金井 建斗
Kento KANAI

フィットネス業界から未経験の福祉分野へ飛び込んだ金井さん。自身のメンタル不調の経験からキャリアとEAPを学んだことで、これからの福祉の可能性についていろいろなアイデアが湧いています!

〈Profile〉eMC2022年取得、神奈川県在住、就労移行支援事業所の本部マネージャー兼センター長、趣味は筋トレと読書。「キャリコンの資格を活かして副業でキャリアコーチングやっています」。

未経験の福祉分野での仕事

「現在は就労支援移行事業所でセンター長として、センターのマネジメントと施設を利用する方の対応をしています。マネジメントは、いわゆるヒト・モノ・カネの管理と運営を行なっています。利用者支援として、インテーク面談や週ごとの面談・アセスメント、講座やイベントのファシリテーター、模擬面接の担当をしています」。
 今の仕事に就いてから8ヵ月ほど。金井さんが福祉分野に関わるのは初めて。
「職員は私を含めて6人いるんですけど、未経験なのが私と新入社員だけなんですよ」。と少し笑いながら話す金井さん。
「大学卒業後はフィットネスクラブに入社をしました。そこでは、それなりに出世をして順風満帆に送っていたんですけど、29歳のときに職場の人間関係で鬱になってしまって。1回休職をして、ちょっと良くなったんですけど、また休職をして。結構30代は落ち込んだんですが、そこからはグーっと人生も上がってきて、昇進や結婚などの転機もありました。
 コロナ禍があったのをきっかけに自分の人生について考え始め、思い切って会社を退職しました。そして、EAPとキャリアコンサルタントの資格を取りました。自分自身のメンタル不調の経験やキャリア支援をしたいという思いから、今の仕事の合致率が高かったですね」。

学びの始まり

 フィットネスジムでの仕事から、どのようにEAPを知るきっかけになったのでしょうか?
「自身のメンタル不調の経験と、『いやな気分よ、さようなら』を読んで面白かったことをきっかけに、認知行動療法などを勉強したいと思いました。EAPとキャリコンの学習を始める前に、独学でメンタルヘルス・マネジメント検定の資格も取得しました。やるんだったらとことんやろう!と思い、平日は仕事、土曜日はキャリコン、日曜日はEAPを学ぶ生活でした。
 今の仕事に就く前、思い切って脱サラをしたときは、1年間、業務委託みたいな感じで、家電を運ぶ仕事をしました。トラックに乗って、100キロの冷蔵庫を運んだりとか(笑)、知り合いが家電配送の会社をしていたので、そこで1年間お世話になりました。それで平日は家電を運んで、土日はキャリコンとEAPを学ぶという生活をしていました」。

日々の生活に生かされる学び

 福祉分野で働く今、学びはどのように活かされているのでしょうか?
「リカレントの学びが活かされていることが2つあります。一つは、自分自身の心理状態を客観的に捉えることができたことです。自分のイライラやマイナスの感情が起きたときに、理論的に自分で処理できるようになりました。自分の精神衛生にすごく寄与できています。
 認知の歪みとして、すべき思考や0か1かの考え方の傾向が強く、すべてを完璧にしようと思っていました。今は自分で自分を楽にすることができていると感じます。今までは人の目を気にしていましたが、自分の中で心の振り幅、余白が増えたなと感じます。
 ある意味、自分本位で考えられる、いい意味でわがままになったな、と思います。人は人って感じですね。
 もう一つは、他者との関わり方です。相手の言動に対する感情の受け止め方が結構変わってきました。仕事上、精神や発達面で疾患をお持ちの方を相手にしますが、その人自身に悪気はないということがわかりました。何がその人をそのようにさせるのだろうと思うようになりました。
 あとは、家族に対してですね。いい意味で諦めるようになりました。『なんでうちの妻はこうしてくれないんだろう?』とあまり思わなくなりました。リフレーミングで考え方を変えるのが得意になったこと、自分の感情コントロールが上手になったなと感じます」。
 そんなふうに朗らかに話す金井さん、人生の転機とは何だったのでしょうか?
「転職ができたのが1番大きいですね。学びを通して人生が変わった、他人を許せるようになったことも大きいですね。仕事もそうですが、生活面や他の人との関わりでの大きな変化がありましたね」。


利用者さんを親身にサポート

未経験だからこそできること

 パワフルな生活を送る日々、これからのビジョンはどのようなものでしょう。
「障がい福祉サービスという分野でこのまま頑張っていきたいです。今、この福祉の業界で働いて思うのは、福祉はあったかい、優しい感じがある反面、ちょっと閉鎖的だと感じます。自分自身、全然違う畑から福祉分野に入ってきたので、そういうところで風穴を開けて、新しい風を入れられないかなって思っています。
 短期的なビジョンとしては、社会福祉士の資格を取るために2年間通信の学校に通います。福祉に関わる人はそれ以外の世界を知っている人があまりいない、福祉に対する固定概念にとらわれている感じがあります。最近、幼稚園で虐待をする先生のニュースもあったので、働く人の精神衛生の問題や労働環境も含めて、もうちょっとオープンで、いろんな人が関われるようなところを考えていきたいなと思っています。
 中・長期的なビジョンは今の時点では特に固めていません。キャリコンとメンタルヘルス、運動指導の掛け算で何かできないかと考えているところです。将来的に、メンタルヘルス不調を抱えている人用のジムとか、運動カウンセリングとか、そういったこともやりたいなと思います。
 あとは、障がいがある方の恋愛の問題についても考えたいです。恋愛の問題は、閉じられた部分、触れたらいけない部分がどうしてもあると思います。恋愛について考えることは別に悪いことではないですし、人生を豊かにするという意味では、障がいがある=恋愛ができない、っていう図式を変えたいと思っています。
 恋愛以外にも、純粋に楽しく生きるために、例えばメタバースのような仮想空間で、現実の自分と切り離して他の人との交流を通して精神的な繋がりを持つことはありだと思います。心理的安全性が確保されたところで、自分らしく生きられる手段はあるなと思います」。


フィットネスジムでのトレーニングは目指せ週5で!

充実した日々

 センター勤務以外にも副業も行っている金井さんは、多いときでは週5でジムにも通っています。運動が自分を支えている、といいます。
「利用者さんとの面談は重い話も多く、2時間ぐらいずっと職場でのパワハラや虐待の経験について話される方もいます。ジムに行くと、重いものを持ったり、泳いだり、ジムの友達と雑談をしたり、そういうことが自分の空気の入れ替えに繋がります。
 福祉分野は離職率が高く、自分のメンタル状況が良くないと続かないです。自分自身のストレス発散方法を知ること、[自分の取説]をいかに作るかは、どの会社で勤めていても、生きていく上で大事なように思います」。
 金井さんは自身を理解し、自分の取り扱いを熟知しているのでしょう。その経験や学びをもとに、福祉分野でさらに活躍していくに違いありません。