小原 梨沙
Risa OBARA

メンタル不調と休職の経験を持つ小原さん。自分のような社員を少しでも減らせたらと、今年に入って社員のメンタルヘルスに関われる部署に異動しました。仙台の地から、EMCA関東支部会の役員として、「カウンセリングセッション」の司会進行も務めています。

〈Profile〉eMC2021年取得、宮城県在住。人材派遣会社営業にて派遣社員に対するフォロー体制を0から構築中。モットーは「何とかなるかもしれないし、何とかならないかもしれない、でも何とかなるよう頑張る」。

心が折れた経験

「私、前の職場では[うつ]になってしまって、2年間休職していたんです……。大学を卒業し、新卒で大手エステサロンに入りました。エステ業界には以前から興味があったのですが、自分でエステに通うとなるとめちゃくちゃ高額になるので、社割が使えたらいいなぁなんて安易な気持ちで入社をしまして(笑)。
 入ってみたら、女性ばかりの職場は、厳しい上司や気難しい先輩がたくさんいて、正直大変でした。私に対する当たりも結構強くて、捲し立てられるような指導をされたりもして、そういう雰囲気が苦手な私としては本当に辛かった……。あるとき、お客様からクレームが入り、それが自分のなではとどめを刺されたような感じで、心が折れてしまい、働けなくなってしまったんです。
 そこから先はあまり覚えていないのですが、休職していた2年間は、死にたい、消えたい、なんで自分はここにいるんだろうと、自分を否定することばかり考えていたのは、なんとなく覚えています。当時を今振り返ると若かったなと思うし、もう少しやりようがあったのではとも思う……」。

なんでも吸収できる
貴重な20代前半を失った

 初めての職場でコミュニケーションに難しさを覚えたことが、リカレントに通うきっかけに?
「またあんなふうになりたくないから学びたい、という気持ちもちろんありました。私が休職していた20代前半って、なんでも吸収できる年代だったはずだよなって思うんです。そう思うと、『もったいない過ごし方をしてしまった』『代償が大きかったな』って感じて。今の会社に入って、いうなれば自分にとっての『リハビリ期間』は、同年代が当たり前にできていることができなかった苦しい期間でもあった……。それを他の人に味わってほしくないなって思いもあって」。


夕日の鳥

学びが気づかせた自分の持ち味

「心理学を学ぶようになって、いい意味で、人に期待するのをやめました。『〜してほしい』と人に思うことが自分は多かったんですよね。そして思い通りにならないとメンタルが崩れてしまう……。今、思えば前の職場でうつになった頃は、職場の先輩に自分の理想像を押しつけていたのかもしれないなって思いました。『和気あいあいな職場じゃなければいけない』と……。
 リカレントの先生からは『誰かに頼ってほしいという気持ちが強い』とも言われました。自分としては承認欲求が強かったのかなと思いましたが、だからといってそれを変えようとは思わなくて。むしろ、それが私の『持ち味』だよな、『勝手に頼られる存在になればいいじゃん』って(笑)。自分がお願いして頼られるんじゃなくて、相手がお願いしますって頼ってくるところまで自分が上りつめたらいいじゃんって思いました」。

やっとリングに立てた今

「2022年の9月にeMC資格を取ってから会社の上司に相談して、今年1月から派遣社員の管理を担当する営業部門に異動しました。自分には休職のブランクがあったので、以前からみんなと同じ土俵で戦うのではなく、自分のホームを作ってそこで戦えたらって思っていたこともあり、資格をここに活かそうって思っていたんです。この1年でどれだけ結果出せるか、やっとリングに立てたので、これがデビュー戦みたいなものですね!
 私が今やりたいことは、現場で働く派遣社員の方たちのフォローです。派遣社員として自分が働いていた頃から派遣元への帰属意識が薄いなと感じていました。派遣元から給与は出るし、どれだけ昇給するかや賞与が出るかなどの評価をしているのも派遣元です。にもかかわらず、派遣先と派遣元の繋がりが薄いことで、派遣先ですごく評価されていることが派遣元に伝わらず、思うような評価がされないことがありました。
 また、遅刻や欠勤などがタイムリーに派遣元に伝わらず、社員が休み始めた1ヵ月後くらいに『この社員、最近休みがちだね』などとわかる。一般的な会社ではすぐにわかるようなことがすぐにわからないっておかしいんじゃないか、こんな管理体制でいいんだろうか、問題の早期発見がこれでは難しいんじゃないか。
現場で自分が働いていたからこそ、派遣社員が働きやすい環境を自分が作るべく、また、企業が必要とする人材についてもわかる機会が自分にはあったので、自分の経験をこれからの業務で活かしたいですね」。

私がしたい職場づくりへ

「今、取り組んでいることは、まずは派遣社員の方たちと、『友達になろう』っていうイメージで関わりを持とうとしています。相談窓口を作り、匿名で質問や悩みを気軽に話せるようなフォームを作りました。営業所の人たちと派遣社員の人たちがもっと密に関われるようにと思って。
また、メンタル不調の方にはリカレントで習ったやり方で、相手がいい方向に向かえるよう意識しながら話を聴いたりもしています。人間関係が上手くいかないという悩みが半分を占める印象ですね。
 私は『心理的安全性を担保する職場でありたい』と考えています。歌の歌詞じゃないですけど、『言いたいことも言えない世のなかじゃ……』みたいな、会社に言っても無駄と思っている派遣社員もいて、そういう方たちは心がどんどん病んでいく。もしくは、会社を見限って来月で辞めますって、突然会社を辞めていくんです。自分の意見や考えを言える環境じゃないから、そういうことが起こるんじゃないか、って私は思うので、気持ちをいつでも言えるような職場にしたい。そんなことを考えて今の仕事をめいっぱい頑張っています!」
嬉々として語る小原さんの目には、力強く燃える炎のような煌めきが見えます。


取組もうとしている相談窓口の案内

これから

「いずれ独立を考えています。リカレントで共に学んだ仲間たちと一緒に仕事ができたら楽しいだろうなって思ったり(笑)。みんな同じことを学んできているので基礎土台が一緒。同じところからスタートできる職場ってなかなかないと思うので、リカレント卒業生を対象に求人募集して、みんなでEAPを広めていける会社を作れたら面白いよなって。とはいえ、まだまだ始まったばかりなので(笑)この実現はもうしばらく後になるかとは思います!」
 今は目の前にある、始まったばかりの仕事を頑張るところから、と話す小原さん。将来の展望や強い志があれば、目指すところへの過程も結果も大きな違いが生まれてくる。「言いたいことを言える世の中(職場)」へ……。頑張って!小原さん!