因 隆志
Takashi IN

自身でカウンセリングサロン「yotta ligare」を開業、もう一つの顔がトレーダー。カウンセラーのやわらかな佇まいとキリっとした実業家の顔、どちらも因さんなのです。その不思議感に思わず惹きこまれます。

〈Profile〉eMC2022年取得、東京都在住。株式トレーダー、メンタルヘルスサロン経営。趣味は映画鑑賞、食べ歩き。

最大に結ぶ

「とりあえずやってみたいという気持ちが先行して、立ち上げてみて1年です。会社名は「yotta ligare(ヨタリガーレ)カウンセリングパートナーズ」っていうんです。「yotta」は10の24乗という途方もなく大きな数字で、メガやギガ、テラといった容量の単位の中で最大の単位なんです。「ligare」はラテン語で繋ぐや結ぶという意味。さまざまな人の想いを結び繋げる場でありたいという気持ちから、この名前を考えました。え、カッコいいですか?…って名前だけなんですけどね(笑)」
と照れ笑いの因さん。走り出して1年、どうでしょうか?
「会社を設立するにあたっては一からのスタートで、すごくわからないことだらけでした。知人の司法書士さんや税理士さんの助けを借りて、難しいところは全部やってもらっちゃいました(笑)。会社は今は資本金ゼロでも?作れますから、誰でもできますよ。で、始めてみてどうかというと、もう全然で今は閑古鳥が鳴いている状態です(笑)。でもホームページやSNSッセ―ジを発信したり、福利厚生のリロクラブに入れてもらったりと、取り組み努力はしていますし、長い目で見て一歩ずつ進んでいけたらいいかなって」
yotta ligare のHP(https://yotta-ligare.com/)を覗いてみると、清々しい、とても素敵な雰囲気の世界が広がっていて、因さんの対人援助への思いがあふれるように表現されていました。


10の24乗

もう一つの本業はトレーダー

 カウンセラーとして開業している一方で、因さんのもう一つの本業はトレーダー。いわゆる株や為替の取引でリターンを追求するプロフェッショナルです。どういう背景で、その世界に入ったのでしょう?
「実は、僕はもとは株の世界に生きてきた人間ではなくて、大学卒業後は外資のメーカーで10年営業をやり、転職をしてIT系企業でマーケティングと営業兼任で課長として5年やり、その後トレーダーになったんです。大学生の頃から祖父に株のことは教わっていて、将来は株だけでやっていくことはずっと考えていたので、社会人を15年間経験した後で、いちかばちかトレーダーになりたいと胸に秘めていたことを実現しました。会社という後ろ盾がない初めての状況で不安ではありましたが、株自体はずっとやってきたので少しだけ自信もあったかな。それで株の世界に飛び込んだんです」。
 今、脱サラして7年目という因さん、どんな毎日を送っているのでしょう。
「市場が9時から3時までなので、その間はなるべくモニタリングをしています。カウンセリング対応は基本その後で。オンラインでのカウンセリングもあれば、オフィスに来談いただくこともあります。クライエントさんの利用しやすいように出張対応もします」
 因さんのオフィスは東京・麻布十番駅から徒歩2分でアクセスしやすく、清潔な環境でプライバシーに配慮したつくりになっています。カウンセリングルームの開業には立地の良さや、施設が今風で清潔感があり、快適に過ごせること、などはクライエントからの信頼感や安心感に繋がるため、大事な部分です。しかし、金融界からどうして心理の世界へ興味を持ったのでしょう。
「会社員の頃に周りから相談を受けることが多かったんです。話を聴いて喜んでもらえることが嬉しかったんですね。10代の頃から人の役に立てるって嬉しいなって感じていました。カウンセリングという分野がどんどん広まっていくことで、今まで相談したくてもできなかった人ってたくさんいると思うし、カウンセリングに行くことは恥ずかしいって声を今まで何回か聞いていたんです。それがなくなっていけば、きっと人に相談しやすい雰囲気になって、より生きやすい世界になっていくんじゃないかなって思うので、何かそこで自分が役に立つことが少しでもできたらなって考えています」。

いじめっ子の人生の
ターニングポイント

 リカレントスクールでの学びはどうだったのでしょう。
「まったく知らない分野の勉強で、人の心の深層に触れることってなかなかなかったので、通学していた時はもちろん面白かったですし、今、実践していて、いろんな人に関わっている今のタイミングで新たな経験をすることがすごく多いなって感じています。何気ない会話をしているなかでも、今まで気づかなかったその人の本心や、今まではけっこう流してしまっていたところで立ち止まって、その人が「聴いてほしい」と思う部分が感じられるようになって、そこからより深い対話ができるようになったと、ここ  1、2年ですごく感じています。勉強をする前は、相談を受けたらアドバイスをすることが絶対条件だと思っていたんです。でも、まずは共感して、その人の話を聴くことを重要視して、ずっと話を聴いてくというスタンスにビックリしたんです。今でも強烈に印象に残っています。
 僕、小学校の頃は俗にいういじめっ子だったみたいなんです。まったく意識がなったんですが、5年生のとき引っ越をして違った環境に移ったときに、自分がいじめっ子で周りからすごく嫌われていたことを自覚して、それが人生のターニングポイントになったと思います。それから人との出会い、人を大切にすることをすごく意識するようになって、それが積み重なって今に繋がっているのかなと思います」。

見切り発車的な気持ちから、
その先へ

 そして、日本ではカウンセリングはまだメジャーじゃないですが、欧米のようにビジネスの一つとしてすごくチャンスがある世界なのかなと感じていたので、波が来たタイミングですぐスタートできるよう、とりあえず今の時点から始めちゃえ、という見切り発車的な気持ちで始めた感じです。人対人のビジネスなので、AIにとって代われない絶対的な世界だと思うんです。この分野はおそらくここ100年は人が担っていかないといけない世界なのかなって思う。対個人でやっているとなかなか収益って難しいんですが、今の対個人の経験を積んだ上で対法人にシフトしていけば、人件費だけがコストなのでそれなりの収益が見込めるんじゃないかなって。まだまったくの絵にかいた餅ですが、いずれそうなっていきたいなって考えています。
 実は、社会人になったタイミングでは、40歳から50の間では豪邸を手に入れるとかいろいろ野望は持っていたんです(笑)。まだそれが実現できていないので、今は少し足踏みしている状態で、少し歯がゆく思っているんですが、現在はそれが叶う途中だと、よい意味で考えて頑張っています。カウンセリングサービスのビジネスモデルをきちんと確立して、しっかりと収益を得られるようになること、それが直近の一番の目標ですね。5年後くらいには売り上げで年収1000万以上は目指したい。今はオフィスの賃料など支出のほうが大きくてマイナス状態なので、赤字を早く黒字にしたいです(笑)。yotta ligareを大きく成長させていきたい。
やっぱり後悔しないように生きていたい、そして「粋でいたい」ですね。誰に対しても。演じているうちはまだまだ粋じゃないと思うんですが、それが自然と溢れ出ているような人になりたいなと、それを志して生きていますね」。