上原 龍茉
Roma UEHARA
「みんなけっこう泣いていくんですよ。それくらい辛くて来ているんです」。ここはカウンセリングルームでもない「占いの館」。「話を聴いてもらいたいから人は占いに来るの」。上原龍茉さんには見えているのです。
〈Profile〉eMC2016年取得、都内在住。西洋占星術を、20年以上学ぶ。現在は占い師として活動。主にメンタルケアカウンセリングが必要とされる相談者の対応をしてます。
職業はプロの占い師
胸に光る存在感たっぷりの天然石のペンダントに目を奪われて、思わず聞きたくなります。お仕事は何ですか?
「占いをしています。デビューしてから今、5年くらいですが、占いを勉強してきたキャリアはもう20年以上になります。私のする占いは、まず相術は手相を入れます、朴術はタロットカードや他のカードを使って。命術は西洋占星術を使っています」。
のっけから、その「気」に圧倒されます。ちょっと待ってください。占い師、なんですね。お話についていくために、まずちょっと占いについて知る必要がありそうです。
占いは大きく分けて「朴・命・相」の3種類に分類されている。
「朴」は偶然に表れた象徴を用いて成り行きを占う方法。気持ちを知ったり、恋愛、結婚の成就、仕事や事業の行方、過去や現在、未来の展開を知る占術で、有名なのはタロットカードやルーンストーンなど。
「命」は、生年月日と出生時間で現在の運気や人生全体の運勢、性格や職業の適正、恋愛の傾向などを導き出すもので、四柱推命や西洋占星術、算命学が代表的なもの。
「相」は手相や顔相などから性格、健康状態、人生の主なイベント時期などを読み取ったりするものと、風水、墓相、家相などの地形や家の相を読み取り、その場所から受ける影響を鑑ていくものに分かれるそうです。
運命的な出逢い
どうして上原さんは占い師になったのでしょう。
「家族が大変なことになって、夫が介護が必要な状態になってしまったんです。すごく大変でお金もどんどんなくなって、辛いことばかりでした。その辛さを助けてくれたのが、今の占いの師匠です。毎週、夫がリハビリに通っていたんですが、病院が原宿だったので、病院に夫を預けたあと、原宿の先生にいつも話を聴いてもらっていました。毎回泣きながら。
そのうち師匠に星の動きがわかると、いつラクになるか、苦しいかがわかるよって言われて。確かにそのときはとても苦しいところに星がありました。心中しようかと思うくらい追い詰められていたので、話を聴いてもらうだけで救われる思いでした。家族の状況が改善になる気配もなく、お金もないし、医療もお手上げで、福祉関係の支援も制度的に使えなかったんです。
20年も前の話ですから、そのときはいろんなことが成立しなかった。これはもう介護を受け入れるしかないなって…。通っている病院には心療内科にカウンセリングがあって、当事者家族も受けていたのですが、とても若いカウンセラーの先生で、共感してもらえていない気持ちが強くて、でも費用は高い。この人に話をしてもわかってもらえないと思ったんです。家で子供たちにも泣き言をいえない……。
そこで一番、親身に聴いてくれたのが師匠だった。たまたま自分と同い年なのに 泣きたい気持ちを全部受けとめてくれたんです。すごく救われました。それでいて、占いなので費用も安かった。それがご縁でした。今もその先生に習って、師匠の館で占いをしている自分がいます」。
占いの力
「私は普通に学校を出て、普通に企業に就職して、普通に会社員と結婚して。転勤族で、主人と家族の面倒だけを見る専業主婦でした。大変なことが起きたとき、子供は大学2年と高校2年でした。治療にすごくお金がかかることになり、下の子は高校を辞めないといけない状況まで追い込まれました。それなのに周りの親戚はサポートしてくれないどころか、離婚したらと言われたんです。でも子供にとって唯一のお父さんを捨てるわけにいかない。
