高橋 和裕
Kazuhiro TAKAHASHI
法政大学大学院の現役法学生、2つのお仕事の他にボランティアや関東ブロック支部長としても多忙な高橋さん。今年からはWeb漫画での発信も始め、「ダイスを転がそう!」を出会う人達に伝えています。
〈Profile〉eMC2020年取得、東京都と千葉県在住。中小企業経営者。妻と娘の3人家族。座右の銘:面白きこともなき世を(に)おもしろく。
心のアンテナを高められたら
遊技店の工事業やお掃除本舗全国チェーンのフランチャイズ店など、いくつかの会社を経営している高橋さん。持前の行動力と度胸で、起業は早く30歳前後からでした。
「20年ぐらい経ったときに、会社や人生で、不況やさまざまなことがありまして、50歳手前で、ちょっと自分を振り返ったんですよね。そのときにいろいろ学び直しをしてみようと決めました。リカレントを選んだのは、会社が高田馬場で近くなのと、[リカレント]という言葉に学び直しという意味があったからです。
名前と近さで、ご縁ですよね。リカレントで学んで最初にキャリアコンサルタントの資格を取得しました。
僕、[ニート革命]っていうのを主催しているんです。若者の就労支援なんですけど、ボランティアでちょこちょこやってます。
その後、先生たちも良い先生が多かったのと、勧められたのもありまして、メンタル系について一度学んでみようと、EAPメンタルヘルスカウンセラーの資格を取得しました。
近い人に発達障害の人がいまして、私自身もパニック症候群の予期不安というジャンルを抱えていますので。それと、経営をやっているなかでお会いする社長さん達には、病を抱えている人がたくさんいて、自死を選ぶ方が数人いました。 やっぱり今、多いですよね。後から考えてみると、もう少し話しを聴けなかったかな……と思うんです。そういうものと自分のこと、周りのこと。サポートというか、耳を立てられたら良いな、心のアンテナを高められたら、と思いました」。
キャリアとお掃除の支援で
eMC資格取得後は、お客様や友人や身の周りの人たちと話していても、前はわからなかった精神疾患の区別がつくようになってきたという高橋さん。それでも支援業や、キャリコン+EAPを本業にするのは、まだ今の段階ではないと感じていて、今はパラレルキャリアとして役立てています。
「ニートさんというのは、精神疾患を持っている方が多いですので、アセスメントやサポートの部分で役立っています。行政や地域の仕事の繋がりから、そちらのボランティアもするようになりました。
本業と資格が相まって、ひとつの支援になっている感じでしょうか。他のボランティアの人たちは、もうちょっと僕より年齢的に上が多かったりします。なので、『就職支援・メンタルケア・片付け』というのが同時にできる人が、なかなかいないんです。
具体例ですと、40代中盤の方から『片付けられない、就職をしたい』というご相談がありました。キャリアとお掃除の支援で、僕にぴったりでした。まる2年かかって、まだ片付ききっていないんですけど、そのなかで片付けられない理由っていうのがいろいろあるのだ、とわかりました。
モノへの執着がとても強い。だから求職支援よりも先に、まず自分なりのアセスメントを伝えました。一定期間の支援が続くなかで願いが叶って、就職まで行き着いたというエピソードがあります。
ニートさんや片付けで困っている人たちと同じ空間で、一緒に片付けをしながら話を聴いたりしています。
『死にたいって考えています』だったり、愚痴を聴いたりとか、『元々は〇〇を目指していて……』という当時の映像を見せてくれたりとか。なぜものが捨てられないか話したり、『障害者手帳をもらえて、前よりも自覚ができるようにもなった』とか……。
これもひとつのカウンセリングになっていて、独自のやり方の一つになっているのかもしれないですね」。
気軽に相談できる社会を
高橋さんは、資格取得後も仕事やボランティアに加え、講座の受講、リカレントの勉強会やEMCA支部会への参加と、多忙な日々を過ごしています。
「自死を選んだ経営者仲間を忘れることができません。日本で、特に社長・男性はなかなか本音を話せない。落ち込みの理由が病理、病気として認められちゃったら、やっぱり冷たい目で見られる、と考える方、まだ多いという感じがします。
最近では、元少年犯罪者たちのメンタルの講座を引き受けました。すごく興味深かったですね。自分はボランティアという立ち位置で、そんな重たい領域まで手を出すべきなのか……。違った世界を知ってみると、そういう気づきもありますよね。いろんな経験を積みながら、アウトプットもしていかないと!と思っています。
もう少しEAPの認知度を高めたいというのもあります。もっと気軽に相談できる社会になるといいなぁと思います。気軽に相談できる、弱音が吐ける場所は必要だから、広がっていければいいなと思います。
そう、そんな思いから、僕ね、今年になってウェブ漫画を始めたんです! この世に未練がある成仏できない霊が、希死念慮のある人の自死を、下心から止める物語なんですけど、パパゲーノ効果を企図しています。
パパゲーノ効果とは、自殺を踏みとどまった人の物語や自殺未遂者の体験談を伝えることが、自殺の予防に効果があるかもしれないとする説のことです。 楽しみながらコツコツ描いていこうかなと。デジタルイラストで描いているので、覚えるのが大変なんですけれどネ(笑)」。
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ダイスを転がそう!
高橋さんは現在、EMCA関東ブロックの支部長さんを務めています。全国支部制度が立ち上がった初年度は副支部長に手を挙げ、翌年は支部長のバトンを引き継ぎました。
「支部会の活動はまだ参加して3年ですけど、こういうものも、ボランティア活動として、またソーシャルキャピタルという感じで、良いと思います。ソーシャルキャピタルとは、人と人との関係性や繋がりを、資源としてとらえて評価する考え方ですね。
忙しいときのほうがボランティアも今を伝えられる。相互補完になれるかな。実際やると大変ですけれど(笑)。皆さんに伝えたいメッセージは、EMCAの支部長というオフィシャルな立場で言えば、皆さんの何か新しい発見、気づきに寄与できたらいいなと願っていることです。
個人的には、[ダイスを転がそう!]ということですかね。そうすると何か起きるじゃないですか。
僕、どっちかっていえば、割と行動的なほうだと思うんですよね。あれやったりこれやったりとか、いつもしてる。まぁ、失敗もありますけどね。新しいことって怖いと思う人もいるのかなと思いますけど、失敗しないと転び方がわかんないです。だから、何やっても、だいたい失敗したりとか、悪口言われるんだろうなぁと思ってても、やっぱり新しいことをしますので、僕。
リスクヘッジは完璧にはとれないですよね。だけど、やってみたら気づきやら出会いやらっていう面白いこともいっぱいある。そのためには、ダイスを転がし、あとは、ケセラセラということで(笑)」。
ダイスを転がす仕草をしながら微笑んでいた姿が印象的です。一人でも救われる人が多くなるよう、ボランティアで、漫画で、支部会で、お仕事で、高橋さんはこれからも発信をし続けていきます。