを言われたのもあって、コーチングをビジネスにしてみるとうまくいって、人前で話をするようにもなりました。
 そんななか、仲間と一緒に経営者さん向けのサービスを企画していたときに、社員のメンタル不調で悩んでいると聴いて、自分がうつ病のときのことをお伝えしたら、すごくウケがいいんですよね。喜んでいただけるなら、専門的な知識も併せてお伝えできたらいいんじゃないかと考えるようになって、それでEAPも学び始めました」。

相手の可能性を
相手以上に信じ切る

「僕のクライエントは、『お金を稼げればいい』という人ではなく、社会にいいインパクトを与えたいという方や、従業員たちに良い暮らしをさせたいといったことを思っていらっしゃる社長さんばかりです。そういう経営者の方たちが一歩一歩進んでいくのを応援していくことで、僕も社会にいいインパクトを与えられていると感じられることが、やりがいの一つです」。
 そんな藤田さんが大事にしていることはどんなことでしょう?
「その人にはその現状と向き合う力があると信じることですかね。相手の可能性を、もしかしたら相手以上に信じ切るということを大事にしています。そう考えるようになったきっかけとして、2つの出来事がありました。
 あるクライエントがすごく忙しいのに『こんなことやりたい』と言ってらしたことがあって。それ、今の状況では無理でしょう……と思うようなことだったんですけど、クライエントが本当にやり遂げちゃったということがありました。僕が勝手にできないなんて決めつけちゃいけないと思いましたね。
 別のクライエントとのセッションでは、状況としては上手く進んでいないときだったんで、セッションをやるのが気が重かったんです。どうせこの人にいろいろ質問してもいい答えが返ってこないだろう、という状態でクライエントに接してしまっていたんですね。全然うまくいかないわけです。せっかくセッションを受けてくれているこの方に、なんとかして何かプラスのものを持って帰ってもらいたいと考えてセッションを振り返ってみて、これじゃいけないと思いました。教わったことに忠実にやっていこうと。それで、『本当は本人にはできる力が眠っているはず』と思い直して次のセッションに臨んだら、話がいい方向に変わっていったんですよね。
 やっぱり自分自身が本当に相手を信じること。それが何より大事だと思っています」。

人は前を向く力を持っている

人と向き合うことを続けるなかで、藤田さん自身はどう変化してきたのでしょう?
「カウンセリングを受ける前は自分の弱い部分って人に出せなかったし、出してはだめだと思っていたけれど、弱い部分やできなかったことも出していいんだと思えるようになりました。
 例えば、カウンセラーさんと約束していたことができなかったときに「できませんでした」と言いたくないがために体壊してでもやるみたいなところがあったんですが、カウンセラーさんが受けめてくれたことで、そこまでしなくてもいいとわかるようになってきましたね。
 コーチングを勉強するなかでは、誰もが話を聴いてもらえると嬉しいし、質問の仕方ひとつで空気が明るくも暗くもなるので、話し方ってとても大事なんだと気づきましたね。また、いろんな人の話を聴いたことによって「みんな苦労している」とわかりましたし、「人って苦労しても前を向く力を持ってるものなのだな」と感じました。
 そうですね、人と関わることが楽しくなった感じがしますね。以前は人と関わるのが好きではありませんでした。それまで、たいして人の話を聴いてこなかったし、例えば、愚痴を聴いたら「そんなこと言ってないで建設的に考えればいいのに」と思うほうでした。冷たい人間だったと思います(笑)。
 でも、いろんな人の話を聴いて、それぞれに苦労しながら前を向こうとしていることを知って……。そういう人の気持ちに触れていくことで、親近感が湧いたんですよね。
 自分の感情についてもそうです。話すことも耳を傾けることもあまりなかった。人間って感情豊かな生き物だということ、自分自身にも他の人にも豊かな感情があるということに、頭では理解していたんですが、もう一段深いレベルで理解した気がしましたね」。

セミナーでのプレゼンテーション

普通ではなかなかたどり着けない
くらいまで成長したい

それでは、ずっと変わらない自分自身というと?
「目標を持って何かを頑張りたいという気持ちは昔から変わっていません。高い目標を持っていたいという気持ち。成長していたい……。負けず嫌いなのかな。人と比べちゃうところはあって、普通の人ではたどり着けないくらいまで成長したいと思っちゃうところがあります。
 普通では行けないところまで行きたいと思う原動力になっているのは、単純に『他の人よりすごい』と言われたい。みたいなところもありますし、あと、親からの教育の影響もあると思う。小さい頃、いつも『一番をとれ』と言われていて、例えば、定期テストで2番だったら、結果を言うのが怖かったんですよ。一番にならないと怒られると思っていて、体に染みついちゃったというのもあるかもしれないですね。
 あとは、商売上手じゃないんですよね、僕。商売上手じゃなくても、他の人がなかなか到達できないレベルで何かやっていれば、人は放っておかないだろうと思っているところも、原動力の一つになっていると思います」。

誰もが
コーチングを受けられる社会へ

「コーチングをもっと日本に広めていきたいなと思っています。でっかい夢は、誰もがコーチングを受けられる・身近にある状態をイメージしていて。例えば、学校の先生になる人は教職免許の必要要件にコーチングが入る、みたいなことでしょうか。志ある人たちと一緒になってやっていければ不可能ではないと思うし、目指す未来に近づくように活動していきたいと思っています」。
 夢に向かって、現在コーチングの科学的研究が学問分野として確立されているイギリスの大学院に在籍し、心理学を深く学んでいる藤田さん。到達できないところまで行きたい、という成長への情熱と努力はとどまるところを知りません。