できることなら私が看護しようと覚悟を決めました。その頃、リハビリで通っていた病院にアメリカで勉強してきたというEAPウンセラーが来ていたんです。職場復帰のためのリワークプログラムをやっていて、そのときリワークのカウンセリングやケアを初めて見たんです。人はこうして回復していくのかってすごく興味深くて、惹かれました。
その頃、うちの師匠に、あなたカウンセラーの資格とったらいいじゃない?って言われたんです。え? 私でカウンセラーやれます?って。EAPという言葉を知っていたので、リカレントにたどり着いた。2015年でした。貯蓄は治療費でほぼ使っちゃったけど、リハビリでもまたお金はかかる。なら自分で主人のケアをやれるようになりたいと思って、密かに溜めていた、なけなしのお金でEAP講座を受けることを決心しました」。
言ってあげられるから楽になれる
占いは統計学なので、わかってしまえば統計に沿っていえばいいのですが、私みたいに心理的に疲れた人がいっぱいくる。そういう人は病院には、心療内科には行きたくないんです。人に話を聴いてもらいたいから占いに来るの。私と同じ人をもっともっとラクにしてあげたいと思っているの。デビューするきっかけですね。
占いではその人のバイオリズムの高低がわかります。「今は一番ダメだよね、でも、この先これくらいになるとよくなるから、と言ってあげられる。それが言えないのがカウンセリング。でも占いなら言ってあげあられる。するとすごく楽になるんです。先が見えるのでホッとするんですよ。終わりが見えなくて苦しい介護も、あとどれくらい頑張ればいいのかなって見通しが聴けると楽になる。
でも、私の話の聴き方というのは、占いしか勉強していない人とは全然違います。占いだけの占い師は傾聴や共感ができない人もいます。私は、まず話を聴いて、本当の悩みは何か、というところから入ってあげられる。この時期よくなりますよ、というだけで楽になって終わる人もいるし、継続的に見て欲しいという人もいます。そのときそのときに心から寄り添ってあげられるのは、占いとカウンセリングを合わせたことによる力。
辛さをわかってもらって、少しでも先は良くなるんだっていう前向きな気持ちで帰ってもらえたらいい。そう、先の光を見せてあげられる。そこが占いのいいところだと思うんです。光を見たくて、人は相談しに来るんですから」。
偶然に表れた象徴を用いて成り行きを占う「朴」のタロット
こうなってくれたから
「みんなけっこう泣いていくんですよ。それくらい辛くて来ているんです。もう他には行けかないからって。そこまで全部打ち明けてもらえるのは、すごく嬉しくて。ああ、受け入れてもらえているんだと思うと、この仕事やっててよかった、いろいろ勉強してきてよかったなって思います。
当時は一家心中したいくらい辛かったけど、ときが来れば、いろいろ変わっていくと師匠が言った通りになり今、違う人生を私は進んでいるんです。出逢えなかった人にたくさん逢えた本当に感謝しています。すごくいいチャンスをもらったんだなって。今、私は60代後半になるんですけど、家族がなんともなかったら、普通のママ友会などやってただ時間を過ごしていて、今頃、パートでお店のレジとかお掃除のおばさんをやっていたんじゃないかな。人の悩みまで考えなかったと思います。それに、資格を取ったことで、ハイレベルで先進的な方々ともお付き合いができ、自分がより進んでいける。だから、まだまだ進化の途中なんですよ。
そう語る上原さんから漂ってくるのは確信に満ちた未来に向かうエネルギーです。
「私は占いに助けてもらいました。今度は自分が誰かを助けようだなんていうのは、おこがましい。でも、あの頃の私がそうだったように、誰かが少しでも楽になってもらえるなら、話を聴いてあげたい。そして、いい方向が見えるんだったら、そう伝えてあげたい。大丈夫よって。先はよくなる、だから頑張ろうねって。それが私の使命だと思ってます」。