高橋 弘明
Hiroaki TAKAHASHI

日中は六本木ヒルズの一流企業のビジネスマン、夜はショットバーのマスター。パラレルキャリアの先駆けである高橋さんは、20年以上2足のわらじで人生ロードを走り続けています。

〈Profile〉eMC2021年取得、東京都在住。ノキアソリューションズ&ネットワークス合同会社ラインマネージャとして勤務。副業として品川区大井町でBAR『Neon Fish』を営む。最近はマラソンやゴルフを楽しむ。

隠れ家のような扉の向こうに

 東京・大井町駅の商店街の一角にあるBAR『Neon Fish』、隠れ家のようなその扉を開けてみましょう。いました! 高橋さんです。どうやら今日は定時にあがれたようです。
「そう、ウチは残業があるとオーナーの登場が遅れるバーなんです(笑)。毎晩、カウンターには必ず立ちますね」。
 このあったかい笑顔と『なんでも聴いてもらえる』をお目当てに、地元のお客様が切れ目なくなくやって来ます。カウンターとテーブル2席というコンパクトな空間で、そのサイズ感がまるでとっておきの隠れ家のようで、とにかく居心地が良い。
 高橋さんがショットバーを経営してきて、今年で26年になります。日中は六本木ヒルズの一流企業のビジネスマン、夜はショットバーのマスター、高橋さんはパラレルキャリアの先駆け実践者なのです。
「20代後半、仕事が多忙を極めていて月の残業が200時間を超えていたんです。激務でしたがシステムを作っているんだという自負とモチベーションがありました。でも一方で『本当にずっとこのままでいいのか?』って疑問に思ったんです。
 もっと別のこともしたいなって。学生時代ずっとバーでアルバイトをしていて、お客さんと話すのがとても楽しかったから、よしバーだ!という感じで、当時の職場の近くで1997年にショットバーを開業しました。以来ずっと2足のわらじ生活です」。


夜はこんな姿でBAR『Neon Fish』のマスター!

話を聴く・
心に寄り添うスキルが活きる

 呑みに来るお客さんの95%はとにかく自分の話をしたい人。カウンセリングと同じです。カウンターでお客さんの話を聴くことは長年やってきていたので、自分は傾聴や共感のスキルはけっこう高いと思っていたんです。
 でも、リカレントで学ぶと、『あ~プロの共感となんちゃっては違うんだ、奥が深いなぁ』と思い知らされました。この勉強をして本当に良かったです。相手の心に寄り添うというスキルは、今の会社の仕事にも、バーでのお客さんとの対話でも、とても活かせています」。

さまざまな悩みに「これだ!」

 もうずっと外資の通信機器メーカー『NOKIA』というフィンランドが本社のグローバル企業にお勤めの高橋さん。5年前、プロダクトマネージャーエンジニアをプロジェクトにマッチングさせるような職務に就き、エンジニアの悩みやキャリアの相談に乗るようになりました。
「それまでエンジニアリーダーやプロジェクトマネージャーという立場で、メンバーの話を聴くことはあったのですが、実際1on1面談をやってみると、実にさまざまな悩みを持っていることがわかった。もっと個々に寄り添って真剣に話を聴き、丁寧に対応していく必要性を実感したんです。
 また、メンタル不調で休職する人もいたので、より適切に対応できるようになりたい、専門技術を学びたいと感じていました。そこで、心理カウンセリングとコンサルティングの両方を学べるリカレントがあることを知り、これだ! と思いました。会社に主旨や狙いを理解してもらい、EAP講座を会社負担で受講することができました」。


NOKIAのオフィスで

難しい・でも面白い!

