郷 喜子
Yoshiko GO

「医療から離れられない」とどこか嬉しそうに誇らしげに仕事を語る郷さん。好奇心やチャレンジ精神が旺盛で、何事にも前向きに一生懸命に、これまでの経験と学びを活かして新たなステージへと歩みを進めています。

〈Profile〉eMC 2021年取得、福島県在住。健康診断会社勤務の助産師。両親と祖母との4人暮らし。趣味はフラワーアレンジメント(プリザーブドフラワー)今、力を入れているのは終活。

大変化のあった1年

 助産師として20年活躍されていた郷さん。2021年4月のCor掲載から約半年後、大きな変化がありました。
「あれから大変化がありました。転職しました!やっぱり自分の体調のことも考えると夜勤が厳しいかなと思いました。それから20年病院で働いてみて、病院以外のところも経験してみたいと思い、思い切って助産師として働いていた病院を辞めました。
 ここで働く長くということもありだけれど、例えば65歳くらいまで働くとしたら、もうそのうちの半分ぐらいは病院を見て、助産師だからといって産婦人科や小児科にこだわらずにいろいろなことをやらせてもらえたことも大きかったですね。
 なので、今後はそれも活かしつつ他のところに行きたいなという気持ちの変化がありました。ただ、転職先もやっぱり医療関係で、そこは一緒でしたね」。
 そう話す郷さんの表情はすごく晴れやかでとても充実していることがうかがえました。現在は、主にバスでさまざまな企業へ赴き、健康診断を実施する、いわゆる巡回健診の会社に勤めています。そこでは、これまでの病院のように必ずしも設備や環境が整っているわけではなく、ときには従業員の方々が仕事をしているフロアの四隅を使って健診を実施することもあるそうです。
「やることは毎回大きくは変わりません。ですが、この仕事に就く前は健診会場などちゃんとした会場があって、セッティングできる広さがあると思っていたんですよね。でも違った。その限られた環境や時間の中で健診の場所を作って実施して、どのようにして時間内にきちんと終わらせるかっていうような、考えなければいけないことが多い。常に頭はフル回転ですね(笑)。
 これまでもそうだったのですが、病院だとある程度人員も一定数いたので。現在は自分であっちも見てこっちも見て……。という感じで目まぐるしいですね(笑)」。

バスで巡回健診へ

新たな学び

 病院を退職してから現在の仕事に就くまでの数ヵ月間で、さらに学びを深めました。
「退職してから少し時間が空いたので、その間にアンガーマネジメントの勉強をしたり、前からエンディングノートを書いていたので、終活についても学んだり、そういう時間の使い方をしていました。
 アンガーマネジメントに関しては、言葉は知っていましたが詳細は知らなかったので、良い機会だと思って。たまたま近くでやっていた初級編の講座を受けました。それまでは、怒らなければいいんでしょ、くらいにしか思っていなかったのですが、学んでみると全然違いますね(笑)  これまでも学校で性教育をするなど、子ども達と関わる機会があったので、どうせなら子どもに教えるための資格を取ろう、と該当する講座を選択しました。そこではカードゲームを介して怒りについて考える、ということ実践を通して学びました。これは大人でも使えるな、とためになりましたね。
 実際、仕事上で怒りを覚える瞬間もありますが、そのときにアンガーマネジメントの講座で学んだことを思い出します。数秒間、ちょっと違うこと考えたり、無になったりして、怒りを上手くコントロールできるようになりました」。

ガーデニングも好き

想いを聴く

「以前、いつも通り健診で採血をしていたら、若い男性社員が急に『僕、仕事辞めたいんですよね。』と言ってきたんです。どうしたんだろうって驚きましたが、ああこの人はきっと話したいんだろう、職場では誰にも話せないんだなと感じました。カウンセラーの資格を持っている自分としては聴いてあげたいなと思ったので、限られた時間の中ではありましたが、いろいろ話を聴きました。  そんな短時間のことでしたが、やっぱりこのように悩んでいる人は絶対いるけれど、どこにも相談できないんだなと実感して、会社に内部EAPがあることも重要なんだな、とあらためて思いました。あの彼のように自分に相談をしてくれた人の思いを受け止めてあげたいな、と心から思いますね。
 私自身も精神的に不調で通っていた病院で話を聴いてもらったときに、それが治療の大部分を占めていたことに気がついたので。あの彼も健康診断に来ただけの私に話してくれたということは、本当に限界で誰かに聴いてほしかったんじゃないかな」。
 カウンセラーとしての想いを語る郷さんには、思わず話を聴いてほしくなる、そんな柔らかな雰囲気があります。
「直接何か治療に携わるとか、お産から離れて直接介助するわけではなくなりましたが、会話の中でいろいろな情報を引きeMC出して、コミュニケーションをとっていくことは大事なんだな、と思います。人が相手なので。職業としてのカウンセラーではなくとも、リカレントで学んだことは十分に活かされていると実感していますね。ロープレなどは大変でしたけど、無駄じゃなかったなって。
 eMCの資格やこれまで勉強したこと、病院の実務で学んだことを組み合わせて適切な場面で使うことができる、活かすことができるのが、自分の強みだと思っています」。

助産師として働いていた病院の職場で

そしてこれから

 常に何かに挑戦している郷さん。前に進み続けられる原動力はどこからくるのでしょう。
「私はじっとしてるのはあんまり好きじゃないんです(笑)。常に動いていたい。アンテナを高くしていたい。たぶん自分が好きなことやりたいと思ったら突き詰めたいな、という思いがあって、それをやると、一つのことをコツコツと長く続けられるのも自分の性分だなって思います。
 ただ、新しい仕事に就いてからは『働いた!』という感じで追われていたので、前のようにボランティア程度でも、小中学校に行って性教育など授業をしていきたいなと思っています。
 あとは、今までやってきたことのブラッシュアップですね。一つひとつのことがバラバラなことではなく、全部どこかに繋がっている感じがするので。自分が挑戦したいって思ったときが[やり時]なんだろうなと思っています。
 今までもずっとそうやってきたし、今日より若い日はない。明日どうなるかもわからない。だから何でもやる価値はある。やってみてダメだったら、そのときに考えれば良い。今、何かに踏み出そうとしている人には、そうやってチャレンジしていってほしいなと思います」。
 終始、笑顔で楽しそうに話してくれた郷さん。これからも人の心に寄り添いながら、心と身体の健康を見守っていく。そんな郷さんに多くの人が救われていくことでしょう。