サンス理子
Ayako SANZ
フラメンコに魅了されて30年、サンス理子さんはスペイン・バルセロナの郊外に暮らしています。オンラインでEAP講座を受講、ユーロ在住の初めてのeMCとなったサンスさん。空間も時差も超えサンスさんを突き動かしたのは、溢れんばかりのパッションでした。
〈Profile〉eMC2022年取得、バルセロナ在住、日系企業スペイン支局社長秘書、二児の母、趣味は読書とダンス(フラメンコ、インド舞踊)
プロの
フラメンコダンサーになりたい!
スペイン・バルセロナの郊外にある人口7千人ほどの小さな村、 Sta. Eulàlia de Ronçana(サンタエウラリア・デ・ロンサナ)。20分も車で走れば紺碧の海が見られ、山も近く、とても自然豊かなところです。「自然に囲まれて暮らすのが大好き。東京出身でずっと都会で生きてきたから」と微笑むサンス理子さん。この地で生活を始めてもう15年になります。
「短大の英文科を卒業して、海外で好きな英語を使った仕事がしたくてシドニーへ渡りました。暮らし始めて程なく、オーストラリアの人と交流するきっかけが欲しくて、習い事をしようって思って、新聞や雑誌を見ていたんです。そこでパッと目に留まったのがフラメンコ教室だった。もうその瞬間「これだ!」と思いました。体に稲妻が走った感じです(笑)。
見学に行ってみると、その異世界に入り込んでしまったような独特な空間、フラメンコギターが奏でる音色、情熱的な踊り、音楽と踊りのすべてにウワッとなって「これしかない!」って。気づいたら教室に通っていました。踊りを習ううちに、歌の意味がすごく気になって、きちんと勉強したくなったんです。歌詞の意味がわからないと十分な表現ができないから。それでスペイン語の勉強を始めました。その後、ますますフラメンコの世界にのめり込み、フェスティバルや様々なイベントで踊るようになりました。そうしているうちにプロになりたい! フラメンコで食べていきたい、そう思ったんです」。
この情熱がサンスさんをフラメンコ発祥の地スペインへと羽ばたかせました。
スペイン・バルセロナの郊外に暮らして15年
フラメンコの持つ不思議なチカラ
それまで7年間勤めていた、シドニーの外資系会社を辞め、夢をつかむ道を選んだサンスさん。スペインでは南部アンダルシア地方や、プロのフラメンコダンサーであれば誰もが目指すマドリードの教室にも通いました。そこで今のご主人に出逢い家庭を築いて20年、妻、母、企業人と3役をこなしながら目の回るような忙しさだったけれど、フラメンコはずっとたゆまずに続けてきました。なぜって、フラメンコはサンスさんにとって人生に欠かせない大切なものであり続けているからです。
「フラメンコを踊っているとき、舞台でスポットライトを浴びると、何か入ってくる感じがすごくあるんです。何かと自分が繋がっている感じ。フラメンコのリズムは『コンパス』っていうんですけれど、私は、それは宇宙のリズムだって思っているんです。宇宙のリズムと一体になることで、スピリチュアルな世界に入れる。
たとえつらいことがあるときでも、フラメンコを踊っていると元気になるんです。フラメンコには不思議なセラピーみたいな力がある。体を動かすことが健康にいい、だけじゃなくて、また別の精神面への効果。フラメンコが自分のセラピーになっている踊り手は多いと思いますね。
フラメンコには孤独や人々の嘆き悲しみ、喜びを表現するなどいろいろな曲種があるんです。フラメンコのリズムに身を任せ体全体で感情を表現することで、自分自身の感情も解放されて、カタルシス(浄化)効果があるんだと思います」。
イキイキと目を輝かせて語ってくれる熱量が、はるか大西洋をひとっ飛びして日本まで伝わってくるかのようです。
30年以上こんなに情熱的に踊り続けることができるなんて
海を越えて開いた心理学への扉
実は、サンス理子さんは、ユーロ圏からは初めてのフルオンラインでの受講生、eMC試験の初の海外からの受験、そして初の海外在住のeMC資格認定カウンセラーとなりました。サンスさんが時差の壁を乗り越え、空間を超え、EAP カウンセラーの資格を取得したのは、どうしてだったのでしょうか。