 EAPコンサルティングコースも修了し、順調にeMC資格取得後は、その勢いでEAP国際コンサルタント(CEAP)資格までアッという間に取ってしまった高橋さん。その熱心で効率の良い勉強ぶりは驚くばかりです。
「eMC研修生の『研修生』を早くとりたいので、この春まではけっこうアカデミーやら講座を受けていたんですね。
 そして、今、CP(カウンセリング・プラクティカム)でカウンセラーをやっているんですが、あらためてクライエントのこと理解するのは大変だなって。僕どうしてもしゃべっちゃうんで(笑)。スーパーバイザーに『高橋さん、抑えめに!』って指導を受けて。
 でも、少し進歩したかなって思います。クライエントの希望でカウンセリングが継続にもなったんで! 何かクライエントにとって大事なことに気づいてもらえると嬉しいですよね。そんなときはカウンセリングって本当に面白いなって思う。
 でも、気づきに至るまでに自然に流れるように対話を進めていく、これはすごく難しいなと思います。アセスメントのために、これを聞きつつ、次はあれを聞かなきゃ、って頭のなかで思いながら、共感のレベルを落とさずに聴く。本当に脳をフル回転させないといけないんですよね。
 でも、僕、人の話を聴くのが根っから好きなんですね。いろんな人がいるので、すごく人間に興味が湧きます」。

ナレッジシェアしていく

「僕ね、気がついちゃったんです」と茶目っ気たっぷりに言う高橋さん、何でしょう?
「僕、今年の4月で56になるんですね。ということは、定年まであとたった4年しかないって、やばい!って(笑)。だから最近思うのは、今まで経験した面白いことや、これからのことで、会社のなかに広めたほうが良いことを、発信していこうかなって。
 自分ができる貢献って何だろうって考えたときに、僕がいろんな研修で学んだ技術や、専門書を読んで得た知識を伝えたいなって。それって周りからもしかして望まれていることかもしれないなって思うから。
 うちの社内では[ナレッジシェアKnowledge Share]というカルチャーがあるんですね。体験したことから得た知識や教訓とかをみんなに共有して広めることで、任意で自主的なプレゼンテーションをやり、興味のある社員たちが集まってくる。僕もできるだけそれをやっていこうって思うんです。
 そして、いつも新しいことにアンテナを張り、良いと思うのはどんどん吸収していくのが高橋さんらしさです。
「最近ではEQ(Emotional INtelligence Quotient)心の知能指数なんていわれていますが、このEQのトレーニングを受けたりしています。インドネシアに出張したときに、研修でEQをやったんですが、内容はほぼカウンセリングと同じだったんです。あぁ今、これって流行りなんだなって。こういう、感情を上手く使った仕事の仕方って会社でも大事だなって思う。
 それと、リワークプログラムの現場で実習したり、自分でYou tubeチャンネルを開いて、カロリーコントロールと体作りの情報発信も始めたんです」。
 マラソンが一つの趣味の高橋さんですが、最近ジムでカロリーコントロールを実践するようになって9ヵ月で体重が8キロ減、ハーフマラソンの記録も伸び続けているそうです。この体験を詳細なデータ解析とともに動画で発信中。お腹周りのぽっこりが気になる方は、コチラをぜひ見てみてください!


ハーフマラソンの大会にも出場。自己ベスト目指してトレーニングも欠かさない

そのままにしないで、やろう

「最近思うのは、やっぱりやりたいこととか、行きたい場所とか、会いたい人とか、そう思ったときに、そのままにしないでアクションを起こそう、やろうって。そういうことを最近強く思うようになった。
 友人が病気で余命宣告をされて、すごくショックだったし、なんだか身につまされたんです。人生、限られた時間なんだって、あらためて感じた。やりたいことはやらないとね。
 これから時間ができたら、一つにはボランティアをやってみたいなって。満たされていくと人って社会貢献したくなるんですよね、きっと。自己実現、かな。何かはやり続けたい。それを探していくのかな」。
 高橋さんの人生マラソンは、これからどんな景色を見ながら走り続けていくのでしょう。感情もカロリーも上手にコントロールして、自己ベストを更新し続けていくに違いありません。走れ!どこまでも。