霜田 道子 Michiko SHIMODA

6年前、eMC資格1本でEAPサービス会社「カウンセリングストリート株式会社」に入職を叶え、EAPコンサルタントとして見事な活躍をしてきた霜田さん。そこには貫き通してきた強い思いがありました。

〈Profile〉eMC2016年取得、神奈川県在住。CEAP-I 2020年、公認心理師 2022年取得。カウンセリングストリート株式会社 事業推進部所属。娘2人。趣味は屋外でぼーっとすること。

あれから

「ここ2年近く中心的に取り組んでいるのはE-learningの開発、コンテンツ制作と研修講師の仕事です。ラインケア基礎編や、復職対応を含めたラインケア応用編、セルフケア研修、ハラスメント研修などの教材制作・講師も担当しています。コロナ禍でオンライン研修は右肩上がりに増加しましたね。ZOOMで30名程度を対象に、双方向のコミュニケーションを大事にしながら、グループディスカッションなども取り入れた参加型の研修です。実はこの研修、大好評なんですよ。研修はやりがいがあり楽しいですね!
 コロナ禍は私の働き方にも変化をもたらしました。今はフル在宅ワークなんです。週5日、朝から夕方まで、ずっとパソコン画面の前にいます(笑)。数年前から、お付き合いのある企業の人事担当者様向けのメルマガも書いているんです。メンタルヘルス関連のニュースや論文を紹介し、そこから弊社のEAPサービスのPRに繋げています。
 執筆は毎回とても苦しいのですが、メルマガを見てくれた方が、毎回楽しみです、とか、あの解説はとても参考になりました、なんて言ってくださると嬉しくて、やりがいを感じます。文章を書くことは、もともと大っ嫌いなのですけどね(笑)」。
と笑う霜田さん、透明感のある存在感は4年前に「こるNo.5」でご紹介したときと変わっていません。いえ、そのはんなりとした笑顔に透明度が増したようにさえ感じます。

ここに辿り着くまで

 霜田さんは、カウンセリングストリートというEAP会社に勤務しています。その背景はどのようなものだったのでしょう。
「私、学生時代は医師になりたかったんです。その思いを家庭の事情で諦めざるを得ず、内心チクチクとこころに痛みを抱えながらも、筑波大学卒業後は大手化粧品メーカーに心理学の研究者として就職。結婚し出産、夫の海外赴任に伴いインドで4年間暮らした後、育児休業の期限が切れるのを機に退職。こうして、[一人の主婦]になりました。
 退職後は何をして生きていけばいいのかわからなくて、とても悩んでいました。その頃、久しぶりに依頼を受けて講演会をおこなったとき、自分の講演内容が過去の知見ばかりで魅力に乏しいと痛感したんです。何か新しいものに触れてみたい。ブラッシュアップしなければ。ネットで調べていてリカレントを知ったのはこの時でした。
 EAPという言葉に出会ったのもこの時が初めてでした。リカレントで学んだ後、仕事を探そうとしても、当時の私は研究者の経歴こそあれど履歴書に書ける資格は何もありません。十数社に応募しても全部断れてしまいました。
 そんななか、ハローワークに勤める知人が提案してくれたのが今の会社でした。採用条件は、『何らかのカウンセリング資格をもっていること』、でした。すぐに直接電話をし『どんな仕事でもいいからご縁が欲しいです』。と懇願。
 今思えば恥ずかしいくらいです。でもそれくらい後に引けなかった、無我夢中だったんです。このまま自分を押し殺して無力感を感じたまま生きていくのか、それとも飛び出して新しい人生に手を伸ばすのか。これからの人生をめぐって強い葛藤があった時期でした。悩んだ末の私の答えは、新しい人生を選択し、自分がこれで生きていたいと思える職に就くことだった。私は、自分らしく生きるために、この仕事をやってみたいと思ったんです」。


資生堂時代(エコノミスト)

私らしい支援

 見事に願いを叶えた霜田さん。、若い頃に持っていたいくつかの夢を含めて、EAPコンサルタントの仕事はとても楽しく、やりがいを持ってやれています。最初の2年間は契約社員でとして産業医マッチング等を担当、3年目に正社員となってからは、営業スタッフが安心して仕事ができるよう後方支援する、皆のお母さん的な役割でした。
 こうして6年経ち、霜田さんは会社になくてはならない存在となっています。
「心療内科の医者になりたかったけど、医師として向き合える患者さんの数には限りがある。今こうしてEAPは、会社組織という大きな視点から、多くの方のウェルビーイングやサポートを考えられるので、むしろ今の仕事のほうが面白味を感じます。
 研究者時代に、いろんな研究を読み解く力を手に入れたことも、今、それをわかりやすく伝えたり、そこで得た知識をEAPコンサルタントとして役に立てたりができる。主婦経験をしたことも、カウンセラーとして主婦の方やいろいろな方のお話を聴くのに役に立っています。
 そう思うと、今までのことが集約している感じがあります。生きてきたことが全部絡まってきて今日があると思う。これまでの人生のつらい経験も意味があったと思っています。そんな私だからこそ私らしい支援ができるって。
これからも人の役に立ちながら生きていけたらいいなって思います。
 そこに今はEAPいますが、それが何かのボランティアでもいいし、いつか赤ちゃんの面倒を見るシルバーサポートなどもやってみたい。どんな形であっても、人の役に立って生きていけたらいいなと思います」。


公園でリラックス

「for others」誰かのために

「私の価値観ですか? 生きているなら誰かの役に立っていたい。それが一番ですね。そして、ありがとうって言われることがものすごく嬉しい。
「for others」誰かのために…これが自分のモットーです。そして、「すべてのことに意味があり、相働きて益になる」という、聖書からきている言葉も。子供の時から親からも聞いていて、ずっと自分の中にあった言葉です。物事がうまくいかないときは、空に向かって泣きながらこの言葉を考えて、こんなに辛くても、このことにもきっと意味があるんだ、いつか実を結ぶときがあるんだって信じてやってきた。これは私のなかで、ものすごく大事な考え方になっています。
 もう一つあります。『どんな人もひとり一人がそれぞれに尊い』ということ。EAPの場合、必ずしも従業員の希望を叶えることが目標ではなく、会社の意向や利益ももちろん考えなくてはいけない。会社と従業員に公平でありつつ、でも、CEAP私としてはひとり一人が大事だから、従業員のしあわせをなんとか実現したいという思いがあるのです。
 CEAP資格を取った際に学んだアメリカの考え方だと、中立を保つといいながらも、どうしても企業の利得に目がいってしまいがちな印象が拭えなかったんですよね。企業様からお金をいただいている以上、企業様が納得できる施策でなくてはならないのですが、それでも、どんなときにもひとり一人の従業員のためになることを目指すということを自分の中ですごく大事にしています。
 組織の利得を優先した施策になりそうなときは全力でストップしたい。でも、真向から反対しても理解してもらえないのがビジネス。いかに企業様が納得して受け入れやすいような提案をするかが大事。それによって社員さんひとり一人の幸せをめざすのが自分のポリシー。
 誰かがこぼれおちてしまうのは嫌なので、どうやったらその人が助かるかな、会社にもメリットがある方法はないかな、と考える。だからEAPはって面白くて、それも醍醐味なんだと思います」。
 EAPの道をひたむきに真っ直ぐ歩んできた霜田さん、その支援力は求められる形に柔らかに変化しながら、ますます磨かれています。