「心理学には前から興味があったんです。自分はなぜか昔から感受性が強いところがあって。赤ちゃんの頃もカンが強い子だった。人の心が、もちろん読めるわけではないですが、ちょっと想像できるというか、内面からの感情のメッセージが入りやすい感じがあって……。
初めて会ったときに、スッと「その人らしさ」を感じとる力があるような気がしていて、そういう感性を活かしてみたい、という思いもあって心理学に惹かれていたんだと思います。
でも、特に勉強する機会がなかったんですよね。ずっと夢中でフラメンコをやってきて、二人の子育をしながらの長期の休みもない、忙しいサラリーマンライフでしたから。けれど15年が過ぎて、子どもが大きくなって手がほぼ離れたときに、『ああ、勉強したいなぁ』って思ったんです。そして、何か人の役に立つ仕事をしたいなって、思いがあった。
母が60歳でケアマネの資格を取って、介護の仕事が天職だって楽しそうに話していた姿を見て、勉強も、資格を取ることもいつでも遅くないんだって。そんなときリカレントを見つけて、『オンラインありますか?』って聞いたら、YESだったので、土曜日だったら夜中に受講できるなって思ったんです。時差はあるけど、無理ではないなって」。
こうしてサンスさんは長年の願いを叶えて、心理学への扉を開いたのでした。
宇宙のリズムや世界の繋がりを感じさせてくれるスペインの海
真夜中のロープレ
リカレントでの学びはどうだったのでしょう。
「夜中の1時くらいに起きるんです。眠いじゃないですか。ワ~大変っと思って、でもポチってZOOMのクラスに入ると、そこには仲間がいる。全国いろんなところから皆さん集まっていたんですね。すでに退職された方もいれば、若い学生さんとか様々で。長くスペインで生活していて、そういう方たちと接することもなかったので、とても新鮮で楽しかったです。
夜中に全力で5時間、ほぼ徹夜で授業を受けるのは、体力的にもちろんキツいんですけれど、なぜか頑張れちゃうんですね。クラスメイトとロープレもたくさん練習しました。お休みの週があると、『今週授業ないんだー、寂しい』って思ったり(笑)」。
サンスさんにとって、ここまで勉強を頑張れたカウンセリングは、どんなものだったのでしょう。
「お相手が心を開いてくれたって感じられるとき、『繋がれた』と思って、すごく嬉しくなります。その方に新たな気づきが得られたときとか、もっとその方が望むいい方向にいってほしいなって思う。
学びのなかで強く印象に残ったこと? 『私たちは先入観を持たず謙虚な気持ちで、クライアントのすべてを受けとめるカウンセリングをしましょう』という教えです。これまでは自分の価値観で決めつけたり、自分の感情で遠ざけてきたこともあったと思う。でも、カウンセリングはすべてを受け止めるんですよね。これってすごいなって。自分の人生・日々にも活かしたいと思いました」。
自分らしく生きる
「私、欲張りで我がままなんだと思います。自分に正直で猪突猛進。イノシシ年生まれなので、思ったら周りを見ずに突っ走るんです。常にいろいろ問題にぶつかったりはあるけれど、悩んで立ち止まるのではなく、進むしかない。後戻りができないんです(笑)。
フラメンコを踊って、かれこれ30年。ずっとこんなに情熱的に踊り続けることができるなんて考えてもみませんでした。育児もひと段落、これからは自分がしたいことをどんどん実行に移していきたい。カウンセリングの経験をどんどん積んでいき、これで自分はできるなって思えたらカウンセラーとして開業もしてみたいです。自分のように長く海外暮らしをしていて、子育てと仕事の両立や、異国での人間関係などで悩んでいる人、精神的に大変で苦労している、そういう人をサポートしていきたいんです。
これからもっと旅もしたいし、いろんな人に出会いたい。今、ここに辿り着いて、自分が居れること常に謙虚さと感謝の気持ちを大切にして、自分らしく、これから先の『自分の人生』を生きたいなって思います」。
大学で医療を学ぶオリビアちゃん(18)とフリースタイルスクーターのプロアスリートを目指す匠くん(12)