石丸 貴子 
Takako ISHIMARU

2014年にCDA(日本キャリア開発協会キャリアカウンセラー)、2016年にeMCを取得。地域若者サポートステーションのキャリアコンサルタントとして、EAPの学びを活かした面談で若者を支援しています。

〈Profile〉eMC2016年取得、千葉県在住。地域若者サポートステーション相談員、夫と実父と2世帯暮らし中、息子二人は独立、趣味は映画鑑賞、マイブームは一人旅と農園ボランティア。

始まりはおカネ?

「生命保険の営業事務の仕事をしていたことがあって。そのとき、お金のことって知らないとたくさん損するんだな、と感じてファイナンシャルプランナーの資格を取ったんです。資格を取って思ったのは、今まで仕事について考えてなかったな、ということ。運用はやればできるかもしれない、でも運用するお金を作り出すために必要なことって仕事だよな、お金より仕事のほうが先じゃないかなと」。
 2人のお子さんを育てながら、さまざまな仕事を重ねてきた石丸さん。ファイナンシャルプランナーの資格を取った後、いくつかの仕事を経て、それまでとは[畑違い]の法律事務所で働き始めます。この[畑違い]な職場での経験が、石丸さんの支援者としてのキャリアをスタートさせることになるのです。
「法律事務所は14年弱勤めて、すごい飽き性で、あっち行ったりこっち行ったりした私が飽きなかった、いろんな依頼があって。次はこれ、何日にはあれって準備したりスケジューリングしたり。『頭にきてる』とか『腹立たしい』とか、依頼者の愚痴を聴くこともあったり。弁護士を支える仕事は私には向いてるんだろうなと。依頼者の内情に触れて、みんな違うんだなって感じることができて」。
 法律事務所で働き始めて何年か経った頃、石丸さんは考え始めます。
「弁護士が高齢で事務所を閉じることになったらどうするか。弁護士とは馬が合っていたから、別の所で同じように働けないだろうなって。法律事務所の秘書の仕事は気に入っていたんですけど。あらためて私は仕事するにあたってちゃんと考えてきたかなって。お金を稼ぐために必要なのは仕事だよなって思っていたら、民間の転職エージェントにいるキャリアカウンセラーっていう資格があったのを思い出して、ちょっと調べ始めて」。
調べてはみたけれど、一歩を踏み出せずにいた石丸さんの背中を押したのは、震災でした。

「できるうちに!」

「実際によし取ろうってなったのは、震災があった後。四の五の言っている場合じゃないな、今できるうちにやった方がいいって、後悔したくない気持ちで」。
法律事務所に勤めながらキャリアカウンセラーの勉強を始め、2014年に資格を取得。資格を取得すると、石丸さんの“あっちこっち”は、行動力となって炸裂します。
「キャリアカウンセラーの資格を取ったときに転職活動して、経験ないんだよなって挫折したことも何回かあります。なので、弁護士にお願いして仕事を減らしてもらって週1で副業を開始。大学のキャリア教育の添削作業とか単発の仕事をいろんなところでちょっとずつ始めて。傾聴ボランティアを育成するNPOを手伝ったり、別のNPOでカウンセリングをやらせてもらったり。
 やっていくうちに、1つの資格でやっていくのはなかなか厳しい現状を知って、キャリアカウンセラーの勉強をしているときに先輩から聞いたEAPを思い出して、2016年に資格を取って」。資格を取ると、また、動きます。
「月2日の企業内カウンセラーの仕事があって、これは!と思って応募して。たくさん経験があったわけではなかったので、ある意味、飛び込んでいった。」。
キャリアカウンセラーの単発仕事、NPO、企業内カウンセラーと、がんがんチャレンジしていく石丸さん。
「コロナで通勤が難しくなったので2020年に弁護士事務所を辞めて、地元で仕事を探していたら、地域若者サポートステーションのキャリアコンサルタント業務を見つけて」。石丸さんは早速応募。すると、すぐに連絡・Web面談・採用に。
「EAPの勉強をしていたとき、講師から『もっと考えて』って言われたんです、何回も。ハッて思うとパッて掴みにいっちゃう、あんまり考えないでやることがすごく多かったんです。けれど、今はこの言葉をいつも胸において、仕事に向き合っています」。
 弾むように笑う石丸さんから、自信がこぼれ出ます。
「でも、掴んだものは自分の経験になっているんですけどね」。

大切にしているコラージュ

どんな経験も自分の成長に

 今は地域若者サポートステーション(サポステ)でキャリアコンサルタントとして働いている石丸さん。法律事務所などでの経験が活きているといいます。
「企業内カウンセラーの仕事に飛び込んだときから、相談者がどういうことが言いたいのかを掴むのに先入観を持たずに聴くことができて。法律事務所で老若男女の方々と話す機会が多かったし、依頼者からの話を弁護士に報告するために要約していたので、それが上手く回った感じになったのかも。法律事務所での経験は、いまも活きているんじゃないかなと感じています」。
 EAPの学びも、サポステで活かされているといいます。
「サポステは面談という形で話を聴きますが、引きこもりから脱した方も多いので、次の面談に来てくれなかったりする。だから、どうやったらまた面談に来てもらえるかを大事にしています。面談に来てもらう工夫としてEAPのエンタメ要素を使ったりして。
 私はアニメが好きなので、『今どきの若者ってどういうの見るの?ちょっと教えてもらえる?』とか、できるだけ相手が話をしやすい内容を『こんなことを話せるおばさんもいるんだよ』くらいなノリで。これってEAPで学んだおかげかなって思いながらやっています」。
 どんな経験も成長に繋げてきた石丸さん。「お金のことって知らないとたくさん損するんだな」という思いで始めた学びでは「仕事について考えてなかった」自分を発見し、「まずは仕事だな」と調べ始めたキャリアカウンセラーからは「生き方を勉強したい」自分が生まれ、そして今、資格を活かして活動してきた経験から、「生き方に関わる仕事がしたい」。自分の生き方と仕事を見つけた石丸さんは、走り始めています。


石丸さんの描いた自画像

今の目標

「母親にフォーカスを当てて活動していきたいと思っていて、仲間を募っていい形でできないか考えているところです」。
 手伝っているNPOが小・中学校の母親世代に提供している「愚痴の吐き場」をさらに充実させていきたいという石丸さん。
「母親への支援を、もう一段階上げたいと思っていて。お母さんという立場の人たちって、いろんなものに縛られているでしょ。旦那さんに育児に家事、仕事したいってなったら仕事。介護もあったり。でも、愚痴を言い合えたり、自分が大事にしていることに気づけたりする場がないんじゃないかなって。ママ友はいるかもしれないけれど、そんな話をしたら多分『何言ってんの、この人。重い、面倒くさい』って思われるし。本当は夫婦でそんなことを話す時間を持てたらいいんですけど、子育て世代って忙しくてそういう時間も作れないでしょうし。
 お母さんが安心して自分のことを話せて、どう生きていきたいとか大きい目標というより、ちょっと近い目標みたいなのができたら生きやすくなるんだろうな、と思っていて。そういうことを見つけるワークショップなどをやっていけたら、というのが今の目標です。お母さんたちがハッピーになったら、そしてそんなお母さんを見た子どもたちはしあわせになるんじゃないかな、きっと、そんなことを期待をしています」。
 ハッピーオーラを放ちながら、石丸さんは走り続けています。